デイリーコメント – FRBは予想ほどハト派にならず、米ドル反発

投稿日: 2025年9月18日19時03分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• FRBは0.25%利下げ実施、ミラン理事は0.50%の大幅利下げに投票
• ドットプロットは下方修正も、市場の期待には届かず
• 米ドルは一時下落も直ちに反発、株式とゴールドは下落
• 英中銀と日銀は金利を据え置くと予想、投票内容とガイダンスに注目が集まる

FRBが利下げを決定、予想ほどハト派とはならず

昨日米ドルは、FRBの利下げ決定直後には2022年2月以来の安値まで急落したものの、その後すぐに反発し、全ての主要通貨に対して上昇して取引を終えました。本日も米ドルは主要通貨の中で最も堅調に推移しており、NZドルが最も大きく下落しています。これは、ニュージーランドの第2四半期GDPが予想以上に縮小したことが背景にあります。

FRBは市場の広範な予想通り、0.25%利下げを決定しましたが、FOMCメンバーの1名がこれに反対し、より大幅な0.50%利下げに票を投じました。この反対票を投じたのは、トランプ大統領が新たに任命したミラン理事です。ミラン理事のこの動きは、トランプ大統領が今後さらなる理事を任命する手段を見出した場合には、FRBの独立性が損なわれるのではないかという懸念を呼びました。ただその一方で、前回の会合で反対票を投じたウォラー理事とボウマン副議長は、今回は他の当局者らと同様に0.25%利下げに投じ、委員会としての結束力をアピールしました。

声明文の中では、失業率が小幅上昇したことが認められましたが、それでも依然として低水準にとどまっていると繰り返されました。また、新たな経済見通しでは、予測期間を通じて失業率が再び低下するとの楽観的な見方が示されました。この見通しでは、インフレ率はほぼ変更されなかった一方で、経済成長率は上方修正されました。

新たなドットプロットでは、年内の中央値が引き下げられ、追加で2回の0.25%利下げが行われることを示しました。これは市場の予想と一致しています。しかし、2026年のドットプロットは、1回の追加利下げのみと示しており、市場が予想している3回の追加利下げとは対照的な内容となっています。

米ドル反発、米株価とゴールドは下落

利下げ発表後の米ドルの当初の下落は、ミラン理事による反対票や、2025年のドットプロットが下方修正されたことによるものだった可能性があります。しかし、投資家が改めて内容を精査した結果、予想ほどハト派的ではなかったと解釈し、利益確定のため今まで取っていた米ドル売りのポジションを解消したようです。いわゆる「噂で売って、事実で買う」という典型的な反応です。

今後の焦点は、トランプ大統領がFRBへ圧力をかけ続けるかどうか、米経済指標が引き続き米国経済の軟化を示すかどうか、そして政策当局者らの発言からどのようなシグナルが出されるかにあります。もし、来年1回の利下げでは不十分かもしれないと示唆するような要因が複数出てくるようであれば、たとえ現在の米ドル反発がしばらく続いたとしても、更なる米ドル売りに繋がる可能性があります。

米株価指数とゴールドも下落しましたが、これはおそらく投資家が以前のポジションを解消したためと考えられ、米株式とゴールドの全体的な見通しが大きく変わったわけではありません。株式はリスク資産、ゴールドは安全資産とされており、通常は逆相関の関係にあると考えられていますが、今後の利下げ観測が、両資産クラスに同様の影響を与えています。株式は将来利益の現在価値が高まることで上昇し、ゴールドは保有の機会費用が低下することにより上昇します。

ポンドと円は英中銀と日銀の決定を待つ

本日はイングランド銀行が金利政策を決定し、明日のアジアセッションでは、日銀の金利政策決定が予定されています。

市場では、英中銀が8対1の投票内訳で金利を据え置くとの予想が大勢を占めています。一方で、英国のオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場によれば、次回の0.25%利下げは2026年4月までは完全には織り込まれていないようです。とはいえ、先月の決定は僅差で、最終決定にあたり2回目の投票が必要だったほどでした。そのため、今回英中銀が実際に利下げ実施をすることは広く予想されていないものの、複数当局者が利下げ票を投じた場合、ポンドには打撃となる可能性があるでしょう。

日銀についても、今回の会合では金利据え置きが見込まれています。しかし、石破首相の辞任による政局の不透明感があるにもかかわらず、日銀は年内に追加利上げが可能との見解を維持しているとの最近の報道から、フォワードガイダンスが非常に重要となります。現在市場では、年末までに0.25%利上げが実施される確率を65%程度としており、もし政策当局者らが依然として今後の利上げ姿勢を明確に示すのであれば、円高進行の公算は大きいでしょう。