デイリーマーケットコメントー米ドルは下落、原油価格は回復

投稿日: 2022年8月12日18時41分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • インフレ指標結果が米利上げペース後退観測に繋がり、米ドルは下落
  • 原油価格と国債利回りは相反する動き、米株価上昇の勢い失速
  • GDP下落へのポンドの反応は限定的、米ミシガン大消費者物価指数発表に注目

米ドルvs 国債利回り

複数の市場から相反するシグナルが発信され、今週は奇妙な1週間でした。消費者物価指数、及び生産者物価指数の予想を下回る結果を受けて、インフレの最悪の状況から脱却し、積極的な米利上げの必要性がなくなったとの期待が市場に広がりました。これを受けて、米ドルが下落しました。

一方で、債券市場は異なるシグナルを発信しています。エネルギー価格が再度上昇に転じ、FRBがインフレの長期化見通しを改めて示した為、長期国債利回りは大きく上昇して今週を終える模様です。

長期国債利回り上昇にもかかわらず米ドルが上昇し、外国為替市場では米利上げペースが鈍化する短期的見通しが材料視され、債券市場ではインフレ長期化の悲観的観測が示される奇妙な状況となりました。

外国為替市場の見通し

大局的な流れとしましては、米ドルが下落相場に反転したと判断するには時期尚早でしょう。インフレはピークに達し、今年後半の消費者物価指数が0%となったとしても、本年度のインフレ率は6%を超え、FRBの目標を大きく上回ります。更に重要なことは、米ドルに代わる資産がないことです。

ユーロ圏内の天然ガス価格が最高値付近に再び近づく中、ユーロにエネルギー危機が迫っています。ユーロ圏企業景況の見通し悪化は、世界経済減速のきっかけとなる可能性があります。円は、日銀のイールドカーブコントロールに疲弊し、ポンドは市場のリスクムードで動くようになりました。コモディティ通貨は、債務超過の中国不動産業界のメルトダウンに直面しています。

景気後退懸念が米利上げペースを鈍化させても、米国よりも他国の状況が悪化している場合、米ドルは安全資産の需要により上昇するでしょう。チャート上では見通しの変化は見られず、ユーロ/ドルは下落基調を継続しています。

米株価上昇の勢い失速、原油価格回復

 昨日の米株式市場は、前半の上昇幅を失い、終値は始値とほぼ同水準となりました。債券市場の悲観的動きにもかかわらず、米主要株価指数は今週を上昇して終える模様です。国債利回りと米株価の二分する動きは限界に達するでしょう。市場がソフトランディングをほぼ確認しない限り、国債利回りと株価の相反する動きは継続できないでしょう。

当面の間、イランの原油供給を期待できないにもかかわらず、市場の楽観ムードを背景に、今週の原油価格は7月の安値付近から7%以上値上がりしました。イランとの核協議については、合意締結の為、欧州側がイラン側に複数の譲歩を提案した後、進展はまだありません。

英国では、英第2四半期GDPが予想を下回る結果となりました。イングランド銀行が示した翌年の長期的な景気後退予測が、非現実的ではない可能性が浮上しました。しかしながら、ポンド相場の反応は限定的で、金融政策は世界のリスクムードを動かす二次的な要因に過ぎないことが改めて明確になりました。

本日には、米8月ミシガン大消費者物価指数が発表されます。6月にFRBが利上げペースを加速させて以来、米ミシガン大消費者物価指数は、インフレの最も重要な指標となりました。