デイリーマーケットコメントー中国経済減速懸念で市場ムード後退、株価は不安定な動き、米ドル下落

投稿日: 2022年5月16日19時20分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 中国経済指標の脆弱な結果で、今週の市場は不安定なムードでスタート
  • 上海のロックダウン緩和の見通しは、市場の安心材料
  • 米ドル高継続、ECBのタカ派的見解でユーロ上昇

中国経済指標の脆弱な結果で、景気後退リスク上昇

本日の中国経済指標の脆弱な結果が景気後退リスクの新たな懸念を浮上させ、今週の市場は、株価、原油価格、及びリスク資産の上値が重い展開でのスタートとなりました。中国4月鉱工業生産は前年同月比2.9%の下落となりました。中国4月小売売上高は、市場予想を大幅に下回り、前年同月比11.1%の下落となりました。

市場では、ロックダウンによる中国経済への深刻な打撃は予測されていたものの、世界の中央銀行がインフレへの対応に動き出し、世界の経済成長見通しが悪化する中、今回の大幅な下落は、市場ムードを後退させました。中国は世界の他の国と同様のインフレ問題には直面していませんが、中国政府による刺激策の必要性が高まっています。

昨日、中人民銀行は中期貸付制度の1年物金利を据え置き、初回住宅購入者への住宅ローン下限金利の引き下げも決定しました。初回住宅購入者への住宅ローン下限金利が引き下げられたことにより、今週金曜日には、1年物と5年物ローンプライムレートの引き下げの可能性が強まりました。

中国政府によるゼロコロナ政策の維持、及び経済刺激策が限定的な政策に留まっている中、6月1日からの上海でのロックダウン緩和のニュースは、株価を緩やかに上昇させたに過ぎませんでした。

株式市場は不安定なムード継続

中国CSI300の終値は0.8%下落し、欧州株式市場は強弱混合の動きとなりました。アラブ首長国連邦の通信会社が英ボーダフォン株の9.8%を取得したことが、英FTSE100を押し上げました。一方、利上げ観測により、フランスとドイツの株価は下落しました。

本日の米主要株価先物指数も、先週の上昇基調から下落に転じ、上値が重くなっています。先週金曜日のS&P 500は2.4%上昇し、ナスダック指数は3.8%上昇しました。米企業の決算シーズンも継続し、明日の米4月小売売上高の発表と同じ時間帯に、米ウォールマートの決算結果が発表されます。

小売売上高、或いはウォールマートの決算結果が市場予想を下回った場合、株価下落に繋がるでしょう。

インフレ上昇による小売売上高への影響はまだ見られませんが、確実に懸念材料になっています。米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は、過去10年で最低水準となりました。

明日のパウエル議長の発言に加えて、今後三日間には、多数のFRBメンバーの発言が予定されおり、利上げ方針の手がかりを掴む為、市場の注目が集まるでしょう。

豪ドルとポンド下落、ユーロは底堅く推移

中国経済の減速懸念により、本日には豪ドルが最も下落した通貨となりました。豪ドル/ドルは一時0.69ドル台を割り込み、欧州セッション開始後の市場ムード改善により、0.69ドル台を回復しました。

英経済のスタグフレーションリスクにより、本日のポンドも下落しました。ポンドの懸念材料は、今週前半にもEUとの合意の焦点となる北アイルランド議定書(プロトコル)をジョンソン首相が停止する可能性が高まっていることです。

一方、6月のECB政策会合での資産購入プログラム終了、及び7月利上げの可能性により、ユーロは上昇しました。ユーロ圏内でのインフレ上昇により、最近のECBは利上げに積極的姿勢を見せています。

インフレ上昇懸念、及びロシアのウクライナ侵攻により、先週のユーロは、5年半ぶり安値まで急落しました。スウェーデンとフィンランドのNATO加盟案により、地政学リスクが一段と上昇する可能性があります。しかしながら、本日のユーロ/ドルは底堅く推移しています。

円は強弱混合の動きとなり、対米ドルで若干下落し、ドル/円は129円台越えとなりました。