デイリーコメントー財政懸念が広がり、米ドル回復は一段落

投稿日: 2025年5月23日18時16分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米下院にて税制・歳出法案が可決、事実買いから米ドルは一時的に回復
・米PMI指数と失業保険申請件数の改善も米ドル上昇に貢献
・その後財政懸念が高まり、米ドル回復は一段落
・ゴールド反発、ビットコインは新最高値更新、原油価格続落

米下院で税制・歳出法案可決、米経済指標も米ドル上昇をサポート

トランプ大統領による大幅減税と歳出増額を盛り込んだ税制・歳出法案が下院で可決されたことから、昨日の米ドルはほとんどの主要通貨に対して上昇しました。

この税制・歳出法案によって、米国の債務が膨れ上がるとの懸念から、可決前は米資産からの逃避となりましたが、可決によって「事実で買う」反応となったようです。この税制・歳出法案は現在、共和党が過半数を占める上院にて数週間にわたって議論される予定です。

さらに、おそらく米中間の貿易摩擦が停戦となったことから、昨日の米PMI指数が予想を上回り、企業活動が5月に改善されたことが明らかとなったことも、米ドル上昇の一因となったようです。また、先週の失業保険申請件数が減少したこともあり、底堅い米労働市場が引き続き示唆されたことも一因となったのかもしれません。そのためか、市場はFRBによる年内の合計利下げ幅をわずか0.50%相当で維持しているのかもしれません。

財政不安が高まり、リスク回避が復活

そうは言っても、本日の米ドルは下落しており、ゴールドが再び上昇しています。これは、米国債利回りがいくらか低下したものの、トランプ大統領による税制・歳出法案による影響への懸念が払拭されていないことを意味します。

債務が膨れ上がると、民間投資が締め出される可能性があり、その結果、経済成長が減速し、さらに重要なことには、危機時に政府が支出で対応できなくなる可能性が出てくることです。FRBが流動性のチャンネルを通じて救済するとしても、その結果、ドル安とインフレ率上昇につながる可能性があります。高インフレには金利の上昇が必要となる可能性があり、米国債利回りがさらに上昇することも意味するので、政府が債務を返済することがさらに困難になり得ます。

昨日の米株式市場は、おそらく好調な米経済データによって、投資家がリスク資産への投資を増加させたためか、若干上昇で終わりました。しかし本日の株先物は下落での開場を示唆しており、焦点が関税から財政リスクに移行したとの見解を裏付けたことが市場を神経質にさせています。

ビットコインは新最高値となる11万2千ドルを更新し、投資家が引き続き米資産の代替資産を模索していることが示唆されています。

OPECプラス増産拡大報道で原油価格下落、日本のインフレ加速

OPECプラスが次回6月1日の会合にて、大規模な供給の引き上げを検討しているとのブルームバーグの報道を受けて、昨日の原油価格は続落しました。この報道は、イランと米国の間での核合意協議が新しく行われると発表され、イスラエルによるイランへの攻撃への懸念から追加されたリスクプレミアムが相殺された後に明らかとなりました。

日本では、全国の消費者物価(CPI)指数が前年比で3.6%で横ばいとなったものの、コアCPI指数が3.2%から3.5%に加速し、日銀が年内にもう一度0.25%の利上げを行うとの予想を裏付けしています。オーバーナイト・インデック・ススワップ(OIS)市場によると、日銀による利上げの確率は約60%となっています。