デイリーコメントー米政府機関再開の兆しを市場は歓迎

投稿日: 2025年11月10日19時34分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・主要通貨の動きはリスク選好度向上を示唆
・米上院は1月30日までの政府への資金提供を目的とした法案提出
・米政府機関再開の見通しで米株価先物が上昇
・ゴールドが強く反発、米ドル下落への遅れた反応か

米ドルはリスク連動通貨に対して最も下落

金曜日の米ドルは、ほとんどの主要通貨に対して下落し、木曜日の下落幅を拡大させました。この下落には、各業界がAI導入を進め、コスト削減を目指す中、10月に米企業が15万件以上解雇し、過去20年以上で最大の人員削減数となったとの報道が起因しています。

カナダでは、10月の雇用統計が予想を上回ったことから、カナダ銀行による利下げは終了したと市場が確信したため、カナダドルが最も上昇しました。カナダのオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)によると、来年6月までに0.25%の利下げが行われる確率はわずか40%となっています。

本日の米ドルは引き続き下落基調で、豪ドル、NZドル、カナダドルといったリスク連動通貨に対して最も下落し、円に対してのみ上昇しています。そのため、リスクオンの取引環境となっていることが示唆されており、確かに米連邦政府がまもなく再開するとの兆候が顕著であることが裏付けされるかもしれません。

米政府機関の閉鎖はまもなく終了か

昨日、米上院では、1月30日までに資金を提供するために修正された下院通過済みの予算案の手続きを進めました。この予算案が上院で可決されると、下院でも再承認されることになります。その後、トランプ大統領が署名をして法律化されます。この手順には数日かかる可能性がありますが、Polymarket によると、11月15日前に政府機関が再開する可能性は92%まで急騰しています。

米政府機関が再開する場合、9月と10月の非農業部門雇用者数や、10月の米CPI指数といった一連の政府による経済データが公表されることになります。FRBは先月のFOMC会合にてタカ派となり、民間部門や地方連銀による経済データに基づき、市場も米経済の現状について、ある程度の理解をしているものの、政府公式のレポートが、FRBの今後の方針についての市場予想に影響を与える可能性があります。

FF金利先物によると、市場は12月での0.25%の利下げの可能性を66%に織り込んでおり、来年は合計で0.60%相当の利下げが行われると予想しています。先月のFOMC会合前までは、12月の利下げはほぼ完全に織り込まれており、来年は合計で3回の0.25%の利下げが行われると見られていました。

株式先物は上昇も安全資産であるゴールドは反発

米株式市場では、NYダウとS&P500は金曜日にわずかに上昇して取引を終えましたが、ナスダックは下落しました。それにもかかわらず、本日の株価先物は黒字となっており、米上院が資金法案を提出し、1月30日まで政府が再開できるとの見通しについての市場の前向きなムードを反映しています。

この法案が正式に法律化されると、市場に確信が広がり、米株価がさらに上昇する可能性がありますが、史上最長となった政府機関の閉鎖によるダメージを払拭することは難しいでしょう。したがって、第4四半期の経済データが軟調となるリスクがあり、その場合、特に株価のバリエーションが極めて割高となっている中、投資家はリスク資産への投資を減少させることになるでしょう。具体的には、S&P500 での将来の予想利益を基にした株価収益率は2020年の高水準を上回っています。

しかし、米政府機関の再開を巡る楽観的見方の中、究極の安全資産であるゴールドが売られるのではなく、本日強く反発していることは奇妙な現象といえます。おそらく、ゴールドの投資家は、10月下旬の急な調整を経て、4,000ドルを絶好の買い機会と見ているのか、またはチャレンジャー・グレイ・クリスマス社が先月15万件以上の人員削減があったと発表したため、米ドルが下落したことへの遅れた反応となっている可能性もあります。