デイリーマーケットコメントーFRBが金融政策に柔軟姿勢を示し、市場は方向性を欠く展開

投稿日: 2022年8月18日20時10分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • FOMC議事録はタカ派寄り内容、しかしながら利下げペース鈍化の可能性示唆
  • 米ドル堅調推移、米株価は回復後に再度下落
  • 欧州国内の天然ガスが最高値を更新する中、ユーロは底堅く推移


FRBは利下げに否定的見解、市場では翌年後半の利下げ観測

7月のFOMC議事録では、インフレを目標の2%に抑え込む為、利上げは不可欠であるとの姿勢が改めて示されました。更に重要なことは、インフレ長期化見通しにより、当面の間は利上げが継続する可能性にFOMCメンバーが同意していることです。

政策金利が上昇するにつれて、利上げペースを落とすことが適切になる可能性が示唆され、大幅な引き締めを懸念していた市場を若干安堵させました。

総じて、議事録はインフレ抑制には時間が要することを改めて示す内容で、7月のFOMC政策会合後のFRBメンバーの発言と一致しています。利上げペースは、今後の経済指標結果次第に変更され、より柔軟な対応になったことには希望が持てます。しかしながら、米7月消費者物価指数後の発言内容から判断しますと、米国内のインフレピークアウトを判断するには十分な材料が必要なようです。

米国債利回り上昇で米ドル上昇

議事録後の利上げ観測は若干上昇したものの、2023年後半の利上げ観測も根強く残っています。FRBの予想よりも早くにインフレが抑制されるか、或いは米景気後退によりFRBは利上げを長期的に継続できないと市場は見なしているようです。

米10年債利回りは2.9%を超え、米ドルは対円で135円台越えとなりました。FRBのタカ派的見解、及び米経済の見通し悪化は安全資産の需要増加に繋がり、米ドルは米7月消費者物価指数後の下落から回復しました。

本日には、カンザスシティ連銀のジョージ総裁、及びミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の発言に市場の注目が集まります。市場は、米週次新規失業保険件数も注視するでしょう。

S&P 500はレジスタンスに直面の可能性

米株式市場では、FOMC議事録はタカ派的と見なされなかったものの、下落幅を回復することはできませんでした。S&P 500は0.7%下落して引け、ナスダック指数も下落しました。直近でのEミニ先物指数も下落して推移しています。

株価は6月中旬の安値から大幅に回復しています。S&P 500は約17%、ナスダック指数は約21%回復しました。しかしながら、S&P 500は200日平均線がレジスタンスとして機能している為、一段の上昇の前に、調整の動きとなる可能性があります。

天然ガスの最高値更新でユーロとポンド下落

外国為替市場では、豪ドル、NZドル、及びカナダドル等のコモディティ通貨は安定推移しています。しかしながら、中国の景気後退リスクがコモディティ需要の見通し悪化に繋がり、対米ドルでは上値の重い展開が継続しています。

昨日の英7月消費者物価指数の予想を上回る結果は、英国とユーロ圏が他の主要経済国よりも長期的なインフレに直面する可能性を浮上させ、経済成長見通し悪化に繋がりました。

オランダのTTFガス先物指数は最高値を更新し、欧州内の天然ガス価格が急騰しています。ロシアがノードストリームでの供給量増加を拒否している中、ライン川の水位低下による物流混乱がエネルギー不足に拍車をかけています。

過去1か月間のユーロは予想外に底堅く推移し、対米ドルで1.01ドルのサポートライン越えを維持しています。

一方のポンドは、リスクムード、及び国内事情に反応し、荒い値動きとなっています。ポンド/ドルは1.20ドルを一時的に割り込んだ後、1.2050ドル付近まで回復しました。