デイリーコメント – 9月のFRB利下げがほぼ確実視され、米ドル下落

投稿日: 2025年8月28日19時08分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• ウィリアムズNY連銀総裁、「金利は低下する可能性が高い」と発言
• トランプ大統領によるFRB政策運営介入懸念が高まる
• 明日の米PCEインフレ指標と来週のNFPへ注目が移る
• S&P500は史上最高値を更新、一方でエヌビディアは決算発表後に下落

市場はFRBによる9月の利下げをほぼ完全に織り込む

米ドルは昨日、主要通貨の殆ど対して下落し、本日も弱含むか、いくらか安定した動きを維持しています。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が「いずれ金利が低下する可能性がある」と述べたことを受け、投資家が再び利下げ観測を強めたため、米ドルは反発に苦戦しているようです。ただし同氏は、利下げ決定を行うには、今後発表の米経済指標を注意深く見極める必要があるとも付け加え、「私の見解では、すべての会合がライブである」とも述べました。

これに加え、トランプ大統領がFRBの金融政策の運営に対してより大きな影響力を及ぼそうとしていることも相まって、市場は9月16日から17日に開催のFOMC会合での0.25%利下げ確率を90%近くまで織り込んでいます。一方で、年末までに予想される合計利下げ幅は依然として0.55%のままとなっています。

トランプ大統領によるFRB政策への影響力行使も重石に

トランプ大統領がFOMCメンバーを、よりハト派の候補に入れ替えようとしている動きも、投資家の判断に影響を与えており、米国の短期金利の低下を促しています。ただし、FRBクック理事の解任は簡単には進まない公算が高く、同氏は職を守るために法的措置を取っており、これにより長期にわたる法廷闘争に発展する可能性もあります。

しかし、来年3月にはFRB理事会が12の地区連銀総裁を再任する予定であり、もしその時までに十分な数をトランプ大統領寄りのFRB理事に入れ替えることに成功すれば、ハト派の連銀総裁が選ばれる可能性も出てきます。これにより、2026年を通じてさらなる大幅利下げ実施の公算も大きくなるかもしれません。これは、今後米ドルおよび米債利回りにとっては大きな下振れリスクを意味します。

とはいえ現時点では、投資家は恐らく米経済指標に注目すると考えられ、本日の米第2四半期GDPや、FRBが最も重視するインフレ指標である金曜日の米PCE指標などに焦点が移るでしょう。また、ジャクソンホール会議でパウエル議長が米労働市場を重視する姿勢を強調していたため、来週発表の米非農業部門雇用者数(NFP)も非常に重要になるでしょう。

アメリカ売りリスクは高まっているのか

大きな疑問は、FRB内部で進むこのハト派的な転換が米株式市場にどのような影響を与えるかという点です。通常の状況下では、利下げ観測の高まりは株式にとってプラス要因となり、特に将来の利益を現在の価値に割り引いて株価を評価(DCF法)する成長企業株にとっては好材料となります。

しかし今回は、ハト派への転換が大きな代償を伴う可能性があります。それは、FRBの独立性と信頼性が失なわれるという代償です。そのような事態になれば、投資家が米国資産への信頼を失うことにも繋がり、その結果、米ドルだけでなく、米国債や米株式も打撃を受けるかもしれません。

S&P500が史上最高値を更新、エヌビディア決算は好調も突出せず

昨日、米株式の主要3指数全てが小幅上昇して取引を終え、S&P500は史上最高値を更新しました。しかし、本日の米先物はやや控えめな動きを示しています。大きな注目イベントは取引終了後に発表されたエヌビディアの決算でした。

エヌビディアは依然として、中国への半導体販売を開始するための米政府の許可を期待していますが、現時点では明確なルールは定まっていません。さらに中国政府がエヌビディアの半導体購入を抑制するのではという懸念から、この四半期の業績見通しには中国への潜在的な売上は含まれていません。

今回の決算はアナリスト予想を上回ったものの、市場参加者がこれまで目にしてきたきたような圧倒的な好決算にはほど遠い内容でした。そのため、エヌビディアの株価は時間外取引で約3%下落し、本日の米株価の寄り付きは低くなることを示唆しています。

7月の米コアCPIが上昇したことを受けて、明日発表の米コアPCEも上振れリスクがあると見られています。また、米PPIが加速したことに続き、インフレの粘着性を示すさらなる兆候が出れば、投資家はFRBの利下げペースがより緩やかになると見込み始めるかもしれません。その結果、米株式市場では調整的な下落が起こる可能性もあるでしょう。