デイリーマーケットコメントーFRB議長タカ派姿勢軟化で米ドル下落

投稿日: 2022年12月1日19時38分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・FRBパウエル議長はタカ派姿勢軟化か
・米株価は一段上昇
・ユーロ圏インフレーションは予想以上に減速

FRB議長発言で米ドル急落

本日、米ドルは他の主要通貨に対し一段下落です。昨日、FRBパウエル議長はタカ派姿勢を弱めました。

パウエル議長は、「早ければ12月にも」利上げの減速はあり得るものの、インフレーションとの闘いはまだ終わりではないと述べました。想定内の発言内容でしたが、インフレ抑制のための一段の利上げの必要性、及び制限的な水準維持の期間についての問題にも言及しました。

先月のFOMC会合後の記者会見では、パウエル議長は利率のターミナルレベルは予想以上に高くなる可能性があり、利上げ停止を考えることは時期尚早であると発言していました。昨日、ターミナルレベルに関しては、9月予測の4.6%よりも若干高くなるだろうと示唆しました。

パウエル議長の昨日の発言は、金利政策に関してより軟化姿勢への転換と解釈されるかもしれません。

市場はターミナルレートが5%を若干上回ると予測していましたが、しかしながら、本日、来年5月に4.9%前後でのピーク達成に修正しました。パウエル議長はすぐに利下げを開始することは避けたいながらも、「過度の引き締め」は望んでいないと発言しました。しかし、市場は依然として翌年末に0.5%の利下げを引き続き織り込んでいます。

市場は、FRBの姿勢の変化に関わらず、利下げ予測に固執している可能性があります。そのため、タカ派を支持するデータや発言よりも、よりハト派的な発言に反応しているようです。パウエル議長発言で、一時的に米ドルは上昇しましたが、この発言の解釈後、下落しました。

米株価は一段上昇で回復へ

市場がFRBの来年度利下げを確信した場合、米ドルはしばらく下落するでしょう。一方、株式市場は一段と回復するでしょう。昨日、米株式市場は3つの主要指数すべて2%以上上昇し、ナスダック株価も4.41%上昇しました。

しかし、FRBの本格的な強気姿勢反転を議論するのはまだ時期尚早です。市場は今のところ、FRBの利上げ鈍化およびターミナルレート低下への見解を歓迎しています。企業も今後数か月および数年の予想キャッシュフローを割り引いて評価されるため、金利低下は現在価値の上昇となります。しかし、米の脆弱なデータが今後の利上げ鈍化を裏付けするにも関わらず、経済成長の後退は株式市場にとっても前向きな発展とはいえません。このため、経済見通しがさらに悪化した場合、脆弱なデータ結果が株式市場に与える影響も変化するでしょう。

市場は、金曜日に発表される11月米雇用統計の発表に注目が集まります。今月はADP雇用統計の予想が下回っており、下揺れのリスク傾向です。このため、結果次第では、ドルの下振れ調整と株式市場の回復が続くでしょう。

ユーロのインフレ指数への反応は限定的、ドル円3か月ぶり高値

パウエル議長の発言を控える中、ユーロ圏消費者物価指数の予想外に脆弱な結果を受けて、市場ではECBの利上げ予想に調整の動きがありました。今週前半には、12月には3度目の0.75%の利上げが確実視されていました。その後に発表された独、及びユーロ圏消費者物価指数の脆弱な結果により、現在は0.50%の利上げが有力視されています。

しかしながら、ユーロ/ドル相場では、消費者物価指数結果への反応は依然として見られません。コアの物価指数上昇により、ECBにはFRBよりも大幅な利上げの必要性があると市場は見なしているようです。市場では、ユーロ圏では今後1.4%の利上げが予想されている一方で、米国は1.1%に留まっています。当面の間は、ユーロ/ドルの買い圧力は継続するでしょう。

国債価格下落、及び国債利回りの安定推移が他国との金利差縮小に繋がり、本日に最も上昇した通貨は円でした。円はFRBの超タカ派方針で最も下落しましたが、リスクとのバランスで今後も最も魅力的な通貨となるでしょう。