デイリーコメントー米中間で関税大幅引き下げに合意、米ドルと米株価急騰

投稿日: 2025年5月12日19時01分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米中間での貿易協議に進展、90日間の猶予期間を設定
・米中ともに115%の関税引き下げで米ドル、米株価、原油価格が急騰
・米中間の貿易協議合意でゴールド急落、地政学上の緊張緩和もゴールド圧迫

米中間の貿易協議は「大きな進展」

スイスで行われた米中間の貿易協議は、両国ともに90日間お互いの輸入品に対して関税を引き下げることで合意し、「大きな進展」で終わりました。米国政府と中国政府は、市場を混乱させ、世界的な景気後退への恐怖を煽っている貿易を巡る緊張緩和を試みており、この一時的な猶予期間が設けられました。

トランプ大統領が全ての国に対して相互関税を発表し、特に中国からの輸入品に対しては、報復措置として145%まで関税を引き上げたことから、貿易戦争は頂点に達しました。週末の合意では、両国ともに関税を115%引き下げ、中国は現在米国に対して10%、米国は中国に対して30%の関税を課すことになります。

この合意に達する前には、トランプ大統領は関税を80%まで引き下げることに積極的であるとの報道があったことから、この報道よりははるかに良い結果となりました。さらに重要なことに、この合意を受けて中国からのムードが大幅に改善され、楽観主義が一方的との懸念も緩和しました。

ベッセント財務長官は、グリア通商代表とともに、「大きな進展」があったと述べました。今後の問題としては、両国間でより恒久的な合意に達することができるのかどうか、そして、90日間でその合意が成立するのかということです。

市場は貿易戦争の緊張緩和を歓迎

S&P500先物は本日のセッションを上昇で開場し、約2.5%も急騰しており、ナスダック先物も3%以上も上昇しています。しかし、医薬品株の売りが世界市場の重荷となっており、アジアと欧州の市場全体の上昇は控えめとなっています。この売りの背景には、トランプ大統領がソーシャルメディアにて、本日にも大手医薬会社に対して、処方箋の価格を最大80%引き下げさせる大統領令に署名すると発言したことがあります。

また、おそらく、米国が中国だけでなく、EUや日本などの他の主要貿易相手国に対しても、どれだけ早く合意に至るかについての不確実性が生じる可能性があります。

さらに、米英間での合意が英国よりも米国に有利に見えたことから、他国が積極的に米国との合意に署名するかどうか疑問です。しかし、スイスに関しては別で、米国との貿易協議を加速することに同意しており、EUよりも先に合意に達する可能性があります。

市場の米利下げ観測後退で米ドル上昇

関税を巡る混乱によって、スイスフランは安全通貨として選択されており、米国との貿易協議が早急に合意に達する場合、さらに上昇する可能性があります。しかし、本日唯一上昇しているのは米ドルとなっています。

米ドルは主要通貨に対して11月以来最高のパフォーマンスとなっており、特に日本円に対して最も上昇しています。ユーロは1.12ドルを下回り、ポンドは1.32ドルを下回っています。

貿易摩擦が引き続き緩和され、米国政府が多くの国との合意に向けて準備する中、市場はFRBによる年内の利下げ回数を減少させています。貿易戦争の渦中にあった4月には、市場はFRBによる年内の合計利下げ幅を少なくても1%に織り込んでいましたが、今月この利下げ幅は大幅に縮小され、現在は0.57%相当と予想されています。

FRBのパウエル議長は、先週のFOMC会合にて、様子見の姿勢を再度強調しました。しかし、会合以来、英国と中国が貿易協議合意に達しており、投資家はパウエル議長が今週木曜日に発言する際に、インフレについての懸念が薄れていると示唆することに期待しています。明日には米消費者物価(CPI)指数の発表も控えており、注目となるでしょう。

さらなる貿易協議合意への期待からゴールド下落

貿易摩擦の最悪の事態は免れたとの楽観主義が高まったことで、ゴールドは下落となりました。本日のゴールドは、ほぼ3%も下落し、日中の安値である3.215.76ドルを更新しました。ゴールドはダブルトップを形成しているようで、貿易摩擦が今後緩和される方向に向かうことから、ゴールドの価格は最高値に達した可能性が示唆されています。

米国と欧州の加盟国らは、ウクライナとロシアのリーダーに対してウクライナ戦争を終結させるために、直接交渉を行うよう圧力をかけており、地政学上の進展も、ゴールドにとってはサポート材料にはなっていません。一方で、インドとパキスタンもカシミール地方での紛争が悪化する中、停戦に合意しました。

本日の原油先物は、リスクセンチメント改善により急騰しています。