デイリーマーケットコメント–債券市場の沈静化により、株価と米ドル安定推移

投稿日: 2021年7月9日18時51分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 大きな動きの後、株式市場とFX通貨ペアの動きは沈静化
  • 債券市場が動きの中心に-ショートスクィーズは終了?
  • ゴールド回復には繋がらず、本日はECB政策会合の議事録とカナダ雇用統計に注目

債券市場でのショートスクィーズは収束の可能性?

今週の世界市場は荒い値動きとなりましたが、ようやく落ち着いたムード取り戻しつつあるようです。市場を動かした要因は、国債利回りの低下でした。国債利回りの低下は、経済成長鈍化の兆しとして解釈され、利上げ観測後退に繋がります。

債券市場の動きは、他市場にも波及します。昨日は株価が下落し、コモディティ通貨も下落しました。その一方で、円やスイスフラン等の安全資産が上昇しました。デルタ変異株の感染拡大への警戒が引き起こした典型的なリスク回避の流れでした。

デルタ変異株の感染拡大への懸念に加えて、テクニカル上の要因もあったようです。利回り上昇に賭けた投資家がポジションの巻き戻しを強いられ、国債市場が大きく動きました。デルタ変異株の感染拡大への懸念が国債市場での最初の動きを引き起こし、ショートスクィーズが国債利回り低下を増幅させたようです。

ショートスクィーズは継続せず、混乱も間もなく収束するでしょう。国債利回りが上昇に転じ、株式市場も安定推移していることから、沈静化の兆しが見られます。したがって、この流れ通りの展開となると、円とスイスフランは反落するでしょう。

米ドルは回復、ゴールドは停滞

昨日、米ドルは下落したものの、本日は回復し、僅かに上昇して今週を終えるようです。通常、国債利回り低下は米ドル安の要因となる為、米ドル上昇は安全資産としての米ドルの魅力を示す証拠になります。

デルタ変異株の感染拡大により、世界経済、特に新興国経済が打撃を受ける模様です。したがって、米ドルの需要は増加するでしょう。米国はワクチン接種率が最も高い主要国であり、大規模な財政刺激策により、経済への打撃も限定的となるでしょう。

米ドルは、どのような状況下にも対応できる通貨です。米経済の例外主義により、米ドルは、リスクオンでもリスクオフでも上昇します。

コモディティ市場では、米ドル安と国債利回り低下にもかかわらず、ゴールドは上昇しま

せんでした。しかしながら、ゴールドは僅かに上昇して今週を終える模様です。ゴールドの大局的な見通しは悪化しています。債券市場の混乱がショートスクィーズによって引き起こされていた場合、ゴールドが再度上昇する公算は小さいでしょう。インフレ懸念後退によって、ショートスクィーズは収束するでしょう。

ECB議事録、カナダ雇用統計、米企業の四半期決算に注目

本日は、ECB政策会合の議事録、及びカナダ雇用統計に向けられるでしょう。昨日のECB政策会合では、インフレ目標が引き上げられました。したがって、ECB政策会合の議事録によるユーロ相場への影響は限定的でしょう。

カナダ雇用統計の結果は、今週の原油安で下落したカナダドルにとって、ポジティブな要因となるでしょう。カナダ国内のワクチン接種率は高く、米経済の影響を受けるカナダ経済の見通しも明るくなっています。カナダ中央銀行は、利上げに踏み切る最初の中央銀行の一つになるでしょう。

国債市場の安定推移は、投資家にとって安値での購入チャンスとなり、米株式市場は上昇してのオープンとなるでしょう。米株価回復の継続は、翌週に発表される米銀行の四半期決算結果次第となるでしょう。