デイリーマーケットコメントー追加制裁で原油一段高、ユーロは反落

投稿日: 2022年5月31日20時04分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • EUはロシア産原油への追加制裁を発表
  • 消費者物価指数発表を控えユーロ反落、原油価格の上昇継続
  • 本日はバイデン大統領、パウエル議長、イエレン財務長官のインフレ協議予定

ロシア産原油の輸入を大幅に禁止

EU首脳は、ロシア産原油の輸入を年末までに約90%削減することで合意しました。追加制裁は、欧州内のエネルギー価格を一段と押し上げるものの、プーチン政権の主要な資金源を断ち、既に厳しい制裁に直面するロシアに一段の打撃を与えることが狙いです。

夏の旅行者数増加に伴い、原油在庫は需要を満たす水準まで低下しています。したがって、供給を制限した場合は、原油価格を一段と押し上げることになるでしょう。中国のロックダウン、及び株式市場の乱高下にもかかわらず、消費者は原油価格高騰に直面し、価格高騰が収まる兆しは見られません。

原油高の収束には供給増加、或いは価格高騰による需要低下のいずれかが必要です。米国もサウジアラビアも増産には積極的姿勢を見せていないことから、ウクライナ侵攻に関する明るいニュースがない限り、原油高は継続する公算が大きいでしょう。今週木曜日は、OPECプラスの会合が予定されていますが、現行政策が維持される模様です。

ユーロ反落

原油価格の一段の上昇は、ユーロ圏の貿易に打撃を与えるだけでなく、消費者への負担増加やインフレの悪化に繋がる為、ユーロは追加制裁ニュースにネガティブに反応しました。仏第1四半期GDPは悪化し、独5月物価指数は数十年ぶり高水準となり、インフレ上昇の中、経済成長鈍化の局面に突入する懸念を裏付けることになりました。

ECBの7月政策会合に関して、市場では意見が分かれています。0.25%の利上げが完全に織り込まれる一方で、0.50%の利上げの可能性も約35%程あります。本日に発表される複数の消費者物価指数の指標は、利上げ観測に大きく影響するでしょう。

総じて、特に現在は債券購入も停止していることから、債券市場の混乱を回避する為、ECBは緩やかで、且つ計画的な利上げを実施する公算が大きいでしょう。これにより、ユーロの下振れリスクも回避されるでしょう。

米ドル安定、米株価回復

外国為替市場では、殆どの通貨ペアが狭いレンジ幅内で取引され、大きな動きは見られませんでした。国債利回り上昇、及びユーロ下落により、米ドルが回復しました。

株式市場では、荒い値動きが継続しています。本日の欧州株式市場は概ね下落しました。米主要株価先物指数の動きから、本日の米株式市場は昨日とほぼ同じ水準でのスタートとなるでしょう。財政支出、及びFRBによる流動性供給の削減を受けて、経済の先行き不透明感が一段と上昇するでしょう。

バリュエーションも大幅に下落したものの、リスクが消滅したことにはなりません。次の懸念材料は、経済成長鈍化による企業決算の下方修正になるでしょう。市場が底打ちを認識するには、米利上げの一時停止、ウクライナ戦争の終結、或いは中国のロックダウン撤廃等のポジティブなファンダメンタルズ要因が必要になります。

本日の主要なイベントは、GMT17:15のバイデン米大統領、パウエルFRB議長、及びイエレン米財務長官のインフレ協議になるでしょう。FRBは利上げ、及び需要抑制方針を固めている為、焦点は秋の米中間選挙までに、政府が経済的生産能力をどのように拡充し、インフレを抑制できるかになるでしょう。