デイリーコメントーリスク選好度が悪化する場合、米ドルの安全資産しての資質が試されるか

投稿日: 2025年8月11日18時25分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・エヌビディアが収入の一部を米政府に支払うとの報道でリスクオンセンチメントに脅威
・仮想通貨は急騰、イーサリウムは2021年以来の高値更新
・15日のトランプ・プーチン会談を前に、ゴールド下落
・豪中銀は明日利下げ決定か、豪ドルの行方は豪中銀の全体的なトーン次第


米ドルは回復に苦戦、米株価の改善ムードが試される可能性も

先週の米ドルは全般的に圧力に晒された一方で、ナスダック100指数が堅調に3.7%上昇するなど、株価指数は好調となりました。アップル株やテスラ株など、ハイテク株が引き続き上昇する中、この上昇幅は6月下旬以来の大きな上昇となりました。また、この株価上昇は、FF金利先物の金利低下見通しによって、借り入れ率が低下すると解釈され、また好調な決算報告の見通しからもサポートされました。

明日に米中間の貿易停戦の期限切れとなり、またエヌビディアとAMDが中国市場へのアクセスをこれまで通り継続するために、米政府に対して、中国でのAI半導体販売による収入の15%を支払うことで合意したとの報道もあり、本日はこのリスクオン選好度が試される可能性があります。アップルによる6,000億ドルもの桁外れの投資に続いて、米政府は実質的にエヌビディアとAMDの収益にも食い込むことになりました。

暗号資産市場は急騰、ゴールドは最新の上昇分を還元

一方、未公開株式や不動産、仮想通貨やその他の代替資産を401k(確定拠出年金)の退職金口座に入金できるとの大統領令を受けて、仮想通貨は急騰中です。この特定の確定拠出型制度は、2025年第1四半期に8兆7千億ドル以上を計上しており、この僅かな一部分が仮想通貨に投資されるとしても、ビットコインへや他の仮想通貨への大きな追い風となるでしょう。

現時点では、ビットコインは12万2千ドルを突破して取引されており、イーサリウムも脚光を浴びています。イーサリウムは、2021年12月以来最高水準となる4,325ドルまで上昇しており、4月の安値から約200%も上昇しています。しかし、依然として最高値である4,864ドルには届いていません。

この仮想通貨の急騰の中、ゴールドは本日3.355ドルに向けて下落しています。8月15日に予定されているトランプ大統領とプーチン大統領との会談がこのゴールド下落の一因とする説もありますが、 ウクライナとロシアの紛争は依然として非常に困難な問題を抱えています。ロシア側はウクライナの領土獲得を公式に認められることを求めており、この会談に呼ばれていないウクライナのゼレンスキー大統領と欧州各国の指導者らは、既にこの合意について反対する声明を発表しています。

明日の米CPI指数に注目

FOMC会合のメンバーであるボウマン理事は週末、年末までに3回の利下げを提案するなど、FRBハト派は明らかに連続利下げを支持しており、明日の7月の米CPI指数が利下げの見通しには極めて重要となる可能性があります。明日の米CPI指数が上振れとなる場合、パウエル議長への早急な利下げへの圧力が緩和する可能性があり、8月21日から23日に開催されるジャクソンホール会議に焦点が移行することになるでしょう。

一方、ミラン氏が1月31日までクーグラー理事の後任となったことで、トランプ大統領の次期FRB議長候補のリストが日に日に増えています。投資家にとっては残念なことに、FRB議長の選出までには今後多くの紆余曲折があると思われ、FRBの決定や独立性にまでも影響が及ぶ可能性もあります。

豪中銀は明日0.25%の利下げ決定か

オーストラリア準備銀行は金利政策会合を開催しており、明日決定を発表する予定です。市場は0.25%の利下げが発表されることに自信を見せています。7月の政策会合にて予想外の金利据え置きを決定した後、オーストラリアの第2四半期のインフレは軟化し、特に関税による影響が依然として不透明であることから、緩和への可能性が高まっています。

豪中銀ブロック総裁は、安定した見通しを維持する見込みですが、状況によって、もっと積極的な姿勢が求められる場合、柔軟な対応を示すことになりそうです。7月のドル高に抵抗し続けた豪ドルは、ブロック総裁らが明日の金利政策決定にて、予想以上にハト派となる場合は売り圧力に晒される可能性もあります。