デイリーコメント ― 本日発表の米非農業部門雇用者数に注目が集まる

投稿日: 2025年7月3日19時51分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• 米ADP民間雇用者数の減少により米非農業部門雇用者数(NFP)への懸念が高まる
• 7月9日の期限を前に米国はベトナムと貿易協定合意
• ポンドは英国の政情不安の影響を受ける
• 米NFP雇用統計を前にS&P500は史上最高値を更新

本日の米NFPが期待外れとなる場合、7月利下げ観測は高まるか

昨日、米ドルはほとんどの主要通貨に対して小幅上昇しました。米ドルはポンドに対して最も上昇し、一方で、豪ドルとカナダドルに対してのみ下落しました。本日は、米ドルはほとんどの主要通貨に対して小幅高または横ばいで推移しており、市場関係者は本日発表予定の米非農業部門雇用者数(NFP)に注目しています。

昨日、ADP社が発表した6月の米民間雇用者数は予想に反して3万3,000人減少し、2023年3月以来のマイナスとなりました。このデータによって、本日の非農業部門雇用者数も予想を下回るのではと市場の懸念が高まっており、その場合は、7月のFRBによる利下げの可能性が高くなるかもしれません。FF金利先物によると、投資家は現在、年内に0.67%相当の利下げを予想しており、本日の米雇用統計を前に、7月の利下げ確率は20%から25%に上昇しています。

非農業部門雇用者数は13万9,000人から11万1,000人へとさらに減速し、失業率は4.2%から4.3%へと上昇すると予想されています。米国のインフレ見通しが不透明なことから、平均時給も注目される可能性があります。予想では、前年比の平均時給の賃金上昇率は横ばいの3.9%に留まるとされています。本日は、先週の米新規失業保険申請件数と6月の米ISM非製造業PMIの発表も予定されています。

米国とベトナムは貿易協定合意 、トランプ減税・歳出法案は下院で苦戦

米国とベトナムの貿易協定合意が、上乗せ分の相互関税が発動される7月9日の期限を前に、他国との貿易合意の可能性にも楽観的な見方を強めたと考えられ、投資家が利下げ観測を強める要因となった可能性があります。しかし、今回合意された20%の関税、あるいはそれ以上の高い関税率が、今後EUや日本といった他の貿易相手国と合意を目指す際の「新たな基準」となる可能性もあります。そのため、米国のインフレ上振れリスクを高める高関税への懸念は依然として残っているため、この合意が利下げ観測を大きく後押しするには至らなかったのかもしれません。

トランプ大統領の減税・歳出法案に関しては、一部の共和党議員が支持を保留したため、下院での進展が停滞しています。とはいえ、政策当局者たちの間で交渉が続いているため、状況が今後変わる可能性はまだ残されています。

政情不安でポンド下落

昨日、英政府は福祉給付制度改革法案をなんとか可決したものの、これは当初提案された削減規模に対する一部の労働党議員の反発を受けてのものであったため、ポンドは下落しました。この法案は、潜在的な予算の穴埋めや、財政の均衡を図るために、増税や他分野での歳出削減のリスクを高めることになり、将来的に困難を引き起こす可能性があります。

スターマー英首相がリーブス財務相の続投を明確に示さなかったことが、リーブス氏の今後に対する懸念を招き、後任が財政規律を大幅に緩めるだろうとの憶測を呼びました。とはいえ、同日後半にスターマー首相の報道官が、リーブズ財務相は「首相の全面的な支持を受けている」、そして彼女は辞任することはないと明言しました。おそらくそのためか、本日のポンドは回復基調にあります。

米雇用統計を前に米株価は上昇、ゴールドは反発幅を拡大する可能性

米株式市場では昨日、ナスダックとS&P500がともにプラス圏で引け、S&P500は過去最高値を更新し、ダウ平均はほぼ横ばいで取引を終えました。これはおそらく、米国とベトナムの貿易合意後の相対的な楽観論、あるいは7月のFRBの利下げ観測が高まったためでしょう。

本日、株式投資家はNFP雇用統計に注目するでしょうが、どのような反応を示すかは依然として不透明です。借入コストの低下を見込んで株を買い増すのか、それとも米国経済の先行きに対する懸念から売りに出るのか、判断は分かれる可能性があります。明日の米国は独立記念日で祝日となるため、米株式市場は本日通常より早く取引を終了する点も注目に値するでしょう

米労働市場の軟化を示すデータが出た場合、ゴールドの反応は比較的明確と言えそうです。借入コストの低下が見込まれることで、利子のないゴールドの保有による「機会コスト」が減少し、ゴールドにとって有利に働く可能性があり、また、投資家が米経済見通しに懸念を抱く場合、安全資産としてゴールドへの資金流入も期待されます。言い換えれば、もし本日のデータが予想を下回る場合、ゴールドは直近の反発をさらに強め、6月16日の高値である3,450ドル付近に近づく可能性が高いでしょう。