デイリーマーケットコメント–世界的に感染拡大傾向、市場は再度リスクオフ

投稿日: 2021年7月12日19時49分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • デルタ変異株による世界的な感染拡大により、市場は再度リスクオフに
  • 米ドルは下落から上昇に転じ、株価は上値の重い展開
  • 国債入札で債券市場、及びパウエル議長の議会証言に注目

世界的に感染が再度拡大し、今週はリスクオフでスタート

世界的な感染拡大への警戒により、先週半ばより改善した市場ムードが再度後退し、本日のリスク資産は下落しました。国債利回り低下にもかかわらず、米ドルは二日連続の下落から上昇に転じました。通常、米10年債の動きは米ドルに影響します。しかしながら、6月下旬に、経済成長鈍化、及び感染拡大が再度浮上して以来、米ドルと長期国債利回りの相関関係は、ポジティブからネガティブへと変わりました。

感染力の高いデルタ変異株による感染拡大が多数の国に広がりつつあり、ワクチンによる完全な経済再開への希望に疑問が浮上しつつあります。感染拡大への警戒が強くなる中、多数の中央銀行が緊急支援策の一部終了を開始、或いは検討していることが懸念されます。

先週、FRBがテーパリング開始は数か月先となる可能性を示唆し、ハト派寄りの見解を示し為、市場を若干安堵しました。中国人民銀行が預金準備率を引き下げて、1540億ドル規模を市場に供給する追加金融緩和の方針を公表した為、最近の規制強化による影響の緩和に繋がると解釈され、市場のムードが上向きました。

米ドルと債券市場は、中央銀行の動きに注目

米ドルは対主要通貨で若干上昇し推移し、米10年債は1.3330%まで低下しました。本日には、380億ドル規模の米10年債入札が予定されている為、債券市場に注目が集まるでしょう。火曜日には、240億ドル規模の米30年債入札が予定されています。

入札により国債利回りが上昇し、ポンド高が一服する可能性があります。しかしながら、デルタ変異株による感染拡大への警戒感が根強い場合、世界的な国債利回り上昇には繋がらないでしょう。

火曜日から水曜日にかけては、パウエル議長の議会証言に注目が集まるでしょう。パウエル議長は、毎月の資産購入ペースの削減を早急に進めない方針を改めて表明する模様です。一方、カナダ中央銀行は今週も再度テーパリングに踏み切る予定です。水曜日に予定されているニュージーランド準備銀行の政策会合では、11月の利上げが示唆されるかは不透明となっています。

本日のリスク通貨は、下落基調となりました。シドニーのロックダウン延長を受けて、豪ドルは対米ドルで約0.2%値下がりし、0.75ドル台を割り込みました。カナダドルとNZドルは、0.3%の値下がりとなりました。

ECBの方針修正へのユーロの反応は限定的

本日のユーロは、対米ドルで横ばい推移となりました。最近のユーロを下支えしている要因を見極めることは、他通貨よりも困難となっています。ユーロ圏は、デルタ変異株による影響が他地域よりも小さいと市場は見なしているか、ECBがFRBと同様の柔軟なインフレ目標を織り込んだ金融政策を発表したことに落胆したかは不透明です。

本日、ラガルド総裁が今月後半の政策会合でフォワードガイダンスを大幅に修正する意向を示したものの、市場の反応は限定的でした。

下落基調でスタートした株価は、上昇の兆し

本日の欧州、及び米主要株価先物指数は下落して推移していることから、株式市場は強弱混合の動きが予想されます。一部の欧州銘柄、及びナスダックの先物指数に回復が見られたため、後半に株価回復の可能性もあるでしょう。

今週は、米企業の第2四半期決算発表も開始します。明日には、JPモルガンチェース、及びゴールドマンサックスの四半期決算が発表されます。先週金曜日には、世界的な感染拡大傾向にもかかわらず、S&P 500、及びナスダック指数は最高値付近で引けました。今週の米企業の四半期決算発表は、株価の一段高に繋がる可能性があるでしょう。