デイリーコメント – 米経済指標がハト派的なFRB利下げ観測を裏付け、米ドル下落

投稿日: 2025年12月4日20時28分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• ADP雇用者数は、11月の米民間雇用者数3.2万人減少を示す
• 12月FRB利下げ観測が依然として高く、米ドルは下落
• S&Pグローバル社の英総合PMI改定値が上方修正、ポンド上昇
• FRB利下げ観測の高まりで米株式は上昇、ゴールドは調整局面を継続

昨日の米経済指標が12月FRB利下げ論を裏付ける

米ドルは昨日、主要通貨すべてに対して下落し、特にポンドに対して最も大きく下落しました。本日の米ドルは安定傾向にあるようで、豪ドルに対してのみ依然として下落しています。

昨日、米ドルは各種米経済指標の発表を前に軟調に推移しており、ADP雇用者数が予想を下回る結果だったため、これがトレーダーにショートポジションを維持させたようです。この報告によると、11月は5千人増の予想に反し、民間企業が3万2千人の雇用を削減しており、特に中小企業が最も大きな打撃を受けたことが明らかになりました。

しかし、この予想外の下振れは十分なサプライズとはなりませんでした。これは恐らく、FF金利先物がFRBの今後の利下げ方針に関する予想に大きな変化を示さなかったからも裏付けられるでしょう。そもそも、週次ベースのADPデータに注目していた人々は、月次値で下振れリスクがあることをすでに認識していました。

12月のFRB利下げ確率は約85%のままで、投資家は引き続き、2026年内にほぼ3回の0.25%追加利下げを織り込んでいます。こうした見方が揺らがなかったもう一つの理由として、11月の米ISM非製造業PMIが改善したことも挙げられます。とはいえ、予想以上に低下した支払い価格サブインデックスは、FRBが来週のFOMC会合で比較的ハト派スタンスを維持し、想定されている利下げに踏み切ることを後押しする可能性があるかもしれません。

ポンドはS&Pグローバル社の英総合PMI改定値を受け上昇も、限定的か

ポンドは米ドル安の恩恵を最も享受した通貨で、ポンド/ドルは1%を超えて上昇しました。おそらく、S&Pグローバル社が発表した、11月の英総合PMI改定値が上方修正されたことも、この通貨ペアに一段の追い風を与えたのでしょう。

しかし、イングランド銀行が次回会合で0.25%の利下げを行うことはすでに完全に織り込まれており、来年についてもほぼ2回の0.25%追加利下げが織り込まれていいます。そのため、ポンドのさらなる回復は限定的となる公算が大きく、特にユーロに対してはなおさらです。

ECBはこれ以上の追加利下げは実施しないと見込まれており、ECBとイングランド銀行の金融政策見通しの違いがユーロにとって好材料となる可能性があります。さらに、ウクライナとロシアの戦争終結の可能性に対する楽観論からも、ユーロは恩恵を享受しているかもしれません。

ロシアは昨日、プーチン大統領が米国からの提案を一部受け入れたと発表し、他の提案には拒否したものの、合意に達するまで必要なだけ何度でも交渉する意思を示しました。

米株価は上昇、ゴールドは米ドル安の恩恵を受けられず

米株式市場では、主要3指数すべてが上昇し、本日の米先物は寄り付きが高くなることを示しています。おそらくこれは今後のFRBの方針について、市場がハト派的に解釈していることを反映しているのでしょう。ただし、株価バリュエーションが依然として割高なことから、下振れリスクは顕著なままです。

例えば、FRBが確かに来週0.25%利下げを実施するかもしれませんが、ドットプロットでは来年の利下げは2回だけと示されるかもしれません。これは、将来キャッシュフローを割引いて評価される高成長企業の現在価値に重しとなる可能性があるため、株式にとってはマイナス要因となり得るかもしれません。

奇妙なことに、ゴールドトレーダーは米ドル安を活かす動きを見せず、ゴールドは本日で3日連続の調整局面となっています。いずれにせよ、FRB利下げ観測が再びゴールドの追い風となるのは時間の問題かもしれません。というのも、最近のゴールド相場は反応が遅れる傾向にあるからです。この調整局面がさらに悪化するには、来週FRBが予想よりもハト派的でない姿勢を示す必要があるでしょう。