デイリーマーケットコメントーFRB 議長の発言でドル高、英中銀も大幅利上げで引き締めムード継続

投稿日: 2022年11月3日20時44分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • FRBの宣言は利上げ鈍化を示唆もパウエル議長はタカ派に維持
  • ターミナルレートをさらに引き上げ、米ドル上昇も米株式市場は下落
  • イングランド銀行は過去30年最高の75%利上げか

パウエル議長タカ派発言の影響

先日米ドルは主要外貨に対し上昇して取引を終わり、本日も引き続き上昇傾向で、米ドルの復活を取り戻しています。

これは先日のFOMC会議後の声明が市場の期待に応えたものであったにも関わらず、パウエル議長が記者会見において、予想外にタカ派の発言をしたことにが原動力となっています。FOMCによる4回連続の0.75%利上げは大方予想されていたものの、政策決定後の声明では小幅な利上げも将来的にあり得るとの暗示していると思われていました。

しかし、先日の記者会見でパウエル議長は、利上げの一時停止を議論することは時期尚早であり、前回の利上げ以後のデータは、ターミナルレートが前回の予想以上に高くなることと示唆していると述べました。したがって、2023年の予想中央値である4.6%はおそらく引き上げられることになるでしょう。

このFRBの大幅利上げとパウエル議長の記者会見の影響で、来月12月の利上げに関しては、今のところ0.5%か0.75%で市場では意見が分かれていますが、ターミナルレートについては5.15%近くまで引き上げました。2023年末までには、約4.85%あたりの利率を予想しており、FRBの最新の観測よりも0.25%高い率となります。

米ドル、国債利回りが上昇も株価は下落

今後はFRBがどこまでタカ派発言を続けることになるかに視点が集まります。そのため、ドル高が継続する場合、その発言にも変化がみられるようになる可能性があります。

本日の好調な失業保険申請件数と明日の堅調な雇用統計の発表によって、ドル高は勢いを増す可能性がありますが、インフレーションのさらなる緩和または景気後退の深刻化を示す最初の兆しとともに米ドルは著しく下落することも考えられます。ただ、他の世界主要中央銀行が利上げの鈍化を示唆している中、FRBだけがタカ派の方針を継続する可能性があります。そのため、現在の所、FRBがタカ派から逆へ転換するという憶測はないといっていいでしょう。

米株式市場もまたパウエル議長の発言に影響を受け、主要3指数は下落で取引を終わりました。大手ハイテク銘柄を取り扱うナスダックは3%以上下落し、金融政策と金利が投資家たちの最も注目する案件であることを裏付けました。これは米国債利回りの回復からも明らかです。たとえ近い将来、利率の鈍化への新たな期待から株価購入が行われたとしても、世界的な景気後退と高騰するインフレーションへの懸念によって、株式市場に明るいニュースがもたらされるには限界があるといえます。

英中銀の決定でもポンド上昇にはまだ課題が残る

本日、イングランド銀行がこの引き締めムードに続く予定です。トラス政府による財政源の不確かな減税案が引き起こした経済混乱以降初となる本日の金融政策委員会では、トラス首相の辞任により超大幅な1%利上げへの圧力は緩和されました。現在のところ、投資家、エコノミストともに大方0.75%の利上げで同意しています。しかし、新スナク政府が秋の予算案を今月17日に遅らせたことから、財政政策がイギリス経済に与える影響を見積もることが難しいため、イングランド銀行が安全策をとって、小幅な0.5%の利上げに落ち着く可能性もありえます。イングランド銀行は今年末にも景気後退に陥るとの見解を示しており、10月の購買担当者景気指数(PMI)が期待外れであったことからも、小幅な利上げ説は信ぴょう性を帯びています。

イギリスは10%を超えるインフレーション対策のため、たとえ本日0.75%の利上げを決定したとしても、暗い経済の見通しからこれ以上の利上げが正当化されるとは言えないため、来月12月以降には利率を鈍化するかもしれません。

どちらの利上げ率に決定したとても、ポンド安に動く可能性があるため、ポンドが上昇し、金融政策を維持するために、イングランド銀行は将来的に大幅0.75%の利上げの可能性を示唆する必要があるかもしれませんが、その確率は低いといえるでしょう。