デイリーコメントートランプ大統領による相互関税計画に市場は安堵感

投稿日: 2025年2月14日20時20分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・相互関税は全ての貿易相手国が対象も交渉の余地残す
・市場は相互関税を脅しと判断、好調なPPI指数も考慮せず、米ドル下落、株価上昇
・株式市場のリリーフラリーもゴールドは上昇し、最高値更新に近づく

トランプ関税への懸念は安堵感へ

市場の懸念材料であったトランプ大統領による相互関税の発表は、大規模な貿易戦争の開始というよりは、交渉戦略の一環であると見られたことから、昨日の市場には安堵感が広がりました。この相互関税は米国の貿易相手国全てを対象としており、米国からの輸入品に課せられた全ての関税または非関税について同額を課すことを目的としているものの、詳細が確定するには数か月ほどかかる可能性があります。

トランプ大統領は商務長官に対して、各国に対する個々の関税率への調査をまとめる期日の目標を4月1日としています。投資家は、この期日を各国との交渉成立までの期限と判断しました。

カナダとメキシコに対する25%の関税が延期されたことを受けて、トランプ大統領の提案する関税のほとんどは脅し通りにはいかず、可能な限り譲歩を生み出したいとの意図があると見られます。

米経済データはインフレ加速を示唆

しかし、EUやイギリス、そして日本など主要な貿易国との関税を巡る交渉の結果を予想するのは時期尚早と言えるものの、投資家は、トランプ氏が再びインフレ加速の危機に直面するようなことはしないと見ているようです。

今のところ、インフレ加速の方が大きなリスクに見えますが、市場は米経済データから良い兆候を捉えようとしているようです。昨日発表となった1月の米生産者物価(PPI)指数は、予想を上回り、水曜日に発表された1月の米消費者物価(CPI)指数も予想を上回りました。

米インフレは抑制出来ている状態とは言えず、投資家はFRBによる今年中の追加利下げを現在約33%の確率と織り込んでいます。しかし、今月末に発表される米PCEインフレ指数が、今週のCPI指数とPPI指数よりも大幅に軟化するとの期待によって、リスク選好度が今週徐々に改善しているようです。

米ドルと日本円は下落基調

水曜日に3週間ぶりの高水準まで上昇した米国債利回りは、昨日急低下したため、米ドルも主要通貨に対して2か月ぶりの安値まで下落しました。このため、トランプ関税により他国よりもいくらか影響を受けやすいとされているユーロとポンドが待望の上昇を果たしました。

豪ドルとNZドルは、トランプ大統領による懲罰的な課税対象にならない可能性が高いことから、今週は上昇基調となった一方で、日本円は今週下落に向かっています。トランプ大統領が日本と韓国を不平等な貿易国として名指ししたとの報道があり、その結果、日本円の対米ドル上昇が限定されて、リスクオンのムードによって、他の主要通貨に対しても下落しました。

今週の株式市場は大きく上昇へ

米株式市場では、S&P500が1%上昇して、1月23日に更新した最高値付近に近づきました。ナスダックも上昇しましたが、12月中旬に更新した最高値にはまだ遠いようです。

欧州では、ドイツのDAX指数とイギリスのFTSE100 指数などの主要取引所が既に最高値を更新しており、香港市場に上場している中国のAI株はディープシークに関する報道を受けて急騰しています。

トランプ関税の不透明さでゴールド上昇

しかし、このリスクオンによる株価上昇に確固たるサポートがあるのかは疑問です。トランプ大統領が貿易相手国と積極的に妥協に応じるとしても、世界中の国との交渉は政府関係者にとっては膨大な課題となり、その間、連日の関税関連のニュースが企業にとっての不確実さを作り出す可能性が高くなります。

さらに、関税の引き上げによる米インフレへの影響が最小限となると想定しても、FRBが緩和サイクルをすぐに再開できるとは保証できません。今週の米インフレに関する経済データへの市場の反応は楽観視しすぎと言え、市場はすぐに現実に直面することになるかもしれません。

しかし、市場の前向きなムードの中、ゴールドが引き続き上昇しており、全ての投資家が現在の世界情勢に対して楽観視しているのではないことが示唆されています。ゴールドは2,950ドルに近づいており、新たな最高値更新に向けて上昇しています。