デイリーコメント ― 通商会談の進展がタカ派的なパウエル議長の発言後の市場の動揺を鎮める

投稿日: 2025年4月17日19時27分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• トランプ大統領、日米通商会談を「大きな進展」と歓迎
• 米先物と米ドルが上昇、ゴールドは史上最高値から下落
• パウエル議長は依然として様子見姿勢、本日のECBの政策金利決定に注目が移る
• 半導体株に売り圧力、本日のNetflix決算発表でムード向上となるか

貿易交渉の進展がイースター休暇前に若干の安心感をもたらす

イースターの長期休暇を控えた木曜日、トランプ大統領が日本の通商代表団との協議で「大きな進展があった」と述べたことを受け、市場センチメントは改善しました。日本は米国との貿易交渉を他の国よりも先んじて行うことができており、トランプ政権にとっても合意の締結が優先事項であることを示しています。

日米間の貿易交渉の結果が、より厳しい関税を回避するため米国との新たな貿易協定締結を目指すすべての他の国々にとって、合意締結がどれほど容易かを占う先行指標と見なされる可能性が高く、それゆえ、投資家たちはこの日米間の協議を注意深く見守っています。

半導体株の急落が米株式市場の重荷に

本日のセンチメントの改善は、中国への半導体輸出に対する新たな規制と、パウエル議長の利下げに後ろ向きな発言が相まって市場を動揺させ、S&P500指数を2.2%押し下げた昨日の米株式の更なる悲惨なセッションに続くものです。

エヌビディアは米政府による半導体「H20」の対中輸出規制強化により55億ドルの費用の計上が見込まれると発表したため、同社の株価は6.9%急落しました。一方で、オランダの半導体製造装置メーカーASMLは、第1四半期の受注が市場予想を下回ったことを受け、株価が5%以上下落しました。

本日、台湾のTSMCは第1四半期の利益予想を上回り、明るいニュースとなりましたが、トランプ大統領の関税政策に関する不透明感が続く中で、同社の株価は下落しています。また、Netflixも、本日の米市場の取引終了後に第1四半期の決算を発表する予定で、これが好材料となる可能性はありますが、米国の投資家が決算報告に反応するにはイースター休暇後の月曜日まで待つ必要があります。

パウエル議長、ハト派に傾かず

事態を悪化させているのは、FRBが介入して米市場の下落を食い止めようとしないことです。投資家の間では、米国経済が景気後退に陥った場合、FRBはインフレよりも経済成長を優先し、利下げに踏み切るだろうという見方が根強いようです。

しかし、昨日のパウエル議長の発言はそうした見方とは異なっており、長期的なインフレ期待をしっかりと抑制することの重要性を強調しました。 パウエル議長は、物価の安定なしに最大雇用は達成できず、関税引き上げによるインフレショックが一時的なものであることがはっきりするまでは、FRBは金利をむしろ据え置くと述べました。

米ドル売りは一服、円は下落

それでも、貿易交渉の進展に好感して、米先物は本日上昇していますが、欧州市場はそれほど納得していないようで、株価はマイナスに転じています。

米ドルは一時的ながら売り圧力から解放され、少なくとも他の安全資産である円やスイスフランに対していくらか損失を取り戻すことができました。FRBの利下げ観測は、昨日の好調な米小売売上高とパウエル議長のタカ派的なスタンスの後でも、それほど大きくは変動していません。

日本の為替政策が、トランプ政権との関税に関する協議とは別に話し合われる可能性が高いとの報道を受けて、米政府からの為替操作への非難に対する懸念が緩和され、円は若干の圧力を受けています。

本日のECB会合を控えユーロは軟調、カナダ中銀は金利据え置き決定

本日のECBの政策金利決定を控え、ユーロも1.14ドルをやや下回り、下落しています。貿易戦争がユーロ圏の成長見通しを不透明にしているため、ECBが本日さらに0.25%の利下げを実施するのはほぼ確実です。しかし、ラガルドECB総裁が本日大幅にハト派かタカ派にならない限り、ユーロが政策金利の決定に大きく反応することはないでしょう。

一方、カナダ中銀は昨日、金利を据え置き、連続利下げに終止符を打ちました。FRBと同様、カナダ中銀もインフレ見通しに対して慎重な姿勢を強めており、今後利下げを容易に行わない可能性があるでしょう。

この決定を受けてカナダドルは上昇しましたが、本日は豪ドルとNZドルとともにやや弱含みとなっています。本日のオーストラリアの失業率は予想を下回り、ニュージーランドのCPI指数は予想より加速しましたが、この経済データは豪ドルとNZドルには影響はなかったようです。

ゴールドの上昇は一服

株式市場や為替市場がまちまちの展開となる中、ゴールド相場は市場の改善ムードをより反映し、過去最高値となる3,357.40ドルを付けた後に反落し、下落しました。昨日のゴールドは3.6%上昇し、今月は6%以上の上昇を記録しています。