デイリーマーケットコメントー米PPI指数伸び減速で米ドルはさらに下落へ

投稿日: 2022年11月16日20時13分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米PPI指数伸び減速でFRB利上げ鈍化に真実味
・ポーランドのミサイル爆発で二人死亡
・アジア市場は下落も米先物は上昇気味
・英10月インフレーションは前年同月比11.1%に高騰

米PPI指数伸び減速でFRB利上げ鈍化に真実味

昨日、米ドルはほぼ一日下落傾向でしたが、ポーランドからミサイル爆発のニュースがあり、若干回復を見せた後、他の主要通貨ほとんどに対し下落して取引を終えました。

米10月の生産者価格指数がヘッドラインとコア指数ともに予想以上に減速したことが明らかになり、米ドルはさらに緩やかな下落傾向にあります。この生産者価格指数は、先週の消費者物指数の上昇減速を改めて強調するとともに、インフレーションが将来的に緩和傾向にあることを示しています。

市場は現在のところ、90%が来月のFRB利上げ0.5%を支持しており、残り10%のみがいまだに利上げ0.75%と信じているようです。また翌年末までに、ほぼ0.5%の利下げを織り込んでおり、FRBよりもハト派の見解を示しています。FRBとしては、利上げ鈍化をほぼ支持しつつも、一部のボードメンバーは、金利が最終レベルに達するまで引き締めを示唆しています。

さらに経済指標がこのFRBの利上げ鈍化を支持するようになれば、米ドルは続いて下落するでしょうが、来年におそらく二度の利下げが見込まれていることで、米ドル復活の可能性も含まれています。本日発表の米小売売上高が予想以上に上昇する場合、米ドル復活のきっかけとなるでしょう。そのため、米ドルの将来的な下落は今のところ大きな弱気トレンドへの反転ではなく、大幅な下降調整とみられるでしょう。

ポーランドでの爆発による市場への影響は限定的

欧州および米株価は先日の復活から続伸し、ナスダックはFRBの利上げ鈍化の期待から1.45%上昇しました。市場閉鎖数時間前に届いたウクライナ国境付近でのポーランドのミサイル爆発ニュースがなかったら、株価はおそらくさらに上昇していたでしょう。

この爆発でポーランド人二人が死亡し、初めはロシアからのミサイルではないかとの憶測がありましたが、今朝、米政府がロシアの攻撃に対してのウクライナのミサイルの可能性を示唆しました。

アジアセッションは、本日リスクオフが拡大し、ほぼすべてのアジア指数がマイナスで取引され、米ドルが安全資産として買われました。しかし、米ドルの回復も欧州セッションが始まるとともに勢いを失い、米先物はニューヨーク市場で高いオープンを示しています。

これは市場が、ウクライナ戦争が他の国を巻き込むような大規模な戦争にならないと判断したため、取引を行う上で金融政策が依然として最も注目されているようです。このためFRBの利上げ鈍化を示唆する経済指標や高官の発言が続くと、リスク資産に目が向けられるようになり、株価の復活にもつながるでしょう。

英CPIは41年ぶり高水準、英財政計画に注目

本日に発表された英10月消費者物価指数は、前年同月比11.1%増となり、実質賃金の一段の低下、及び可処分所得の最低水準更新が浮き彫りとなりました。

英10月消費者物価指数発表前には、市場では0.50%の利上げが確実視されていました。しかしながら、本指標発表後には、0.50%と0.75%の利上げ予想に分かれています。ターミナルレートも、4.5%付近から4.57%に引き上げられました。

しかしながら、ポンドの反応は限定的でした。英10月消費者物価指数発表時のポンド/ドルは30ピップス程上昇し、1.2000付近のレジスタンスラインを突き抜け、その後に押し戻されました。明日の英財政計画発表を控え、ポンド相場は慎重ムードとなっています。英ハント財務相が発表すると予想されている増税、及び歳出削減計画は、イングランド銀行の経済成長見通しを一段と悪化させるでしょう。したがって、12月0.50%の利上げ予想復活がより妥当でしょう。

本日後半には、カナダ10月消費者物価指数も発表されます。カナダ10月消費者物価指数は、前年同月比6.9%増が予想されています。史上最も積極的な利上げ政策の終了間近の可能性が示唆されるかに市場の注目が集まるでしょう。