マーケットプレビュー-低調な米雇用統計後の米ドル安定、しかし貿易、及びシリア問題でリスクオフ

投稿日: 2018年4月9日20時01分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

外国為替市場: 先週金曜日に二度下落した米ドルは、本日には回復を試み、対円で107円台を回復しました。

米中貿易摩擦の緊張が高まる中、米3月非農業部門雇用者数の予想を下回る結果は、米ドルを5週ぶりの高値から下落させました。しかしながら、週末中のトランプ大統領の発言により、米中貿易戦争への懸念が若干緩和され、欧州セッション開始時の米ドルインデックスは90.16まで若干回復しました。米ドル安の恩恵を受けて、ユーロとポンドは先週に記録した数週間ぶり安値から回復しました。直近のユーロ/ドルは1.2277ドルで取引され、ポンド/ドルは上昇幅を拡大させて1週間半ぶり高値となる1.41ドル台を達成しました。

豪ドルとNZドルも対米ドルで上昇し、それぞれ0.2%上昇した0.7690ドルと0.6%上昇した0.7301ドルまで値を上げました。カナダドルは対米ドルで若干下落したものの、先週金曜日の5週ぶり高値1.2729カナダドル付近で推移しました。

株式市場: 先週金曜日の米株式市場は2%以上下落したにも関わらず、本日のアジア株式市場は上昇し、欧州市場も上昇してオープンする見込みです。最も上昇したのは香港株式市場で、1.5%の上昇でした。日経平均株価も0.5%上昇しました。

欧州市場に関しては、主要株価先物指数が約0.5%程上昇して推移しています。

コモディティ: ゴールド価格は、シリアの空軍基地攻撃による影響を受けていないようです。シリア政府は、先週土曜日のシリア軍による化学兵器を使用した攻撃の疑いに対応し、米国がミサイル攻撃を行った模様であると表明しました。しかしながら、米政府はミサイル攻撃への関与を否定しています。一方で、北朝鮮側が翌月の米朝会談で非核化を協議する用意があると米国に伝えたというニュースが、中東の緊迫状況を緩和させました。直近のゴールド価格は、1オンス1331ドルを若干下回る水準で推移していました。

原油価格は、先週金曜日に発表された米原油リグ稼働数の増加を材料視せず、本日には上昇しました。WTI原油先物とブレント原油先物は共に0.45%上昇し、それぞれ62.33ドルと67.42ドルまで値上がりしました。

主要な動き: 米ドルは107円付近で底堅く推移

本日の外国為替市場は比較的静かな動きとなっています。先週金曜日には、米雇用統計の低調な結果、及び米中貿易摩擦の緊迫化が市場のリスク選好ムードを後退させたものの、米ドルの下げ幅は限定的で、市場の関心は、既にスタートし来週から本格的にスタートする第1四半期決算に向けられました。先週金曜日のドル/円は106.76円で下げ止まり、現在の所107円付近で推移しています。

更に、先週の米ドル安の要因には、パウエルFRB議長の発言がありました。就任後初となる大きな講演において、パウエルFRB議長は「緩やかな利上げ」を述べ、お馴染みの言葉を繰り返しました。更に、パウエルFRB議長は、「賃金の大幅な上昇が見られない限り、労働市場は過度に堅調ではない」と発言し、賃金インフレに引き続き慎重な姿勢を示しました。

米3月非農業部門雇用者数は、市場予想の19.3万人増に対して、10.3万人増の結果でした、しかしながら、前月結果は若干上方修正されました。一方、米3月平均受給は市場予想通りの前年比2.7%増となりました。

先週金曜日の新たな米ドル安の動きは、他の主要通貨を上昇させました。ユーロ/ドルは5週ぶり安値1.2212ドルから上昇したものの、独2月輸出の予想外の低下により、1.2290ドルで一段の上昇は抑制されているようです。ポンド/ドルはより大きな回復を見せ、対米ドルで1.41ドル台越えを達成しました。NZドル/ドルも急騰し、0.73ドル台を再度試す展開となりました。

週末中に、トランプ大統領、及びトランプ政権の政策担当が、「貿易戦争」の解決策を見出すための協議に前向きな発言をしたことにより、市場のリスクムードが若干回復しました。ツイッター上で、トランプ大統領は「中国は貿易障壁を取り下げるだろう。なぜなら、それが正しいことだからだ。税は相互的になり、知的財産権における取引が成立するだろう。」と発言しました。

しかしながら、先週金曜日に中国商務部のスポークスマンが「両国が交渉に参加することは不可能だ」と発言した為、両国がスムーズに交渉できるにはもう少しの努力が必要なようです。

米国は、近隣国との貿易関係改善に恵まれたようです。カナダ、及びメキシコとのNAFTA交渉合意の期待は高まっています。合意への楽観的観測が先週金曜日のカナダドルを対米ドルで1.2729カナダドルまで押し上げたものの、今月内の合意の可能性は低いとの報道により、1.2780ドルまで押し戻されました。

本日これからの市場:  ECBメンバーの講演に注目

本日これからは、ユーロ圏4月Sentix投資家信頼感指数以外に重要な経済指標発表は控えていない為、市場の関心は、ECB政策担当者の講演に向けられるでしょう。GMT1300には、コンスタンシオECB副総裁が欧州議会でECB年次レポートを発表します。GMT1645には、プラートECB専務理事がドイツで開催される欧州金融フォーラムで講演を行います。

3月末からユーロ上昇の勢いが失速し、2018年初めに緩やかな経済成長が見られる中、ECBのユーロ圏経済への見解、及び金融政策の減速の兆しに市場は注目するでしょう。ECBによるタカ派的発言は、ユーロ/ドルを1.23ドル超えを達成させる可能性があります。一方、経済成長に懸念が示された場合、ユーロ/ドルは現在の1.22ドル台を割り込む可能性があります。

今週も市場の関心は、米中貿易関係の進展に引き続き向けられるでしょう。明日からアジアで開催されるボアオ・アジアフォーラム2018において、習国家主席がより多くの米企業による中国市場参入許可を公表するかに市場は注目するでしょう。

中国側が米国側に十分に譲歩した場合、リスク資産、及び米ドルは上昇するでしょう。