デイリーマーケットコメントー米雇用統計の強い結果は米金融引き締めの追い風、米ドル上昇

投稿日: 2022年8月8日20時04分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 米雇用統計の強い結果で、米ドル高継続
  • 国債利回り上昇で円とゴールド下落、株価は強弱混合の動き
  • 原油価格は急落後に安定推移、米国とイランの核協議に注目

積極的な米利上げ観測

複数の米経済指標では経済減速の兆しが示されたものの、先週金曜日の米雇用統計は、好調な米労働市場を浮き彫りにしました。米7月非農業部門雇用者数は、市場予想を大きく上回る52.8万人増となりました。失業率は5年ぶり低水準の3.5%となり、平均時給は1月以来の上昇となりました。

市場では、米雇用統計の強い結果がインフレ上昇の継続として解釈され、FRBが利上げペースを加速させる可能性が予測されました。米雇用統計発表後、9月の0.75%の利上げの可能性は、40%付近から70%まで大幅に上昇しました。

しかしながら、異なる調査結果による問題も残っています。本年度の給与調査では労働市場の成長が示された一方で、世帯調査では雇用減少が示されました。仕事を2つ掛け持ちしている労働者は給与調査では2回計上されますが、世帯調査では1回のみ計上されることが結果に影響しているようです。したがって、給与調査での強い結果は、実際の状況を反映していない可能性があります。

米ドル上昇、円下落

外国為替市場では、FRBの積極的な利上げ観測により、米ドルが対主要通貨で上昇しました。これにより、逆イールドの動きが加速しました。短期国債利回りが長期国債利回りよりも速いペースで加速し、債券市場では、金融政策が経済成長失速に繋がる懸念が浮き彫りとなりました。

世界的に国債利回りが上昇する中、円は一段と下落しました。日銀が緩和政策を維持する中、他国の国債利回りが上昇すると円安に振れ、景気後退の懸念が強まると円高に振れます。しかしながら、日銀が円安に繋がる政策をどれくらい維持できるかは疑問です。エネルギー価格が高騰すると、円安はエネルギー輸入に依存する日本のような国は貿易赤字に繋がる為、大幅な円安は逆効果です。

ゴールドも同様の動きとなりました。米雇用統計の強い結果がFRBに積極的な利上げを後押しし、米ドルと国債利回りが上昇した為、ゴールドも下落に転じました。

株価は方向性に欠けた動き、原油相場は米国とイランとの核協議に注目

米株式市場は強弱混合の動きとなりました。国債利回り上昇がバリュエーションの高い株価の下落に繋がった一方で、バリュー株の買戻しにより、S&P 500は下げ幅を殆ど回復させ、終値は緩やかな下落に留まりました。

米上院での「インフレ抑制法案」の可決にもかかわらず、米主要株価先物指数は上昇してのオープンを示しています。インフレ抑制法案では、気候変動対策、薬価引き下げ、一部の法人税引き上げが盛り込まれている一方で、企業の自社株買い対して1%の課税も加えられています。

今秋に中間選挙を控える中、米国とイランとの協議が再開し、合意間近と報じられています。合意に向けて全ての問題が解決されるかは不透明ですが、中間選挙前にガソリン価格を引き下げるには、タイミングが最も重要です。米国とイランの核協議再開は、最近の原油相場の荒い値動きに繋がっているようです。