デイリーマーケットコメントーユーロドルはパリティ目前を維持、株価の下落継続

投稿日: 2022年8月31日20時02分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • ユーロ圏消費者物価指数発表を控え、ユーロドルはパリティ越え
  • FRBのタカ派的姿勢で、株安の流れ継続
  • カナダのGDP結果で、75%の利上げ観測上昇の可能性

ECB メンバーの発言、及び天然ガス価格の下落でユーロ上昇

過去24時間、ユーロの上昇は米ドルを上回り、対主要通貨で最も上昇した通貨となりました。複数のECBメンバーはユーロ安に懸念を示し、大幅な利上げに積極的姿勢を示したこと、天然ガス価格の下落、短期的なユーロ買いの動き、及びユーロ/ドルが0.9910ドル割れを達成できなかったことによるユーロ売りの手仕舞いがユーロ高の要因として考えられます。

昨日のユーロ/ドルの終値は、8月19日以来初めてパリティ越えを達成し、一段の回復への期待が高まりました。本日のユーロ圏8月消費者物価指数の発表後、ユーロが一段と上昇する可能性があります。ユーロ圏8月消費者物価指数が予想通りに前年同月比9.0%増となった場合、ECBによる0.75%の利上げ観測が一段と上昇するでしょう。

ユーロ/ドルが一段と上昇しても、1.0350から1.0360ドル内で推移している場合は、ユーロの下落相場の転換にはならないでしょう。景気減速がユーロ安のリスクが完全に払しょくされていないことを示しています。冬に備えて欧州が供給を増加させる中、今週の天然ガス価格は急落し、オランダの天然ガス先物指数は20%以上値下がりしました。しかしながら、現在の天然ガス価格は先週の水準となっており、オランダの天然ガス価格は昨年よりも1000%以上値上がりしています。

したがって、ECBが利上げを積極的に進めても、消費者物価指数は今後も上昇が継続する可能性があります。最近の傾向から、市場はECBによるインフレ対策に期待するよりも、欧州の景気後退を懸念しているようです。したがって、大幅な利上げが景気減速を悪化させると判断される可能性があります。

FRBのタカ派的見解で株価は一段安

昨日の米セッション中のリスク回避の動きにより、独DAXを除く殆どの欧州株価が若干下落して引けました。米主要株価指数は全て約1%下落し、ナスダック指数が最も下落しました。米利上げ方針により、市場はリスク資産を手仕舞いする傾向が続いているようです。過去24時間にカナダドル、豪ドル、及びNZドルが最も下落したことからも、この傾向が裏付けられます。

昨日、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は翌年の利下げの公算は低いと発言し、パウエル議長と同様に、高金利が継続をする見通しを明らかにしました。市場では依然として翌年の利下げ観測が残っている為、落胆の動きに繋がる可能性があります。FRBのタカ派的発言により、利下げはFRBの方針ではなく市場観測に過ぎないことが浸透すると、株価やリスク資産の上値が重くなる可能性があるでしょう。

カナダGDP結果は0.75%の利上げ観測を後押しする可能性

ユーロ圏8月消費者物価指数に加えて、本日にはカナダのGDPも発表されます。カナダ第2四半期GDPは、前回の3.1%から4.4%への増加が予想されています。したがって、カナダ中央銀行による積極的な引き締めに繋がる可能性があります。現在、0.75%の利下げの可能性が75%となっていますが、GDPの強い結果が利上げの可能性を一段と押し上げる公算が大きいでしょう。

しかしながら、カナダドルが米ドルと同様に上昇するとは限りません。前回のカナダ中央銀行政策会合では1%の利上げが決定されたものの、カナダドルは大きく上昇しませんでした。カナダドルは、金利政策よりも、市場のリスクムードの影響を受けやすいようです。リスクオンムードが後退すると、カナダドルは対米ドルでの下落を継続するでしょう。