デイリーコメントー本日のエヌビディアの決算報告を前に株価反発、米ドル安定

投稿日: 2025年8月27日19時08分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米国債利回り安定とAIへの楽観ムードで株価反発、本日のエヌビディアの決算報告に注目
・FRBの独立性への懸念が若干後退し、米ドル小幅上昇
・インフレと借入コストへの懸念でリスク選好度は抑制

FRB理事解任騒動後、米株式市場は本日のエヌビディア決算に注目

トランプ大統領がFRB執行部のコントロールを握ろうと執着していることから、米国債利回りが上昇しているものの、昨日の米株式市場はこの騒動を一蹴し、その代わり、投資家は本日後半のエヌビディアによる第2四半期の決算報告に注目しており、上昇して取引を終えました。

昨日は、トランプ大統領によるFRBクック理事解任が市場を左右しました。しかし、クック理事はこの解任決定に対して法的異議を申し立てると述べたため、事態が完全に収束するまでには時間がかかりそうです。市場にとって差し迫っている問題としては、最新のエヌビディアによる決算報告で、ハイテク産業およびAI関連産業全体の方向性を決める可能性があります。

大手ハイテク企業が依然としてAIに多額の投資を続けており、AI半導体の需要は相変わらず堅調であるものの、エヌビディアはトランプ大統領による中国との関税戦争に巻き込まれています。トランプ大統領が半導体輸出を制限したことで、中国への販売に影響が出ており、中国政府もエヌビディアの中国市場向けに設計された半導体をボイコットしています。さらに、エヌビディアは、中国への輸出からの収益の15%を米政府に支払うようにとのトランプ大統領の要求に同意しています。

したがって、たとえ本日の第2四半期の決算が予想通り、もしくは予想を上回るとしても、今後の四半期収益ガイダンスの見通しへの懸念に拍車がかかるリスクがあります。

それにもかかわらず、昨日の株式市場はイーライリリー株が急騰したこともあり、楽観ムードが優勢となり、主要3指数全てが上昇しました。

まちまちの米経済指標の中、米ドル反発、米国債は安定

米国債市場がやや落ち着きを見せたことも、市場のセンチメント向上と米ドル上昇のサポートとなりました。米ドルが世界一の準備通貨としての地位を失いつつあるとの議論があるものの、FRBのハト派への転換やトランプ大統領によるFRBへの執拗な攻撃のどちらも、ドル指数を新たな安値まで引き下げるほど、米ドルは急速な売りとはなってはいません。

米経済が低迷に陥っていないとの事実が、米ドルにとって、直近の安値付近での強力なサポートとなっていることが浮き彫りとなっています。7月の耐久財受注は、防衛や航空機受注といった変動の激しいカテゴリーを除いた部門で前月比1.1%と堅調に上昇したことでも、この見解は裏付けされました。

しかし、昨日別に発表された消費者信頼感調査での8月の雇用サブインデックスが再度上昇し、仕事を見つけるのが困難となっていることが示唆されました。このサブインデックスは、失業率と相関関係にあるため、労働市場のさらなる軟化が示唆されています。

ユーロが大幅に下落

他の為替については、フランスとイギリス両国での赤字拡大への懸念から、フランスとイギリスの国債利回りが焦点となっており、ユーロとポンドにいくらかの圧力となっています。フランス政府は9月8日に予定されている不信任投票で負けると予想され、政権崩壊のリスクにあり、イギリスの労働党政権も財政難への対応に苦戦しています。

フランスの10年債利回りは、信任投票の報道があった際に急上昇し、その高値から下落したものの依然として高止まりしています。一方、イギリスの国債利回りは、秋の予算案がそれほど赤字削減にはならないとの予想から、今月徐々に上昇しています。

本日のユーロは、NZドルとともに最も下落している通貨となっており、ポンドと日本円は共に米ドルに対して約0.3%ほど下落しています。

オーストラリアの月次インフレ率が7月に前年比2.8%と、予想の前年比2.3%を大きく上回り、オーストラリア準備銀行の利下げ観測も後退しているにもかかわらず、豪ドルも下落しています。

原油とゴールドは直近の上昇幅の拡大とはならず

コモディティ市場では、原油の供給過剰への懸念が最新の地政学の進展を相殺しており、原油先物が2日連続で下落しています。ウクライナによるロシア製油所へのドローン攻撃によって、ロシアの製油容量に大きな打撃となりました。さらに、トランプ大統領がインドに対してロシアからの石油購入を止めるようにとの要求を拒否したことから、インドへの二次関税が本日から発動し、合計で50%の関税率となりました。

しかし、先週および今週前半の原油価格の一時的な上昇は昨日勢いを失い、市場のパニックが最小限に抑えられたことが示唆されています。

昨日のゴールドは、2週間以上ぶりの高値となる3,393.67ドルまで上昇しましたが、本日米ドルが反発したため、ゴールドの上昇幅が縮小されています。