デイリーコメント ― FRBの 利下げが予想される中、市場の反応は複数の要因に左右される

投稿日: 2025年9月17日18時47分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• 本日FOMC会合が開催、政策金利は18:00( GMT)に発表、その30分後にパウエル議長の記者会見を予定
• 0.25%利下げ予想も、市場は詳細、特にドットプロットを重要視
• パウエル議長の発言はジャクソンホール会議の講演内容に沿う見込み、10月会合での利下げ示唆に注目が集まる
• ハト派的な発言となれば米ドルは下落か、米株式市場は米経済への悲観的な発言を懸念

FOMC会合決定まであとわずかに迫る

市場にとって長い待機期間が終わり、2025年で最も重要とされるFOMC会合が本日開催されます。政策金利の発表は18:00(GMT)に予定されています。市場では0.25%利下げがほぼ確実視されており、注目は経済見通しとドットチャート、そして18:30(GMT)からのパウエル議長の記者会見です。

米国のインフレが依然として高止まりし、米労働市場はようやくいくらか脆弱な兆しを見せ始めた段階であることを考えると、現時点での利下げは必要ないと主張することもできるかもしれません。しかし、8月初旬の米雇用統計発表後に行われたパウエル議長のジャクソンホール会議での講演は、FRBが利下げサイクルを再開する意向であることをほぼ明確なものにしました。この見方は、9月初旬に発表された米経済指標によって裏付けられました。

もし今回の議論の焦点が経済見通しとFRBの2つの使命(物価の安定と雇用の最大化)だけに焦点を当てたものであれば、本日の会合はもっと単純なものになっていたかもしれません。しかし、トランプ政権下の今、物事は簡単にはいかないようです。トランプ大統領によるFRBの権力掌握の試み、FRB理事にミラン氏の任命、さらにクック理事の解任騒動などが影を落とし、本日のFOMC会合の雰囲気は非常に緊張感のあるものになる可能性があります。会合参加者は厳格な守秘義務があるとはいえ、FOMCメンバーが自由に意見を述べられなくなる恐れもあるでしょう。

市場の反応は複数の要因に左右されるか

本日の会合における基本シナリオは次の4通りとなっています。(1) 0.25%の利下げ決定、 (2) 追加利下げ可能性を示唆するややハト派寄りのパウエル議長の記者会見、 (3) 最大3名が0.50%利下げにに対する票を投じる可能性があるも、大多数が0.25%利下げに賛成、 (4) 経済成長見通しの下方修正。このシナリオは市場で大方織り込み済みであるため、仮にこのシナリオが確認されたとしても、市場の反応は比較的限定的なものにとどまるかもしれません。

とはいえ、たとえFRBが0.25%利下げを実施し、上述のシナリオに沿った結果を示したとしても、他の要因が市場の動きに影響を与える可能性があります。例えば、2025年残りの期間で2回の利下げを示すドットプロット、2026年も同様に緩和方針を示すこと、あるいはパウエル議長がよりハト派的な姿勢を示す場合、これらが米ドルの更なる下落、リスク資産の上昇を引き起こす可能性があるでしょう。

利下げ見送りの可能性はほぼゼロに近いため、市場の最大のリスクは、0.25%利下げに加え、予想以上にタカ派的な記者会見が行われることです。もしパウエル議長が10月の追加利下げについての明確な発言を避け、2会合連続利下げ観測が後退するような記者会見の内容となれば、米株式市場は打撃を受け、一方で米ドルは上昇する公算があるでしょう。

一方で、本日0.50%の利下げが行われる可能性は低いと見られています。なぜなら、このような大幅利下げは、FRBが米国の経済見通しに非常に深刻な懸念を抱いていることを示唆し、トランプ大統領からの政治的圧力の結果と見なされる恐れがあるかもしれません。このシナリオでは、ゴールドが恩恵を受ける一方で、米ドルと米国株は大きな打撃を受ける可能性があります。

本日のFOMC会合に先立ち、加中銀の政策金利はいかに

重要なFOMC会合に先立ち、カナダ中銀は2025年に入って6回目の会合を開催します。最近の加経済指標は悪化傾向にあり、労働市場の弱体化や、2025年第2四半期の景気後退が確認されています。インフレの兆候はまちまちですが、市場は今年2度目の0.25%利下げを予想しており、12月にも0.25%利下げを実施すると織り込んでいます。

カナダ中銀は、カナダドルの急激な上昇を避けるため、FRBの動向に追随し利下げをせざるを得ないという見方もありますが、実際のところはそれだけではないようです。トランプ関税や、トランプ大統領が米国に有利な内容に修正しようと、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の再交渉を試みていることから、カナダ中銀が今回利下げに踏み切る動機は一段と高まっています。

カナダドルは対米ドルでの大きな下落を回避してきましたが、もしカナダ中銀がFRBよりもハト派的な姿勢を示せば、状況は本日にも一変する可能性があります。カナダ中銀がハト派的な姿勢をとることは、全体的なカナダ経済見通しを踏まえると、不思議なことではありません。