デイリーマーケットコメント–イエレン財務長官の発言で、株式市場が動揺

投稿日: 2021年5月5日18時58分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • イエレン財務長官が利上げに言及し、ハイテク銘柄急落
  • FX市場の反応は限定的で、米ドルは緩やかな上昇
  • ISM非製造業景況指数、及び米4月ADP雇用統計に注目

イエレン財務長官の発言でハイテク銘柄下落

昨日には、FRBが遂に利上げに踏み切った場合、市場がどのような反応をするかを垣間見ることができたようです。昨日、イエレン米財務長官が経済のオーバーシュートを回避する為、利上げの必要性に言及しました。この発言を受けて、株式市場では、ハイテク銘柄を中心に売り圧力が強まりました。

イエレン米財務長官は、単に現状を反映しているに過ぎません。大規模な財政刺激策が実施される中、インフレ上昇は自然の流れであり、利上げは必然的な流れとなります。しかしながら、FRBが政策金利の据え置き方針を示している中、前FRB議長が利上げの必要性を示したことにより、市場の反応が大きくなりました。

その後、イエレン米財務長官は、先の発言について、利上げを予想したり、推奨しているわけではないと説明しました。ナスダック指数、及びバリュエーションの高いハイテク銘柄が最も大きな打撃を受け、ハイテク銘柄が財政刺激策への期待でいかに急騰していたかが浮き彫りになりました。

市場は、当面の間、FRBが政策金利を据え置く方針を再認識し、混乱した市場に落ち着きが戻りました。暫くの間は、株式市場は安定が継続し、8月末のジャクソンホールでのサミットが実質的なターニングポイントとなる見通しです。今までにも、ジャクソンホールでのサミットが金融政策の変更を示唆する機会となってきました。「8月に売って、大きな破綻を回避する」可能性も考えられます。

株式市場の混乱にもかかわらず、FX市場の反応は限定的

米株価が下落し、今後の利上げ予測が改めて認識された為、米ドル急騰が予測されましたが、米ドルは僅かに上昇したに過ぎませんでした。

現在、ユーロ/ドルは心理的節目となる1.20ドルを試す展開となっています。ユーロ/ドルが1.20ドル台を割り込み、終値が1.20ドルを下回った場合、下落が一段と加速するでしょう。

本日には、米4月ISM非製造業景況指数、及び米4月ADP雇用統計が発表されます。両指標が好調な結果となった場合、米ドルと株価は上昇するでしょう。

ポンド上昇、ゴールドは若干の下落

今週のポンドは、上昇基調の米ドルに対しても、上昇幅を拡大させました。英国では、ワクチン接種プログラムが功を奏したことから、明日のイングランド銀行の政策会合では、テーパリング観測が浮上しています。

英政府は、変異株へのリスクにより、秋に50歳以上を対象に3回目の新型コロナウイルスワクチン接種を実施する方針を示しました。これにより、経済の下振れリスクが緩和されるでしょう。ポンド相場では、イングランド銀行の政策会合、スコットランドの議会選挙が今週のリスク材料になりますが、中期的見通しは改善しつつあります。

コモディティ市場では、ゴールドがイエレン米財務長官の発言の影響を受けました。国債利回りや米ドルの上昇も、ゴールドの下落要因となりました。しかしながら、ゴールドは重要な水準となる1765ドル台を上回って推移しています。市場がFRBの政策金利据え置き方針を織り込んだ場合、今年の夏はゴールド高になるでしょう。