デイリーマーケットコメントー米消費者物価指数の結果で市場全体にショックウェーブが波及

投稿日: 2022年7月14日19時53分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 米消費者物価指数の予想を上回る結果で、1%の利上げ観測上昇
  • 翌週に日銀の政策会合を控え、円は下落基調再開
  • ユーロ/ドルはパリティ維持、カナダ中銀は大幅な利上げ、米企業の決算発表スタート

米利上げ観測が上方修正

昨日の米消費者物価指数の強い結果は、市場の混乱を引き起こし、利上げ観測が再調整されました。米6月消費者物価指数は前年同月比9.1%増となり、40年ぶりの高水準となりました。物価上昇圧力は食料やエネルギー価格だけではなく、経済全般に広がっていることが最も懸念され、インフレ抑制に動くバイデン政権にとって一段の圧力がかかるでしょう。

今回の消費者物価指数の結果を受けて、2週間後に控える次回のFOMC政策会合での利上げ予想が1%に引き上げられました。現在、FF金利先物では、1%の利上げの可能性は55%となっています。したがって、市場予想では7月の1%の利上げが基準値となっており、FRBが否定的な見解を示さない場合、市場は1%の利上げを織り込むでしょう。

今月の利上げ予想が市場内で分かれる中、本日のGMT15:00に予定されているウォーラーFRB理事の発言は、市場の注目を集めるでしょう。ウォーラーFRB理事は、土曜日からのブラックアウト期間前に発言するFRBメンバーの一人です。明日に発表される米6月小売売上高、及び米7月ミシガン大消費者信頼感指数も注視されるでしょう。

大局的な流れとして、年内の利上げが前倒しされればされるほど、翌年の利下げ観測も上昇します。急速な利上げは経済成長の減速要因となる為、翌年の第2四半期までの利下げ開始予想が市場では広まりつつあります。

ユーロは底堅い動き、株価も回復

市場では今年の利上げは翌年の利下げと見なされている為、市場は奇妙な反応を示しました。国債利回りは低下し、インフレ上昇にもかかわらず、リスクイベント後のヘッジ解消の動きにより、米ドルも下落しました。

これにより、ユーロ/ドルもパリティ割れを一旦回避できたようです。ユーロの底堅い動きが継続するかは、今後のエネルギー価格、及び翌週にロシアが欧州への天然ガス供給を停止するか次第となるでしょう。

同様の理由で、株式市場も底堅い動きとなりました。S&P 500の下落は0.4%に留まり、ナスダック指数は更に小さな下落幅となりました。米利上げへのシステミックな動きを鑑みますと、米株価は底堅い動きを見せました。ショートポジションの一部の手仕舞い、及びターミナルレートが上昇しなかったことが株価の底堅い動きに繋がったようです。

債券市場では、インフレよりも経済成長の鈍化が深刻なリスクと見なされている為、市場の底堅い動きにより楽観ムードになるのは時期尚早かもしれません。本日より米企業の四半期決算発表がスタートします。まず、JPモルガンチェース銀行、及びモルガンスタンレー銀行の四半期決算が市場の注目を集めるでしょう。

円下落、カナダ中銀は大幅な利上げ実施

日銀が利上げを検討していない唯一の中央銀行となる中、高金利を求めて、資金が海外に流出し、円安の流れが加速しています。本日、円は下落の流れを再開し、対米ドルでの年初からの下落は20%となりました。

翌週に日銀の政策会合を控え、市場は日銀がインフレ上昇を試みるのか、或いは政治的圧力に従うのかに注目するでしょう。

昨日、カナダ中央銀行は1%の利上げに踏み切り、市場を驚かせました。これにより、FRBも同様の利上げに踏み切る公算が大きくなりました。インフレ抑制の為の大幅な利上げでしたが、利上げ発表を受けて、カナダドルは一時上昇しました。その後、原油価格の下落により、カナダドルは上昇幅の殆どを失いました。