デイリーコメントー本日の米中会談を前に貿易協議巡る楽観論高まるも米ドル下落

投稿日: 2025年6月9日19時15分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・今週の米CPI指数を前に、本日のロンドンでの米中会談に注目集まる
・インドと日本との貿易協議への進展の中、本日の米中会談への期待高まる
・金曜日の米雇用統計で米ドルは上昇後、ロスでの抗議デモの影響で上昇維持できず

本日の米中会談で緊張緩和となるか

本日、米中の代表が、先月ジュネーブで合意した協定が不安定となり、長年の貿易摩擦を解消しようと試みるべく、ロンドンにて交渉を行う予定です。一時的な合意成立後、両国ともに条件に違反したと責め合うことになりました。しかし、先週のトランプ大統領と習国家主席との電話会談では、両国共に交渉の場に戻る準備はあるようです。

したがって、今週の交渉では、米中間の貿易を巡る緊張がさらに緩和する方向に向かうとの楽観的な見方が広がっています。米国としては、ハイテク産業に欠かせない重要なレアアースの輸出規制の緩和に中国が応じることを期待しています。反対に、中国としては、AI半導体といった米国の高度なテクノロジーへのアクセス拡大とともに、中国留学生へのビザの交付を望んています。

米国の代表は、引き続きベッセント財務長官、グリア通商代表部(USTR)代表が交渉に臨みます。さらに今回は、この2人に加えて、ラトニック商務長官も出席する予定で、半導体規制の緩和もあり得ることが示唆されています。

市場には多少の楽観的味方と警戒感の高まり

米ドルが4月の安値近くで推移する中、米株式市場での反発も勢いを失っており、本日のロンドンでの会談での新たな進展へのリスクが高まっています。しかし、中国はまた、今朝の経済データにて5月の米国への輸出が前年比から34.4%も減少するなど、高い関税の影響が出始めていることが示唆されており、米国との貿易停戦を維持するように圧力がかかっています。

ロンドンでの交渉での大幅な進展への期待が高まり、香港の株式市場であるハンセン指数に上場されている中国株は3月以来の高値まで押し上げられました。この楽観的味方に加えて、米国が、特にインドと日本との間で、相互関税の期限である7月9日前に貿易協定を締結するよう取り組みを強化していることが示唆されています。

しかし、依然として市場には警戒感もあり、米先物は本日の欧州セッション時間の初めには横ばいで取引されています。

豪ドルと日本円上昇

為替市場では、中国経済と関わりの深い豪ドルが本日最も上昇している通貨の一つとして、0.65ドルを超えて上昇しています。

石破首相が、日本は金利が上昇トレンドにあるという「次の段階に移行しつつある」と発言したことで、日本円も米ドルに対して上昇しています。先週、米財務省が日銀は円安を正常化するために、利上げを継続していくべきとレポートで言及したこともあり、石破首相の発言によって、米日間の貿易交渉にて、為替レートが議題となっているとの憶測が高まっています。

米ドルは本日144円10銭付近まで下落しており、関税を巡る緊張緩和への各方面の新たな取り組みはサポート材料になっていません。

ロスでの抗議デモでゴールド上昇となるか

関税交渉を巡る前向きな報道も、ロサンゼルスでの不法移民の大規模摘発への暴力的な抗議デモや、デモ抗議取締りに州兵を配備するとのトランプ大統領の決定への合法性についての疑問によって影が薄くなっています。

抗議デモだけでなく、人々の怒りを買うこととなった不法移民への強制捜査自体へのトランプ政権による高圧的な対応に関して不安が広がり、ゴールドが若干上昇したのかもしれません。リスクセンチメントがいくらか改善した本日のセッション前半で、ゴールドは3,300ドルを一時的に突破し、3,320ドルを超えて回復しています。

好調な米雇用統計も米ドル下落、水曜日の米CPI指数に注目

ロスでの抗議デモの状況が沈静化し、米中会談で前向きな報道がある場合、本日の後半に米ドルの需要が改善する可能性があります。しかし、一方で、先週金曜日の好調な米雇用統計によって、米ドルはわずかに上昇したにすぎなかったことが心配なところです。

今週水曜日に発表される5月の米消費者物価(CPI)指数が、高い関税の影響から、米インフレが再度加速すると示唆する可能性があり、CPI指数を控えて様子見の姿勢を取る投資家が一部いることも考えられます。