デイリーマーケットコメントー米国の追加関税と米製造業PMIの弱い結果で米ドル安

投稿日: 2019年12月3日20時02分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • トランプ政権による南米への追加関税で、貿易問題拡大
  • 貿易摩擦悪化とISM製造業PMIの脆弱な結果でリスクオフ
  • 株価下落、米ドル安でユーロ上昇
  • 豪中銀による様子見姿勢で豪ドル上昇、NZドルも上昇

トランプ大統領による追加関税発表により、貿易問題悪化

昨日、トランプ大統領がブラジルとアルゼンチンから輸入するアルミニウムと鉄鋼への関税を公表し、長引く貿易戦争に予想外の展開がありました。トランプ大統領は、ブラジルとアルゼンチンによる大幅な通貨引き下げから、米農家を保護する為に、関税を速やかに課すことを表明しました。しかしながら、ブラジルレアルとアルゼンチンペソの最近の下落は、為替介入によるものではなく、経済危機によって引き起こされています。したがって、トランプ大統領の決定は、ブラジルとアルゼンチンの状況を悪化させることになるでしょう。

更に、トランプ大統領による関税発動は、フランスにも向けられました。フランスが導入したデジタルサービス税が、グーグルやフェイスブック等の米企業に不当な負担を負わせていることへの対抗措置として、トランプ政権はフランスから輸入されるワイン、チーズ、及びハンドバッグ等に最大24億ドルの追加関税を課すことを提案しました。

貿易摩擦の悪化により、最近の米株価を押し上げてきた米中通商協議の「第一段階の合意」への楽観的観測は、後退しました。昨日、ダウジョーンス、S&P 500、及びナスダック指数は全て約1%値下がりしました。本日のアジア株式市場でも、株安の流れが引き継がれました。しがしながら、中国株式市場は、先週末の中国製造業PMIの強い結果による楽観的見通しが根強く残り、前半の下げ幅を回復し、上昇して引けました。

ISM製造業PMIの脆弱な結果で米ドル下落

米ISM製造業PMIの予想を下回る結果も、市場のリスクオフの流れを一段と加速させました。市場の注目を集めた米11月ISM製造業PMIは、市場予想の49.2に対して、48.1と予想外に低下しました。

本指標結果により、最近の経済指標の好調な結果への疑問が浮上し、米経済が減速の局面から脱却していない可能性が浮き彫りとなりました。市場では、最近後退した米利下げ観測の再浮上に繋がり、昨日の米ドルは対主要通貨で下落しました。

ドル/円は108.91円まで値を切り下げた後、109円台を僅かに上回る水準まで回復しました。米ドル安によりユーロ高が進み、ユーロ/ドルは7週ぶり安値1.0979ドルから約2週ぶり高値1.1089ドルまで急騰しました。

しかしながら、総選挙を間近に控えたポンドは、米ドル安にもかかわらず、上昇には繋がりませんでした。12月12日の総選挙では、宙づり議会の可能性が懸念されています。

豪ドルとNZドル上昇

豪ドルとNZドルも、米ドル安の恩恵を受けた通貨でした。追加利下げ観測の後退により上昇基調を継続していたNZドルは、本日には4か月ぶり高値0.6524ドルまで値を切り上げました。本日、政策金利の据え置きが発表された豪ドルも、対米ドルで0.6852ドルまで上昇しました。オーストラリア準備銀行は、追加利下げの余地を明確に残したものの、現行政策による効果を見極めてから、追加利下げを決定する姿勢を示唆しました。

明日のGMT0030に発表される豪第3四半期GDPは、豪ドルのリスク材料になるでしょう。