デイリーコメント ー米中貿易協定が進展するも、本日の米CPIを前に市場は静観

投稿日: 2025年6月11日19時49分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• 米中は枠組み合意に達するも、詳細不明のため市場心理に影響
• 本日発表の米CPIは加速が予想され、FRBの利下げ観測は後退
• 慎重なリスク選好度が米株式を支え、米ドルは堅調、ゴールドは上昇
• 英政府の歳出見直しを控え、ポンドは下落幅を拡大

米中、輸出規制緩和に向けて枠組み合意

2日間にわたる米中貿易協議は、先月ジュネーブで合意した協定を実行するための枠組みで合意し、前向きな結論に達したようです。米中双方が貿易関税をめぐる一時的な「休戦」での合意に違反していると非難し合った後、交渉団らは輸出規制を緩和するための道筋を見出したようです。

ロンドンの深夜に成立した合意については、ほとんど詳細が明らかにされていませんが、ラトニック米商務長官は、中国がアメリカに対してレアアースや磁石の輸出を増やすことに同意した一方で、トランプ政権は最先端半導体などの機密技術の輸出をさらに認める方針であることを示唆しています。

米株価は小幅に上昇

しかし、この米中合意は当初の貿易協議休戦に戻るだけの内容に過ぎないため、市場の反応は限定的になっています。さらに、トランプ大統領と習国家主席の双方が、ロンドンで合意された内容を承認しなければなりません。

基本的にこれは今回の米中協議で期待された最低限の成果にすぎず、行き詰まりを打破したことで今後、関税引き下げに関するより恒久的な合意に向けた交渉が加速する可能性はあるものの、投資家たちはそれが長期的なプロセスになることをすでに認識している可能性が高いでしょう。

香港の中国上場株は、今回の報道を受けて再び最も大きく上昇し、日経平均株価など他のアジア株価指数も本日は堅調な上昇を記録しました。一方、ヨーロッパの株価はまちまちとなり、米先物は昨日の米株価上昇分の一部を戻しました。

全体として、貿易に対する楽観ムードは依然として存在しており、これがMSCIオール・カントリー・ワールド指数(ACWI)を過去最高値へと押し上げています。しかし、この上昇の勢いは、米株式市場でも他の世界の株式市場においても、それほど説得力のあるものではありません。

米ドルは米CPIと米国債入札が焦点に

先行きには依然として多くの不透明感が残っており、関税が米国のインフレに与える影響が大きな懸念材料となっています。5月の米消費者物価指数(CPI)の発表は本日12時30分(GMT)に予定されており、輸入関税の引き上げが価格に反映され始める中で、総合インフレ率とコアインフレ率の両方の加速が予想されています。

最近の新たな不確実要因としては、トランプ関税に対して米国の中小企業が起こした訴訟があげられます。米連邦控訴裁判所は昨日、国際貿易裁判所による大部分の関税の差し止めを取り消す判決を7月31日まで有効とし、この日に口頭弁論を行い、その後、この訴訟は最高裁に持ち込まれる可能性があるということです。

投資家は最近、利下げ観測を後退させており、年末までの利下げ幅は2回の0.25%利下げを下回ると予想しています。しかし米ドルはほとんど回復しておらず、せいぜい底堅く推移している程度です。

日本政府が長期債の発行を削減するか、あるいは一部の買い戻すのではとの憶測から、利回りが低下する可能性があるため、円安が進み、それが主要通貨に対するドル指数を支えています。また、日銀は早ければ来週の会合で国債買い入れの減額(テーパリング)のペースを鈍化させる形で市場介入を行う可能性もあります。

その間にも、投資家は本日実施される10年物米国債の入札に注目しており、明日には30年物の入札が控えています。米CPIが予想を上回る場合、市場は動揺し、米国債への需要が低下し、インフレデータによる利回りの急騰をさらに増長させる可能性があるでしょう。

ポンドは下落、ゴールドは上昇へ

その他の地域では、ポンドは昨日の全般的に軟調な英労働市場データを受け、引き続き圧力を受けています。投資家はその後、イングランド銀行の利下げ観測を強め、2025年中に2回の0.25%の利下げを完全に織り込んでいます。しかし、本日の焦点は、リーブス英財務相による今後3年間の歳出見直しに移っています。

インフラ、エネルギー、防衛への投資拡大は歓迎されるものの、次回の予算案でさらなる増税が示唆されれば、これがポンドの重しとなる可能性があるでしょう。

本日発表予定のデータを前に、ゴールドはじりじりと上昇し、1オンスあたり3,350ドルに近づいています。安全資産であるゴールドは、長期的には調整局面にあるかもしれませんが、継続的な米ドル安や、新たな貿易協定合意の見通しに対する不透明感、そして今やトランプ大統領が権力誇示を試みるロサンゼルスでの暴力的な抗議デモなどの状況下、現在はしっかりとしたサポートがあるようです。