デイリーコメントー本日の米PCEインフレデータを前に、米ドルは下落幅拡大

投稿日: 2025年8月29日19時00分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・FRBウォラー理事が利下げ支持表明
・本日のPCE指数が9月以降のFRBの利下げペースを左右するか
・S&P500とNYダウは最高値更新
・ゴールド上昇、レンジ取引の上限に近づく

FRBウォラー理事が中立金利は3.0%と言及

市場が来月のFOMC会合での利下げを大方予想していることから、昨日の米ドルは下落幅を拡大させました。今回はFRBのウォラー理事がこの見解について言及しましたが、ウォラー理事の見解は周知の事実です。おそらくそのためか、本日発表の米PCEインフレデータ(個人消費支出価格指数)を前に本日の米ドルは安定しています。

昨日、ウォラー理事は来月の利下げを支持するとし、現在の4.25%から4.5%の金利を1.25%下回る約3%の中立水準に近づくために、さらなる利下げが続くことを「十分に予想している」とも述べました。

米ドルと米10年債利回りは下落したものの、2年債利回りは若干上昇し、FF金利先物によると、市場予想に修正はないようです。市場は来月のFOMC会合で0.25%の利下げを約85%の確率とし、12月までに合計で0.55%相当の利下げが行われると予想しています。

本日の米PCE指数とFRB理事解任劇が焦点に

本日、市場はFRBがインフレ測定に利用する7月の米PCE指数に注意することになるでしょう。7月の米CPI(消費者物価)総合指数は上昇しませんでしたが、コアCPI指数は上昇したことから、本日のコアPCE指数も上振れリスクが示唆されています。生産者物価の加速とともに、コアPCE指数も加速するとなると、FRBの利下げ観測が後退する可能性があります。来月の利下げはほぼ完全に織り込まれているとしても、その後の利下げペースが減速すると予想するかもしれません。その結果、米ドルは直近の下落の一部を取り戻す可能性があります。

経済データ以外にも、市場はFRBの独立性の問題についても注目しています。トランプ大統領がクック理事を解任すると脅したことを受けて、クック理事は昨日、大統領が理事を解任する権限はないとして訴訟を起こしました。クック氏はまた、暫定的差し止め命令を求める申し立てを行い、本日審理が予定されています。

このFRB理事解任劇に対する市場の反応は比較的控えめですが、FRBの独立性と信頼性が侵害されたと市場が判断する段階に達すると、米資産を再び放棄し始めることになるかもしれません。

米株価は最高値更新、ゴールドも上昇

昨日の米株式市場の主要3指数は黒字となり、S&P500とNYダウが最高値を更新するなど、今のところ米資産からの逃避とはなっていません。エヌビディアの決算報告がこれまでのような期待を大きく上回るような結果とならず、エヌビディア株が下落したにもかかわらず株式市場全体は好調です。

本日の米PCE指数が上振れとなる場合、株価下落の一因となり得ますが、昨日の米GDPでも米経済が健全であることが確認されているため、全体の見通しは依然として前向きです。第2四半期の米GDPは前期比で3.0%から3.3%に上昇修正され、アトランタ連銀によるGDPナウでは2.2%への減速が示唆されているものの、それでも堅調と言えます。従って、米経済は深い傷を負っておらず、株式の弱気反転となる可能性は低いでしょう。

利下げ観測の高まりとFRBの独立性を巡る不確実性がゴールドにとっては好材料となり、ゴールドもまた上昇しています。現在、5月20日以来取引されているレンジの上限となる3,440ドルに向かって上昇しており、この水準を突破すると、4月22日に更新した3,500ドルの最高値まで上昇する可能性があります。