デイリーマーケットコメントーFOMC議事録発表後、米ドル下落、米株価上昇

投稿日: 2022年11月24日19時20分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • FOMC議事録は利上げペース鈍化への同意を浮き彫り
  • 米ドルは対主要通貨で一段安
  • 米感謝祭を控え、米株価上昇
  • 価格の上限設定協議で、原油価格下落

FOMC議事録でのオーバーシュート懸念浮き彫りで、米ドル安

昨日に一段と下落した米ドルは、本日のアジアセッションでも下落基調を継続しました。FOMC議事録の発表後、投資家はロングポジションの一段の手仕舞いに動きました。FOMC議事録では、急速な金融引き締め効果の浸透により、緩やかな利上げへの移行に多数のFOMCメンバーが同意したことが明らかになりました。しかしながら、より重視されたのは、オーバーシュートへの懸念上昇でした。FOMCメンバーは、利上げペースよりも、ターミナルレート、及び金融政策が重要な課題であると強調しました。

記者会見でのパウエル議長は、利上げ停止を検討するには時期尚早であると発言し、全てのFOMCメンバーがパウエル議長と同様のタカ派的見解を維持していないことも浮き彫りとなりました。FOMC政策会合がインフレ発表前に開催されたことは、2023年末までの約0.5%の利下げ予想の追い風となりました。インフレの予想以上の低下が明らかになった後も、複数のメンバーは利上げペース鈍化に反対しています。

米総合PMIが5か月連続で景気拡大・縮小の節目である50を下回っていることから、当面の間、米ドル安は継続するでしょう。12月のFOMC政策会合は、調整の動きの終焉、或いは下落相場への転換を判断する材料となるでしょう。利上げ決定よりも、発言のトーン、及び最新の経済見通しが着目されるでしょう。

米感謝祭を控え、米株価上昇

FOMC議事録の内容で米株価は上昇し、米感謝祭の祝日前の取引を上昇して引けました。利上げにより反応するナスダック指数は、政策金利によるバリュエーションへの影響が予想を下回る期待により、火曜日の上昇から更に1%上昇しました。

現在の所、株式市場の大きな転換の公算も小さいでしょう。市場がFRBの景気減速兆しに注目する一方で、他の主要な中央銀行は既に利上げペースを鈍化させています。これにより、FRBは最もタカ派寄りの中央銀行になっています。米経済指標の脆弱な結果は、利上げペース鈍化見通しの追い風となるものの、株式市場は経済への打撃を反映していません。今後、見通しが一段と悪化した場合、脆弱な経済結果への株式市場の反応が変化する可能性があります。

本日の米株式市場は、感謝祭の祝日により閉場となっています。

G7の原油価格上限設定検討で原油価格が4%以上下落

FOMC議事録後の市場全体のムード改善にもかかわらず、昨日の原油価格は下落しました。G7がロシア産石油の価格上限設定を計画していることが材料視されたようです。一方で、米経済指標は予想を上回るガソリン在庫を浮き彫りにしました。ブレント原油先物、及びWTI原油先物は4%以上値下がりし、9月の安値82.50ドルと76ドルに再び接近しています。

原油の最大の輸入国、中国での需要鈍化が特に懸念される中、G7の動きは原油安を加速させました。中国では、新型コロナウイルスの感染者数増加によって、規制が強化させています。中国政府が預金準備率引き下げに積極的姿勢を示したことにより、サポート水準の下抜けは先延ばしされる可能性があります。中国でのロックダウン緩和期待が後退し、中国経済回復の目途は立っていません。したがって、原油価格が9月安値を割り込むのは時間の問題かもしれません。