デイリーコメントートランプ大統領による関税の新たな脅しの中、貿易協議合意に期待

投稿日: 2025年7月7日19時24分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米ドル小幅上昇、関税を巡る混乱と新たな脅しでゴールド下落
・トランプ大統領は関税発動を8月1日に延期、数か国との協議合意は近いと発表
・減税・歳出法案が議会通過で米株価は最高値更新
・OPECプラスが予想以上の増産発表後、原油価格は安値から回復

新たな関税の脅しと期限延長

7月9日の貿易協議合意の期限がわずか2日後に迫り、各国との交渉は進展と難航の両方の兆候の中で、トランプ大統領は既に期限を延期しています。90日間で90各国との合意達成を約束したにもかかわらず、米国はこれまで、英国と中国、そしてベトナムとしか合意に成立していません。

他国との交渉も進行中となり、ベッセント財務長官によると、原則的に米国の債務の95%を占める18ヵ国の貿易相手国との交渉が優先されています。インド、EU、スイス、インドネシア、タイとの協議合意が数日中にも発表される見通しです。

しかし、トランプ大統領は本日から、協議交渉の進展に対して満足していない12ヵ国から15ヵ国を対象に書簡を送付し、新たな期限である8月1日までに合意に達しない場合は、事実上一方的に関税を課すことになると警告しました。約100ヵ国もの小国は、当初4月2日に予定され、その後期限が延長された高い関税率に既に直面しています。

しかし、トランプ大統領のこれまでの戦略でも予想されるように、関税関連で新たな展開があり、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成されるBRICSとその同盟国に対して、さらに10%の関税を課すと脅しています。

米国債利回り上昇で米ドル上昇もゴールドは下落

しかし、市場は週末にあったこの新たな関税を巡る混乱と展開を払拭し、7月9日の期限が3週間延長されたことによって、トランプ政権が貿易を巡る緊張が再燃するよりも、協議合意を目指していると受け止めています。

本日の米ドルは小幅上昇しており、木曜日に発表された6月の堅調な米雇用統計後に年内の合計利下げ幅が大きく縮小し、その結果の上昇幅を拡大しています。

しかし、年初来下落幅を考慮すると、この上昇は比較的控えめとなっており、これは、多くの国々が高い関税率を免れることができるかだけでなく、減税・歳出法案による財政赤字への懸念の高まりについても、市場が警戒感を強めていることが反映されています。

米下院では、7月4日の独立記念日に署名して法制化するとの期限に間に合うように、減税・歳出法案が最終的に可決されました。この法案によって、少なくても3兆ドルが債務に追加されると予想されており、堅調となった米非農業部門雇用者数とともに、ここ数日間で10年債利回りが先週の低水準から0.15%上昇しています。

これらの動きが米ドルのサポートとなっていますが、貿易協議合意についての不確実性が高いままで、また、イスラエルが本日前半にイエメンのフーシ派を攻撃したこと中東での紛争が再燃しているにもかかわらず、ゴールドには重荷となっている可能性があり、ゴールドは本日3,310ドル付近まで下落しています。

豪ドル、NZドル、日本円は下落で週初め

貿易協議合意を待つ中、今週はオーストラリア準備銀行とニュージーランド準備銀行が金融政策会合を予定しており、FRBは水曜日に前回6月のFOMC会合議事要旨を公開する予定です。

豪中銀は火曜日、NZ中銀は水曜日にそれぞれ金融政策決定を行う予定で、豪中銀は0.25%の利下げが予想されていますが、NZ中銀は金利を据え置くと見られています。豪ドルとNZドルはともに本日急落しています。

オーストラリアもニュージーランドも米国と何らかの形での貿易協議の合意に近づいているようには見えず、期限が迫る中、両国ともに8月1日より高い相互関税を支払わざるを得なくなる見通しに投資家はパニックとなるかもしれません。

日本の交渉についても、予想外に難航しているようです。当初は順調と見られていた日米交渉も停滞しており、日本は数日以内にトランプ大統領からの書簡を受け取ると見られています。

米ドルは本日145円を超えて上昇しており、日本円は他の主要通貨に対しても下落しています。

関税を巡るリスクに関係なく株価上昇、原油価格も安値から回復

しかし、本日の株式市場は楽観的な見方が依然として継続しており、まちまちとなっています。米株式市場は予想を上回った雇用統計を受けて、景気後退への懸念が緩和したことから、最高値を更新しました。市場はFRBが年内に2回以上の利下げはしないだろうと見ており、今月の利下げは既に織り込まれていませんが、労働市場の回復力は投資家に歓迎されているようです。

しかし、本日の米先物は若干下落しており、米国と世界各国との貿易協議について多くの情報が待たれる中、全体として抑制されたムードとなっています。テスラは本日の開場前取引で大幅に下落しました。

一方、原油価格は、土曜日にOPECプラスが日量54.8万バレル増産すると決定したことで先物が下落した後、安値からなんとか回復しました。実際の増産量はまだ目標に達してはいないものの、この増産量は先月決定した41.1万バレルを上回る水準となり、供給過剰の可能性について懸念が生じています。