デイリーコメント – トランプ大統領のテレビ生出演でリスクオフの可能性が高まる中、米ドルは方向性を模索

投稿日: 2025年8月5日19時20分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 米ドル資産は金曜日の売りが一服し、安定基調を取り戻す
  • 9月のFRB利下げ観測が強まる、今後のFRBメンバーの発言に注目
  • 12:00(GMT)からのトランプ大統領テレビ生出演に注目が集まる
  • ゴールドは上昇を維持、原油の下落は一服

米ドル資産は金曜日の大幅下落から回復

米ドル資産にとって壊滅的だった金曜日を経て、米ドルと米株価の双方はかすかな回復の兆しを見せています。ユーロ/ドルは1.1548付近を推移しており、米ドル強気派が先週金曜日のユーロの大幅上昇を徐々に巻き戻しつつあります。今回のユーロの上昇は、相互関税による米ドル需要の減退が確認された、2025年4月以来となる1日あたり最大の上昇幅でした。

米国株は月曜日に持ち直し、金曜日の急落を完全に帳消しにしました。投資家は最近の上昇相場を牽引してきたAIなどの主な要因に再び注目しており、9月のFOMC会合をめぐる議論もこの局面では重要な要素となっています。同様に、暗号資産も今週は反発しており、ビットコインは11万5,000ドルをわずかに下回る水準で取引されています。

市場では、金曜日の衝撃的な米雇用統計、特に投資家を驚かせた過去データの下方修正に関する議論が続いています。多くのトランプ大統領の反対派は、米労働統計局 (BLS)の局長の更迭は軽率だと見ていますが、近年における米雇用統計の質低下は否定できず、BLSがこの問題の改善への努力もほとんど見られていません。

25万8,000件の米国の雇用減少は氷山の一角に過ぎず、2024年4月から2025年3月分の年次基準改定が発表される9月初旬には、状況がさらに複雑となるかもしれません。そのため、トランプ大統領の手法は依然として独裁的傾向が強くなっていますが、たとえトランプ大統領の目的が必ずしもデータの質向上ではないとしても、その取り組みが結果的に統計の質の改善につながる可能性はあるでしょう。

FRBの9月の利下げ観測はいかに

このデータの質改善によって最大の恩恵を受けるのはFRBです。FRBは正確な情報ではなく、誤った情報を受け、現在のバランス重視の政策姿勢を維持してきた可能性があります。興味深いことに、FOMCメンバーのボウマン副議長とウォラー理事が、それぞれの利下げ票の根拠を示す声明を発表したことを受けて、他のハト派メンバーたちも発言を強めつつあります。最近ではサンフランシスコ連銀のデイリー総裁が、9月の利下げを支持する姿勢を示しました。同氏は2027年まで投票権を持ちませんが、それでもこれは、利下げ支持の流れが徐々に強まっていることを示すもう一つの兆候となっています。

市場は現在、9月の利下げ確率を94%と織り込んでいます。次回会合の9月17日までに発表されるデータ、特に米消費者物価指数(CPI)や9月5日の米雇用統計で継続的かつ顕著な悪化が見られた場合、一部のアナリストは9月に0.50%の大幅利下げが行われる可能性すら指摘しています。当初は静かな夏になると思われていましたが、現在では、11カ月前の昨年9月の0.50%利下げを皮切りに始まった現行の緩和サイクルにおいて、最も重要な局面へと様変わりしています。そのため、ジャクソンホール会議も、これまで以上に重要となり注目を集めています。

重要な米経済指標発表が続くも、トランプ大統領に注目が移る可能性

7月の米PMI調査の最終報告を受け、重要なISM非製造業PMIでは、わずかな改善が予想されています。市場の注目はサブ指数にも向けられるでしょう。特にインフレ圧力の緩和と新規受注の増加が同時に見られるような結果となる場合、米政権からは歓迎されるかもしれません。

しかし、トランプ大統領のCNBCへのテレビ出演が、本日最大の注目イベントとなり、投資家の関心を一手に集める可能性があるでしょう。同氏は本日12:00(GMT)生放送で出演する予定です。現職の米大統領がテレビに生出演するのは非常にまれであり、特に今回のように米雇用統計をめぐる混乱の直後ではなおさらです。当然、FRBや関税について質問されることになるため、もしトランプ大統領がさらに攻撃的な発言を強めた場合、リスクオフ反応が市場に広がるリスクも十分にあるでしょう。

 ゴールドは安定、原油は売り圧力が一服

昨日、リスクオンが回復したにもかかわらず、ゴールドは最近の上昇幅を維持しており、本稿執筆時点では3,360ドル付近で推移しています。現在は直近の取引レンジの中間地点に位置しており、イスラエルがガザ地区の完全な掌握に踏み切った場合には、更なる上昇となる公算が大きいでしょう。一方、原油の下落は66.80ドル付近で一服している模様です。これはトランプ大統領がロシア産原油の購入を巡ってインドに対し、関税を通じた圧力を強めていることに関連しています。