デイリーコメントー 米経済成長の見通しへの懸念高まる中、米ドルは方向性を模索

投稿日: 2025年3月10日19時29分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・トランプ関税と米経済への懸念高まり、米ドル下落
・アルミニウムと鉄鋼への関税発動となる12日に注目
・米株式市場にはリスクセンチメントの向上が必要
・原油価格と暗号資産には引き続き圧力

米経済成長への懸念から米ドル下落

先週のドル指数は、2022年11月以来最悪の週間パフォーマンスとなり、米ドルはユーロに対してほぼ4.5%も下落した後、サポートを見つけるのに苦労しています。先週金曜日の米雇用統計は、特別なサプライズはなく、主要なISM企業調査とともに、米経済は堅調に成長しているものの、トランプ大統領の政策により、徐々に勢いを失いつつあることが引き続き示唆されています。

米雇用統計発表後に、多くのFRBメンバーが講演し、経済成長の勢いが失っているように見えることと、短期的なインフレ期待が急激に高まっていることが焦点となりました。パウエル議長は、FRBの現在の「様子見」の姿勢を強調しましたが、トランプ関税が米経済成長とインフレの見通しの両面で懸念が高まることは明らかです。

今週もトランプ関税が話題となる可能性

トランプ大統領がカナダとメキシコへの関税に関して二転三転したことを受けて、焦点は、3月12日に発動するアルミニウムと鉄鋼への関税に移っています。ルトニック商務長官は、今週水曜日に免除が制定される可能性については、今のところ否定しているものの、トランプ大統領がスタンスを簡単に変更することは可能です。トランプ大統領は、全ての輸入品への関税賦課から、相互関税の期限とともに4月2日まで延期するまで、様々な選択肢があります。

トランプ大統領は、株式市場の混乱させるような一貫性のない戦略を取っており、その結果、FRBはインフレの見通しに対してそれほど確信をもてないにもかかわらず、利下げをせざるを得なくなるとの見方もあります。トランプ大統領によるこの戦略は、米主要株価指数が最近の最高値から5.5%から9.5%ほど下回っているため、今のところ機能しているようです。ナスダック100が最も下落しており、大統領選のあった昨年11月以来の全ての上昇分を還元しています。

今週は、FRBメンバーがブラックアウト期間突入により公に発言することがなくなり、市場は政府機関閉鎖の可能性と水曜日の米CPI(消費者物価)指数に注目することになるため、この状況はさらに深刻となり得ます。米下院にて明日、9月30日まで政府資金を確保するつなぎ予算案を決議することになります。

一方、米株式市場がさらに下落し、水曜日の米CPI指数が軟調となる場合、3月19日のFOMC会合にてFRBがハト派に転じることへの期待が高まる可能性があります。市場は、年内の合計利下げ幅を0.75%に織り込んでおり、5月7日のFOMC会合での利下げの確率を40%と予想しています。昨日発表された中国のCPI指数とPPI(生産者物価)指数が下振れサプライズとなり、デフレーションへの懸念が市場に戻っていることも注目に値します。

ユーロ上昇も見通しは依然として不透明

ユーロはここ数週間で力強く上昇していますが、ユーロを巡る状況は引き続き難題を抱えています。ECBは先週追加利下げを発表し、ラガルド総裁は次回4月会合にて金利の据え置きを示唆しましたが、現在の市場の楽観ムードが維持され、年末までの基礎となるには、より好調なユーロ圏の経済データが必要となります。

しかし、ユーロ圏にとっては何事も簡単にはいきません。例えば、先週のEU特別首脳会談後に発表された熱烈な声明にもかかわらず、ドイツとフランスは現在、欧州の防衛プロジェクトに充てられた1,500億ユーロの使用方法について意見が一致していません。前向きな面としては、ドイツのキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU) と中道左派である社会民主党(SPD)が連立政権樹立に向けての第1回予備折衝を終えました。焦点は、現在の議会を通じて債務ブレーキの改正に移っていますが、報道によると、この改正は膨大な作業となりそうです。

原油価格は主要ゾーン突破できるか、仮想通貨は再びラリーとならず

ゴールドは2,900ドルを若干上回って横ばいで取引されており、原油価格が引き続き注目となっています。原油価格は、2023年5月以来の安値を更新した後、主要ゾーンである66.95ドルから67.80ドル圏を上回った水準での新しい価格バランスを見つけようと試みています。しかし、原油価格にとってマイナス材料となる報道と世界経済の成長見通しへの懸念の高まりが引き続き強い逆風となっており、原油需要の抑制となっています。

最後に、暗号資産市場は混乱しています。トランプ大統領による「戦略備蓄」の発表は、直接購入を通じて備蓄を積み上げることへの責任に言及されていなかったことから、市場の失望となったため、ビットコインは8万ドルを上回った水準を維持しようとしており、イーサリウムは2,000ドル台でサポートを見つけようと試みています。