デイリーコメント – 市場の警戒ムードが続く中、米国経済指標が注目の的

投稿日: 2025年12月3日20時06分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• 脆弱なリスク選好度も、暗号資産市場は回復の兆しを見せる
• 本日は重要な米経済指標に注目、FRB利下げ観測は高まる
• 米ドル安は継続、ドル/円の下落は一服
• 原油とゴールドは様子見姿勢、米ロ交渉は膠着状態

本日は重要な米経済指標発表を控える

米政府機関の閉鎖が約3週間前に終了したにもかかわらず、延期されていた分の経済指標発表は少なく、その多くは9月分のものにとどまっていました。幸いにも、本日のカレンダーは重要な米経済指標が盛りだくさんとなっており、重要なFOMC会合を1週間後に控える中、金曜日に予定されていた非農業部門雇用者数の欠如を一部補う内容となっています。

焦点はADP雇用者数とISMサービス業PMIに集中する見込みです。現在のFRBの利下げスタンスの主因は米労働市場にあり、本日のデータは米国の雇用情勢に関する最新の見通しを示すことになります。

これらの指標は依然として米政府機関閉鎖の影響を受けているため、基礎的な経済動向を完全に反映しているわけではなく、通常より変動が大きくなる可能性があることを念頭に置く必要があります。そうした中で、ADP雇用者数は10月の堅調な4万2千人増に続き、1万人の増加を示すと予測されており、その場合、過去2ヶ月連続で記録したマイナスを帳消しにする動きとなります。

ISMサービス業PMIは52.1へ小幅に低下する と予想されており、これは本日早朝に発表された中国のRatingDogサービス業PMIの低下と一致しています。ただし、各種サブインデックスへの注目は非常に高く、特に、10月に70(2022年11月以来の高水準)を記録した支払い価格サブインデックス、そして2025年5月以降、50を下回る水準で推移している雇用サブインデックスが焦点となります。

本日発表の重要経済指標に対する市場の反応はいかに

何人かのFRBメンバーがブラックアウト期間に入る前に、金利決定の前に正確なデータが必要であることを理由にタカ派的発言をしたにもかかわらず、市場はFRBが来週利下げを行う確率を85%と現在見ています。もし本日の発表の経済指標が予想通り、あるいは予想を下回る内容となった場合、市場の反応はおそらく限定的となり、現在の状況が維持される可能性が高いでしょう。

したがって、ADP雇用者数が数十万件以上も増加したり、ISMサービス業PMIの支払い価格サブインデックスが小幅に上昇するといった大きなサプライズがあった場合にのみ、現在のFRB利下げ観測に懐疑的となるかもしれません。その場合、リスク資産市場は反応し、株式はやや軟化し、米ドルがようやく小幅に押し上げられるかもしれません。とはいえ、こうした反応は一時的なものにとどまる可能性があります。

本日の市場の反応や12月のFOMC会合を上回る関心を集めているのが、トランプ大統領がパウエルFBR議長の後任を選んだのではないかという憶測です。国家経済会議(NEC)のハセット委員長が有力視されており、その場合、現在市場が織り込む来年の利下げ幅0.67%を上回る、より積極的な利下げにつながる可能性もあります。

米株式市場の回復は脆い、米ドル安が続く

米株価指数は昨日の取引をプラス圏で終えましたが、本日の米経済指標発表やFOMC会合を控え、最近の値動きに方向性がないようです。一方で、AI競争は激化しており、GoogleのTPU開発に続いて、Amazonが新AIチップTrainium3を発表し、エヌビディアの支配的地位への新たな挑戦者が加わる形となっています。

為替市場の今週の主役は米ドル安です。ユーロ/ドルは1.1640まで上昇し、11月中旬の高値を突破してさらに上値を試す動きを見せています。加えて、豪ドルはオーストラリアの予想を下回る第3四半期GDP発表をものともせず、ブロック豪中銀総裁のタカ派発言を受けて再び、強力な米ドルを上回るパフォーマンスを示しました。一方、最近のドル/円の下落は155円60銭付近で一服している様子で、投資家は12月の日銀による利上げの現実的な可能性について再考している可能性があります。

暗号資産が上昇、原油とゴールドは期待ムード

暗号資産市場はようやく回復の兆しを見せており、ビットコインは9万2,000ドルを上回り、11月下旬の安値から大きく回復しています。とはいえ、暗号資産市場が抱える問題、特にセイラー氏が創業した、ビットコインに積極投資する米ストラテジー社の下落による影響は依然として尾を引いています。

一方、ゴールドは4,200ドル台、原油は58ドル台で推移しており、ウクライナ・ロシア情勢に関するニュースを待っています。米国が両国と行った一連の会合では、凍結されたロシア資産の取り扱いや、ロシアが現在制圧したと主張するウクライナ東部の領土を要求している点で意見の相違が確認されました。これら点は、米国主導の現在の交渉取り組みを容易に頓挫させる可能性があるでしょう。