デイリーマーケットコメントー市場安定の為、英中銀が為替介入実施

投稿日: 2022年9月29日19時03分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 英中銀が英債券市場に緊急介入
  • 世界の国債利回り急落、株式市場はリリーフラリー
  • 米ドル下落、円は上値の重い展開

英中銀の市場介入

昨日、イングランド銀行は国債市場崩壊を回避する為、市場介入に踏み切り、今後2週間で650億ポンドの長期国債の買い入れを発表しました。トラス政権による大型減税計画が債務拡大懸念を強め、過去数日間の英国債利回りが急騰していました。

年金基金等が保有する債券への深刻な打撃だけでなく、支払い不能や債券売りの加速に繋がるリスクにより、イングランド銀行は介入を余儀なくされました。市場全体への影響を回避する為、イングランド銀行は数十億ポンドの長期国債の買い入れを決定しました。

大規模な買い入れはインフレを一段と悪化させるリスクがありますが、危機の深刻化を回避するには、イングランド銀行には選択の余地はありませんでした。

ポンド相場にとっては、明らかにネガティブな展開です。市場介入は市場全体への波及懸念を緩和させます。その一方で、国債利回りは低下し、金利差拡大がポンドを押し下げることになります。結果として、イングランド銀行による引き締め政策による影響緩和に繋がるでしょう。

株式市場は安堵

市場介入を受けて、世界の国債利回りが低下し、株式市場の安心材料となりました。今回のイングランド銀行の介入は、金融市場のシステミックリスクが中央銀行を動かし、インフレ懸念を緩和させる一例として市場では見なされたようです。

したがって、FRBが同様に危機に直面して、市場の支払い不能リスクが浮上した場合、インフレ悪化のリスクが伴うにもかかわらず、市場介入する可能性があるかもしれません。誰も金融危機は望んでいません。昨日のS&P 500は約2%上昇したものの、国債利回りの大幅な下落と比較すると、S&P 500の回復は大幅な上昇とは見なされないでしょう。

米主要株価先物指数の動きから、本日の株式市場は下落してのスタートとなる模様です。バリュエーションを考慮すると、株価は依然として高値水準となる為、一段の下落阻止は困難でしょう。S&P 500は依然として16倍の予想収益率を維持していますが、過去10年間の底値は14倍の収益率となっています。現在の高金利政策を考慮すると、底値が一段と引き下げられる可能性があります。

米ドル下落、円は上値の重い展開

外国為替市場では、金利差拡大、及び安全資産の需要緩和により、米ドルが対主要通貨で若干下落しました。米ドル上昇後の典型的な利益確定売りの動きのようです。現在、米ドルは少しずつ値を戻しつつあるようです。

予想外にも、昨日の円は2番目に下落した通貨でした。今年に入っての世界の国債利回り急騰が円に大きなダメージを与えました。円は世界の国債利回り急落の恩恵を受けるはずです。しかしながら、金利差拡大よりもリスクオンムード回復が材料視されたようです。

円相場には好ましい展開ではありません。ポジティブな要因が上昇に繋がらない場合、円の回復は期待できません。日銀が政策金利を据え置き、先週の為替介入の大きな効果が見られない中、ドル/円の145円台越えは目前でしょう。

本日には、独9月消費者物価指数、及びイングランド銀行メンバーの発言に市場の注目が集まるでしょう。