デイリーコメントートランプ関税で米インフレ加速のリスク、本日のFRB議長の議会証言に注目

投稿日: 2025年2月11日19時54分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・本日から始まるFBRパウエル議長の議会証言を前に、トランプ関税で米ドルは続伸
・トランプ関税の影響が限定的となる中、株価は強弱まちまち
・ゴールドは新最高値を更新後下落
・イングランド銀行マン委員がハト派強調でポンド下落

さらなるトランプ関税でFRBのインフレ問題再浮上

トランプ大統領は昨日、鉄鋼とアルミニウムの関税を25%に引き上げるとの大統領令に署名をして、関税導入の制約を実行しました。また、相互関税計画の対象は「全ての国」であるとの脅しを繰り返し、本日または明日にも発表される見込みです。

この関税発動は、インフレ加速と戦っているFRBによっては最悪のタイミングとなりました。2年先と5年先の市場による期待インフレ率(ブレークイーブンインフレ率)が今年徐々に上昇しており、ミシガン大学とニューヨーク連銀による最新の調査では、消費者のインフレ期待も上昇し始めています。

FRBパウエル議長は、次回3月のFOMC会合での利下げの可能性が低いことを既に示唆していますが、多くのFRBメンバーは今年さらなる利下げが行われるとの見解を維持しています。しかし、投資家はこの見解を確信していないようです。ここ数日で、今年の合計利下げ幅は0.40%に低下していることから、今年はあと1回の0.25%の利下げが完全に織り込まれているのみとなります。

本日のFRB議長の証言に市場は動揺するか

トランプ関税は、今後より多くの輸入品を対象とする可能性があり、特に中国への関税が引き上げられるリスクが高まっていることから、FRBが今年中に利下げするかどうかについて、投資家はすぐに疑問を投げかけることになるでしょう。

この現状の下、本日から2日間の予定で議会証言を行うパウエル議長の発言が注目となります。パウエル議長は、本日15:00(GMT)に上院銀行委員会での議会証言にて、FRBは今年の利下げの可能性は否定できないと言及するかもしれません。

しかし、この発言はトランプ大統領にとっては都合のいいものではないかもしれず、パウエル議長はこの話題に深入りしないよう試みる可能性もあるでしょう。そうは言っても、市場は金利の据え置きが長く続くことにあまりよい反応を示さない可能性があり、パウエル議長の発言によっては、トランプ関税を受けての市場の異例の静寂さに終止符を打つことになるかもしれません。

トランプ関税で米ドル上昇も株価は反応なし

米ドルと米国債利回りは、ここ数セッションにて既に上昇していますが、株式市場では広範な売りとはなっていません。米財務省は、今週10年債と30年債で1,250億ドルを発行する計画であり、FRBによるタカ派発言によって、米国債利回りのボラティリティが高まる可能性があります。

米株式市場では、トランプ関税関連のニュースはほとんど影響が見られず、プラスであれ、マイナスであれ、直接影響を受けた株価のみのボラティリティが高まっています。AIを巡る懸念や大手ハイテク企業による予想を下回った決算報告でさえ、S&P500やナスダックが最近の調整のトレンドから打開することはできていません。

しかしながら、第4四半期全体の収益成長は、シーズン初めの予想よりを上回っており、これが米株式市場のサポート材料となっています。一方、AIを巡る懸念も長引く調整というよりは、むしろ単に大手ハイテク株であるマグニフィセント7の株価の再調整となっただけのようです。

しかし、パウエル議長の議会証言や明日の米CPI指数によって、今後の利下げ観測がさらに後退する場合は、市場の雰囲気が変わる可能性があります。明日の1月の米CPI指数は、ディスインフレの進行という観点では、わずかな期待につながるかもしれません。

ゴールドは最高値更新、ポンド下落

一方、トランプ大統領による保護主義的かつ拡大主義的な見解を背景に、ゴールドは引き続き上昇基調です。本日、ゴールドは日中最高値となる2,942.70ドルを更新した後、2,900ドル台まで後退しました。

原油先物は、米国によるロシアとイランへの最新の制約措置が原油供給の打撃となり、1%以上上昇しました。

為替市場では、先週のイングランド銀行による金利政策会合にて、0.50%の利下げに賛成したマン委員の発言がポンドの圧力となり、本日下落しています。マン委員は、イギリスの消費低下により、企業が値上げに踏み切るのが困難となるだろうとの見解を示して、予想外となったハト派への反転を正当化しました。