デイリーコメント ― 米関税書簡が米ドルを押し上げ、リスク選好度は後退

投稿日: 2025年7月8日19時07分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• トランプ大統領からの関税書簡と8月1日の期限に注目
• 中国とEUは関税書簡の送付はなく、米ドル高が進む
• 株式は不安定な動き、ゴールドは根強い需要を再確認
• 豪中銀が予想外の金利据え置きで、豪ドルが上昇

開放日、再び

米国の減税・歳出法案が承認されたことで、トランプ大統領は自身が二番目に好む話題、すなわち関税問題に再び焦点を当てることができるようになりました。4月2日の開放日とホワイトハウスのローズガーデンでの演説から3ヵ月後、トランプ大統領は90日間の相互関税停止措置を8月1日まで延長することで、問題を先送りとしました。

一方、日本や韓国を含む14カ国は、8月1日までにトランプ大統領の要求を受け入れなければ、24%から48%に及ぶ厳しい関税を課す可能性について分析した書簡を受け取りました。興味深いことに、EUとインドは「トランプ関税書簡」を受け取っておらず、これは交渉が進行中であり、トランプ大統領がこれまでの進展に満足していることを示しています。

市場はリスクオフモードに転換

日本と韓国の両国がトランプ大統領からの関税に関する書簡を受け取ったというニュースを受けて、市場はリスクオフの反応を示し、米ドルはユーロと円の両方に対して上昇しました。特に注目すべき点は、この反応が4月2日の相互関税発表後の市場の動きとは異なっていることです。この4月2日という日は、米ドルの下落基調が始まった日であり、それ以降、ユーロ/ドルは1.17を上回る水準で推移しています。

日本の石破首相が国内の重要産業を守る姿勢を強く示したことが、トランプ大統領の怒りを買い、円相場は苦境に立たされているようです。興味深いことに、日本では7月20日に参議院選挙が行われる予定です。最近の動向は、石破首相が率いる自民党が、現在保持している参議院での単純過半数を維持できる可能性を高めるか、あるいは現在の低い支持率を裏付ける結果となり、首相が支持を失い、少数与党政権の崩壊を引き起こす可能性さえもあります。ドル/円は現在146円20銭付近に向けて上昇していますが、強気なブレイクアウトを裏付けるには148円を明確に上抜ける必要があります。

一方、株式市場はやや弱含みの展開となっていますが、その反応は限定的で、おそらく中国もEUも現時点ではトランプ大統領の標的になっていないことが背景にあると考えられます。しかし、ゴールドは昨日米ドルが比較的堅調に推移したにもかかわらず、3,300ドル台から40ドル上昇するなど急騰しました。ゴールドは最近あまり注目を集めていませんが、依然として根強い需要に支えられており、特に3,260ドル付近を試す場面ではその傾向が顕著です。

今後の米国とEUの貿易協議の進展と、関税書簡の追加国の可能性に注目

投資家たちは、今後トランプ大統領の関税書簡を受け取る可能性のある追加国や、米EU間の貿易協議の進展状況に関する情報を探すため、ニュースに釘付けになる状態が続くでしょう。トランプ大統領のスタイルを考えると、トランプ大統領が目的を達成するため、米EU関係が一時的に悪化する可能性も否定できません。

その間にも、トランプ大統領がFRBに焦点を移すのはそうは遠くはないでしょう。次のFRB議長候補の一人と噂されているウォーシュ元FRB理事は、あらゆる面でトランプ大統領の好感を得ています。同氏の最近の発言では、関税によるインフレリスクを軽視する姿勢を示し、21世紀型の「新しい」FRBという詳細な自身のビジョンを語りました。ただし、このFRB議事の選出プロセスが美人コンテストのように人気取りになる場合、FRBという機関の信頼性が損なわれる危険性があるでしょう。

豪中銀は金利据え置き決定も、ハト派的スタンスを維持

本日、強い市場の期待に反して、豪中銀は金利を据え置く決定を下し、事実上さらなる情報を待つ姿勢をとりました。オーストラリアは関税に関する書簡を受け取ってはいないものの、まだ完全に安心できる状況ではなく、最近の関税問題に関する動向、そして2025年第2四半期の豪CPI報告の発表が7月下旬に控えていることを考慮すると、本日の決定は納得のいくものです。

注目すべきは、豪ドルが予想外の上昇を見せ、月曜日の大幅な米ドル高に反応して再び0.6548の水準を試したことです。しかし豪中銀は依然として緩和サイクルを維持しており、状況次第では、8月12日の次回政策会合にて、大幅な利下げが実施される可能性もあるため、豪ドルの上昇は徐々に弱まりつつあります。