デイリーマーケットコメント–パウエル議長はインフレ緩和懸念に努め、国債利回り上昇

投稿日: 2021年7月15日21時04分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • パウエル議長はインフレ懸念を緩和、テーパリングには時期尚早との見解
  • 感染拡大懸念を前に、米ドルと国債利回り下落、円上昇
  • 中国GDPの結果で成長鈍化懸念で株価は僅かに上昇

パウエル議長はインフレ懸念を緩和し、必要に応じて対応する姿勢を示唆

昨日の議会証言において、パウエル議長は根強いインフレ上昇、及び早期テーパリング懸念の緩和に努めました。インフレに関しては、FRBメンバーが一過性に過ぎないと明確に判断できないことを認識する一方で、パウエル議長は一過性に過ぎないとの見解を維持しました。

火曜日に発表された米6月消費者物価指数は、前年比5.4%増となり、水曜日と木曜日の議会証言を控えたパウエル議長にプレッシャーをかけることになりました。インフレの上振れ容認について質問を受ける中、パウエル議長の優先事項は、労働市場の回復のようです。FRBは完全雇用を目指しており、可能な限り、テーパリングは先延ばしする模様です。

パウエル議長は、インフレが持続的だと判明し、目標の2%を著しく上回る場合は、対応の用意があることを示唆しました。

現在の所、パウエル議長の緩和的な姿勢が国債利回りを低下させました。インフレ上昇が長く継続しても、FRBの対応は、消極的に過ぎないと市場は判断しているようです。

感染拡大懸念で国債利回り低下、しかしながら米ドル安定推移

1.42%まで上昇した米10年債利回りは、昨日には1.32%を割り込みました。これを受けて、米ドルの下落も加速し、米ドルは対主要通貨で下落しました。本日は、市場が若干リスクオフの流れが強まった為、米ドルは下げ止まりました。円やスイスフラン等の安全資産も底堅く推移しました。

昨日のパウエル議長の議会証言後に若干リスクオンに傾いた市場ムードは、本日に発表された中国第2四半期GDPの脆弱な結果により、リスクオンが若干後退しました。中国第2四半期GDPは市場予想を若干下回り、経済回復鈍化への懸念が再燃しました。

中国6月鉱工業生産、及び中国6月小売売上高は市場予想を上回ったものの、経済回復鈍化への懸念を緩和させるには不十分でした。

最近のデルタ変異株による感染拡大が、経済指標結果にどの程度影響したかは不透明ですが、多数の国で新規感染者数が増加傾向にあり、ワクチン普及による明るい見通しに陰りが見え始めています。

多数のイングランド銀行メンバーによる発言、及び経済指標の強弱混合の結果により、ポンドは不安定な動きとなっているものの、対米ドルで1.38ドルを割り込みました。英6月のインフレは予想よりも速いペースで上昇したものの、失業率は若干悪化しました。FRBと同様に、イングランド銀行のベイリー総裁は、利上げは時期尚早との見解を示しています。一方、イングランド銀行のラムズデン総裁は、現行の量的緩和縮小に前向き姿勢を示しています。

昨日、市場の予想通り、カナダ中央銀行は量的緩和縮小を決定しました。量的緩和縮小の決定を受けて、カナダドルは若干上昇しました。しかしながら、サウジアラビアとアラブ首長国連邦が増産に合意し、カナダドルは若干下落しました。WTI原油先物、及びブレント原油先物は1週間ぶり安値まで下落しました。

株式市場は強弱混合の動きとなり、米企業の四半期決算に注目

株式市場では、大きな動きはありませんでした。アジア市場は強弱混合の動きとなり、欧州市場は下落してのスタートとなりました。S&P 500先物指数は、昨日には上昇して引けたものの、直近では横ばい推移となっています。

総じて、ワクチン接種率の上昇、超緩和政策の継続、及びデルタ変異株による感染拡大により、市場は楽観ムードと慎重ムードが入り混じっています。

本日は、モーガンスタンレーの四半期決算が発表されます。