デイリーコメント – パウエルFRB議長の慎重なトーンがリスク選好度の重しに

投稿日: 2025年9月24日18時43分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• パウエル議長が、利下げ観測に冷や水を浴びせる
• 米ドル上昇、米株式は下落、米経済指標に注目が移る中、難しい展開が予想される
• ゴールドは史上最高値付近で推移、原油は地政学的要因から上昇
• 暗号資産は調整局面、ゴールドとの相関関係が崩れる

米ドルが上昇、米株式は昨日の下落からの回復を試す

連日の上昇セッションの後、昨日はリスク選好度がやや後退しました。ナスダック100指数が売りを主導し、9月2日以来最大の日次下落幅を記録し、米ドルは強気のユーロに対してわずかに上昇しました。奇妙なことに、先週の株価上昇を後押しした要因、すなわちパウエル議長の発言が控えめであったもののFOMCが利下げに踏み切ったことが、昨日の株価調整の主な理由となりました。

昨日のセッション前半では、FRBのボウマン副議長やシカゴ連銀のグールズビー総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁らによるハト派的な発言が相次ぎ、「FRBハト派による攻撃」とでも言いたくなるような展開となりました。しかしその後、パウエルFRB議長が発言し、そのハト派的な論調を一部打ち消しました。

市場は10月にFRBが再び0.25%利下げを発表すると強く確信しているものの、パウエル議長は再び慎重なトーンを示し、過度に高まった利下げ観測を抑えようとしました。パウエル議長は、米国のインフレと雇用リスクの間に乖離があることを強調しつつ、関税は一時的な影響にとどまると予想するFRBの基本シナリオを繰り返しました。また、「米労働市場が本当に堅調だとは、もはや言えない」とも発言しました。さらにパウエル議長は予定されていた原稿から離れ、「株価はかなり高く評価されている」という自身の見解も述べ、現在の株式水準が割高かもしれないということを、控えめながらも示唆しました。

タカ派とハト派の攻防戦は今後も続くと見られており、本日はサンフランシスコ連銀のデイリー総裁が発言予定です。市場は最近、タカ派的な発言に対して特に敏感に反応しているため、注目が集まります。とはいえ、最終的には米経済指標がすべての鍵を握っており、これが10月の利下げ見送りという慎重な見方を裏付けるのか、それとも連続利下げを支持するハト派的な発言を正当化し現在の利下げ観測を再確認するのかが注目でしょう。特筆すべきは、S&Pグローバル社が発表した製造業およびサービス業のPMIが堅調だったことを受けて、市場の関心が徐々に明日発表の週間新規失業保険申請件数と耐久財受注に移りつつある点です。そして、最も重要視されているのが、金曜発表のPCEデータです。

本日のセッションは市場のリスクセンチメントを試す可能性

中国企業のアリババが、米国に拠点を置くライバル企業との競争に向けてAI関連の投資を拡大する計画を発表しました。これは特に米中貿易交渉が続き、最近いくらかの進展を見せている中、本日のリスク選好度をさらに後退させる可能性があります。さらに、中国がエヌビディアの支配的地位に真っ向から対抗するため、中国国内の半導体生産や技術革新を加速させようとしている事実も重なり、これが将来的には両経済大国間での協議をより困難にさせる可能性があります。また、貿易関連による市場のリスクオフ反応が再燃するリスクも否定できません。

一方で、暗号資産は下値を固めつつあるように見えます。ビットコインは11.1万ドルで反発し、現在は11.25万ドル付近で推移しています。また、一方でイーサリアムも4,200ドル付近で強いサポートを見つけました。現在の反応が蓄積フェーズ(アキュムレーション・フェーズ)の一環であると証明されれば、厳しい市場環境にもかかわらず、暗号資産が新たな上昇局面に入る可能性もあります。注目すべき点として、「デジタルゴールド」とされるビットコインとゴールドとの1カ月間の日次相関が最近急激に弱まり、9カ月ぶりの高水準から低下しています。

地政学的要因からゴールドと原油が上昇

この相関性急低下の主な理由は、ゴールドが市場環境にかかわらず上昇を続けていることにあります。原稿執筆時点で、ゴールドは3,775ドルで取引されており、史上最高値の3,791ドルをわずかに下回る水準です。また、ゴールドは原油とともに、ウクライナとロシアの紛争に関するトランプ大統領の姿勢の変化からも恩恵を受けています。

トランプ大統領がロシアを非難し、ウクライナに同情を示す中、ヨーロッパ諸国に対してロシア産のガスや石油の購入を停止するよう呼びかけました。これはおそらくロシア産ガスや石油の代替として米国産エネルギーの輸入が促されることを想定してしているとみられます。この動きを受けて、昨日の原油価格は堅調に上昇しましたが、直近のレンジ突破とはなりませんでした。トレンド転換のためには、まずは65ドルを上抜けし、その後67.30ドルの200日単純移動平均線を再び試す動きが必要と考えられるでしょう。