デイリーコメントートランプ関税に再び脚光でリスク選好度悪化

投稿日: 2025年6月3日18時32分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・トランプ大統領が関税へのスタンス強化で米ドルに圧力
・米政権は主要国に貿易条件提示を要求
・本日はFRBメンバーの発言に注目
・ゴールドと原油価格は昨日の上昇後ともに下落

トランプ大統領が貿易交渉のハードル上げ、米ドル下落

貿易交渉が再び焦点となる中、米ドルは今月下落基調でスタートしました。関税関連では、比較的落ち着いた時期が続いた後、先週、米国際貿易裁判所が関税の一部差し止めを指示したことが、トランプ大統領の怒りを買ったようで、鋼鉄とアルミニウムへの関税が引き上げられ。中国に対する姿勢強化になりました。また、5月31日に中国からの輸入品の一部に対する関税を8月31日まで延期するとの発表にもかかわらず、関税交渉を巡るセンチメントが次第に悪化していることは明らかです。

米政権が、日本、ベトナム、インドやEUといった国々に対して、6月4日までに最善の貿易条件を提示するように要求しているとの報道にも、トランプ大統領の忍耐力が限界に達していることが反映されています。特に、この方針は対象国にとって吉と出るか凶と出るかの可能性があり、市場のセンチメントには悪影響となることから、かなりリスクが高くなっています。

例えば、ある国が最善の条件を提示しないとトランプ大統領が判断する場合、早急に相互関税が復活する可能性があり、EUの場合は関税が50%が押し上げられる可能性があります。反対に、ある国がトランプ大統領の満足のいく貿易条件を提示する場合、その国は非常に低い関税率を享受することになるでしょう。

トランプ大統領の行動を予測することで、さらに予測不可能となるか

トランプ大統領の批評家はまた大統領の行動を予想して、相互関税の延期期間が7月9日から9月1日となる可能性を指摘しています。しかし、大統領はこう言った懐疑論者を黙らせ、関税に関して、米国と値切り交渉をするような国に対して強力なメッセージを送るためにも、わざと異なる戦略を選択するかもしれず、トランプ大統領がさらに予測不可能な行動に出る可能性もあります。

今月の株式市場はまちまちでスタート

この不安定な環境が、昨日の株式市場がまちまちとなった要因となりました。欧州株は小幅の赤字となり、米株価はなんとか黒字で取引を終えました。しかし、今週のニュース報道によって、早急に市場のセンチメントがマイナスとなり、リスク選好度が大幅にダメージを受ける可能性があることに投資家は依然として危惧していることから、昨日の米株価の動きに説得力があるとは言えません。

市場の焦点は経済データとFRBメンバーの発言

最近の米経済データは明るい見通しを映し出していないものの、今後の米経済データの結果によっては、この脆弱なセンチメントが好転する可能性もあります。製造業PMI企業調査の結果はまちまちとなり、米ISM製造業PMI指数は50以下でさらに低下し、中国の財新製造業PMI指数は48.3と2022年9月以来の低水準となりました。

アトランタ連銀による第2四半期のGDPNowの成長率は4.6%まで上昇したものの、この数値は第1四半期の輸入前倒しの結果、予想されていた貿易の回復が反映されています。そのため、GDP成長率も今週の経済データ、特に金曜日の米雇用統計を受けて、著しく変わる可能性があります。

本日発表されるユーロ圏の消費者物価(CPI)指数速報値は、木曜日のECBによる金利政策会合での利下げ観測に影響しないと見られているため、本日はJOLTSによる求人件数とFRBメンバーの発言が注目となるでしょう。ともにハト派で知られ、今年FOMC会合にて投票権を持つシカゴ連銀グルースビー総裁とFRBクック理事は、関税を巡る混乱が落ち着く頃に利下げの可能性があることを示唆し、超タカ派で知られ、今年は投票権を持たないダラス連銀ローガン総裁が、FRBメンバー間の発言内容のバランスを保つと予想されています。

昨日のラリー後、ゴールドと原油は下落

イスタンブールでのウクライナとロシア間の停戦交渉において、いくらかの進展があった後、ゴールドは現時点で3,360ドル辺りまで下落しています。停戦交渉が、たとえ数日間でさえも合意する可能性がある場合は、ゴールドがさらに下落し、最近の弱気トレンドの強化には3,200ドル台を大幅に下回る必要があるかもしれません。

原油価格は63ドル台を突破しようと試みており、50日単純移動平均線に苦戦しています。トランプ大統領がアラスカ州石油・ガス開発禁止を撤廃して、イランとの取引を提案しているため、一部のウラン濃縮と各施設の部分的な解体が可能となる中、OPECプラスが再度石油増産を決定したことがすぐに裏目に出る可能性があります。原油価格が60ドルを下回る場合は、最近の安値まで再度下落する可能性となります。