デイリーコメントー本日のPCEインフレデータを控え、リスク選好度はさらに向上

投稿日: 2025年6月27日19時18分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・貿易協議合意への楽観姿勢も米ドルは3年ぶりの安値付近で推移、FRB利下げ観測の高まりも重荷に
・ナスダック100は世界株を最高値まで引き上げ、ゴールドは下落
・本日の米PCE物価指数は市場の前向きムードをサポートするか、または悪化させるか

貿易協議合意への楽観姿勢も米ドル回復とならず

本日の米ドルは、欧州取引時間の開始時に3年ぶりの安値付近で推移しており、主要通貨に対するドル指数は、今週1.5%の下落に向かっています。中東情勢の緊迫化から安全資産しての魅力が再燃した米ドルは、情勢が落ち着いたことで魅力が薄れ、また、FRBが年内に2回以上の利下げを行うとの市場観測が高まりつるあることを背景に、米ドル回復の見通しも台無しとなりました。

ホワイトハウスが中国やその他10数か国との貿易交渉合意に向けて最終調整に入っているとの昨夜の報道でさえも、下落する米ドルのサポートになりませんでした。現状では、米ドルは良くても、それほど軟調ではない米経済データからの多少の恩恵で売りが抑制されるだけでしょう。

米経済データがまちまちの中、本日のコアPCE物価指数に注目

昨日の一連の米経済データは、FRBが早急に利下げを行う必要性を正当化できなかった一方、ウォラー理事とボウマン副議長のハト派的見解を受けて、パウエル議長を含めた他のメンバーの発言などからは、7月の利下げに関して、FOMCメンバー内で意見が一致していないことが示唆されています。

耐久財受注は、航空機を除く非国防資本財(コア資本財)受注が前月比1.7%増となり、5月に前月比で16.4%も増加しました。一方で、先週の失業保険申請件数は前の週から減少したものの、失業保険継続申請件数はコロナ禍以来の高水準まで増加しました。

心配なのは、第1四半期の米GDP成長率が下方修正されて、より一層縮小したことです。この要因は、個人消費が当初の予想よりも低調となったことによります。

米経済の現状をより明確に映し出すために、本日の米PCE(個人消費支出)指数が現在の焦点となっています。コアPCE物価指数は、FRBがインフレの測定に好んで使う指標であり、5月に前月比でたったの0.1%上昇する見込みですが、前年比では2.6%と若干上昇すると見られています。本日の個人消費もまた重要な指標となるでしょう。

これらの指数が下振れサプライズとなる場合、市場は年内に0.25%の利下げを3回まで織り込む可能性もあり、その結果米ドルにさらに重荷となるでしょう。

ナスダック100は新最高値更新

今週の株式市場では、週開けからムードは確実に向上しており、ナスダック100や世界株指数(MSCI ACWI)は最高値を更新しています。

AIを巡る新たな楽観姿勢が米株式市場のハイテク株上昇を後押ししており、エヌビディア株は最高値を更新しています。

市場はまた、相互関税の一時延期期間が終わる7月9日の期限を前に、トランプ政権が主要貿易国と貿易協議合意に達することに期待を寄せています。

各国との貿易協議合意に向けて期待高まる

昨夜のブルームバーグとのインタビューにて、ラトニック商務長官は、米国と中国は、今月初旬のロンドンで合意した貿易条件を最終的に文書化したと述べ、10ヵ国以上との合意も近いことを示唆しました。

しかし、ラトニック商務長官は期限までに合意に達しない国々に対して、トランプ大統領から今後の貿易の条件に関する書簡が送られると警告しました。しかし、貿易協定が締結していなくても、少なくても主要な貿易相手国に対して、米国が高い相互関税率を再度課するリスクを冒すとは信じがたいことから、相互関税の延期が再度延期される可能性が高いと言えます。

さらに、ベッセント財務長官は、米国が他国から課せられる税金の一部が免除されるとG7諸国と合意し、いわゆる「報復税」は下院の予算案から削除されると述べたことで、市場にはさらに安堵感が広がっています。

今週の原油価格、ゴールド、日本円は下落、米税制・歳出法案の議会採決に注目

これらの動向は全てリスクセンチメントにとってはプラスとなっており、リスク資産は上昇し、安全資産は下落となっています。しかし、まだ貿易協議が最終的に成立したことは確認されておらず、税制・歳出法案も議会で可決される必要があります。

上院共和党は、トランプ大統領が独立記念日である7月4日前に署名できることを目標としており、土曜日の税制・歳出法案の議会採決を推し進めています。

しかし、原油価格が今週10%以上も下落し、インフレ加速のリスクも急に後退していることから、市場が歓喜に満ちている理由は明らかです。

ユーロは、1.17ドルに近づいている一方、日本円は米ドルに対して144円台を維持するのに苦労しています。本日、東京の消費者物価(CPI)指数が予想を下回ったことで、さらに円安となっています。

イスラエルとイランの停戦が落着き、トランプ政権も貿易摩擦を再度悪化させないように努めているように見えることから、ゴールドは4週間ぶりの安値まで下落し、3,300ドルを下回りました。