デイリーコメント – 米株安継続、NFPの発表を控え円高に追い風

投稿日: 2025年12月16日20時39分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • NFPなど主要経済指標の発表を控え、米株式市場は2日連続で下落
  • 重要イベントを前にドル相場はまちまち、リスクオフと日銀利上げ観測で円高
  • ウクライナ和平合意への期待で原油は下落、ゴールドは高値から反落

AIを巡る懸念が続く中、米株価は下落基調を維持

米株価は昨日の取引で序盤の上昇分を失い、最終的に下落して引けたため、本日も以前として市場は警戒ムードとなりました。最近は、AIバブルへの懸念が高まっているため、ハイテク株は最近低迷しており、バリュー株への資金移動が進んでいます。これにより、年末にかけて市場全体が広く上昇するサンターラリーが起こる可能性は後退しています。

最新の警戒感は、オラクルとブロードコムの決算が、過度に高まった期待に伴うリスクを浮き彫りにしたことを受けて強まりました。オラクルはデータセンター拡張を負債によって賄っており、一方でブロードコムは利益率の低下に直面しています。ただし通常通り、売りが広がる中でも例外的に上昇する銘柄はあり、テスラは昨日、安全監視員を配置しないロボタクシーの走行試験を開始したと発表後、同社の株価が3.5%上昇しました。

アジア株式市場も週初からさえない展開となっており、中国の低調な経済指標が投資家心理の重荷となっています。しかし欧州株は、今週が今年最後の5営業日の取引の週となる中、やや明るい動きを見せています。

日銀利上げ観測で円高

安全資産とされる円は、市場の弱気ムードからある程度の恩恵を受けていますが、主には日銀が金曜日に利上げを行うとの見方が強まる中で、円がようやく本格的に買われ始めていることが好材料となっています。最も、0.25%の利上げは現時点では約82%しか織り込まれていないため、今後数日でその確率がさらに高まれば、円はさらに上昇する余地があります。

円高進行が米ドル指数を押し下げており、ドル指数は現在、約2か月ぶりの低水準付近で推移しています。ただし、ユーロやポンドに対する米ドルの下落は比較的限定的である一方で、豪ドルとNZドルは先週後半以降、下落基調が続いています。

好調な英PMIを受けポンド上昇、豪ドル、NZドル、カナダドルは下落

リスクセンチメントの後退とコモディティ価格の下落が豪ドルの重しとなりました。一方で、NZドルは、NZ中銀のブレマン新総裁が金融市場の状況は想定以上に引き締まっていると述べたことを受け、投資家が見込んでいた2026年最初の利上げ時期を後退させた為、下落しました。

その間、カナダドルは、カナダの消費者物価指数(CPI)が予想をやや下回ったことを受け、昨日は対米ドルで3カ月ぶりの高値から反落しました。

ユーロ圏の12月PMI(速報値)が予想を下回ったにもかかわらずユーロは堅調に推移しましたが、ポンドは英PMIが予想を上回ったことから、一時的に下落したものの1.34ドル台を超える水準に回復しました。この下落は英雇用統計が好悪両材料が混在したことが背景にあり、英国の10月までの3か月間の失業率は再び5.1%に上昇しました。

本日のNFPがクリスマス前の米経済指標発表ラッシュの幕開けとなる

今後の米国市場では、注目は本日13:30(GMT)に発表の延期された11月の非農業部門雇用者数(NFP)に完全に集まるでしょう。米国経済の雇用増加数は5万人と、前月の11万9千人から減少する見込みが高くなっています。しかし、政府が11月の中旬まで閉鎖状態にあったことや、最近のレイオフ発表から、下振れリスクの方が高いと考えられるでしょう。

本日は小売売上高も発表されますが、10月分であるためあまり注目されない可能性が高く、投資家の関心はすぐに木曜日の消費者物価指数(CPI)に移るでしょう。

現時点では恐らく、米株式トレーダーは少し弱めの経済指標が出ることを期待しているようです。というのも、そうなれば、FRBが2026年に見込んでいる1回の0.25%の利下げよりも、さらに大幅な利下げを行う可能性が高まるからです。

ビットコインが再び急落、原油は圧力下、ゴールドは高値から下落

来年、FRBが何度利下げを実施できるかという疑念が、最近の暗号資産にとって大きな逆風となっており、AIを巡る懸念が売り圧力をさらに悪化させています。ビットコインは今月すでに5%以上下落しており、年末にかけての反発はあまり期待できそうにありません。重要なレジスタンスラインである94,000ドルを突破できなかったため、ビットコインは近いうちに84,000ドルのサポートラインを試すリスクに直面しています。

一方、ゴールドの直近の上昇は勢いを失ったようで、先週金曜日に約8週間ぶりの高値付近まで急騰した後、再び4,300ドルを下回っています。

原油価格も下落しており、WTI先物は本日、5月以来の安値をつけました。ウクライナとロシアが和平合意に近づいているとの兆候が強まり、ロシア産原油への制裁緩和につながる可能性があることが、既存の供給過剰懸念に追い打ちをかけています。

ドイツで行われた最新の協議は、ウクライナの安全保障という重要課題において前向きな成果をもたらしました。しかし、WTI先物が売られすぎの状況にあることから、原油が直ちに55ドルの水準を下回る公算は低いかもしれません。