デイリーマーケットコメントー変異株への懸念で、市場はリスクオフ

投稿日: 2021年11月30日19時46分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • ワクチンの有効性への懸念により、市場は再び荒い値動き
  • リスク通貨、株式、及び原油価格は昨日の回復から下落
  • 利回り低下で円とスイスフランが上昇、パウエル議長の議会証言に注目

米モデルナのCEO がワクチン効果低下について言及

米モデルナのCEOが、新たな変異株「オミクロン」への既存ワクチンの有効性が低下するとの見通しを明らかにし、金融市場で懸念が広がりました。科学界では既に同様の見解が示されていたことを鑑みると、米モデルナのCEOの発言内容はサプライズではありません。しかしながら、一部の投資家はリスク資産の売却に動きました。

米主要株価先物指数は昨日の回復幅を失い、原油価格とコモディティ通貨は、オミクロン株出現後の最安値を更新しました。リスク回避の流れにより、米国債利回りの需要が増加し、国債利回りが低下しました。金利差縮小により、円とスイスフランが回復しました。

変異は避けられない為、今後数年間は規制が継続する可能性が懸念され、市場のリスクオフムードは一段と強まりました。問題は、インフレ上昇の継続により、中央銀行による対応策が限られることです。

最終的に嵐が去るまでに、押し目買いを狙う市場参加者と、年末に向けて利益を確定したいファンドとの間のバトルがあるでしょう。ハイテク銘柄はロックダウン時の逃避先と見なされる為、ロックダウンが視野に入ると、上昇する傾向があるでしょう。

米ドル下落、ユーロ回復

リスク回避の流れは、外国為替市場にも波及しました。利上げ観測は後退し、安全資産の国債への需要が増加しました。金利差縮小により、円とスイスフランが回復しました。

ユーロ/ドルも回復し、欧州国債利回りよりも、米国債利回りの低下スピードが速いことを示しています。エネルギー価格上昇の一服も、ユーロ圏経済のリスクを緩和しました。

しかしながら、新たな変異株出現前から、ユーロ圏経済は経済回復鈍化に直面していた為、ユーロ/ドル上昇が継続する公算は小さいでしょう。株式市場での売り圧力が一段と強まった場合、安全資産の需要により、米ドルが上昇するでしょう。

欧州消費者物価指数、及びパウエル議長の議会証言に注目

本日には、ユーロ圏11月消費者物価指数が発表されます。ECB内ではインフレがピークに達したとの見方もありますが、独11月生産者物価指数が前年比18%増となっている為、今後のインフレ動向に注目が集まるでしょう。

本日のメインイベントは、GMT15:00のパウエル議長とイエレン財務長官の議会証言になるでしょう。事前公表されたパウエル議長の議会証言内容は、オミクロン株の出現がインフレの不確実性を高め、雇用や経済成長の下振れリスクもたらしたこと指摘されました。

議会証言内容では、インフレが高水準に達し、新たな規制強化がサプライチェーンの状況を一段と悪化させる為、FRBによる対応策は限られているとも受け取れます。オミクロン株が、テーパリングのペース加速や利上げに影響を及ぼすのかが注目されるでしょう。