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デイリーコメントー米裁判所による関税差し止めで米ドル上昇も見通しは不透明

・米連邦裁判所はトランプ関税の決定を差し止め
・米裁判所の決定後、米ドルと米株価急騰もラリーは既に後退気味
・トランプ大統領が友好的なスタンスを撤回するリスクも
・ゴールドは上昇試みるも下落基調、原油価格は63ドル突破で上昇基調

米裁判所の判決でトランプ関税に転機

しばらくは、トランプ大統領による通常のやり取りに市場は取り合うことなく、比較的静かなセッションが続いていましたが、昨日の関税を巡る進展を受けて、今後不安定なセッションが続きそうです。

国際貿易や関税問題に関する民事訴訟を取り扱う連邦裁判所である米国際貿易裁判所は、国際緊急経済権限法に基づき、トランプ大統領が米国との貿易黒字を計上する貿易相手国からの輸入品に対して、無期限の関税を課すことはできないとの判決を下しました。判決によると、上院が貿易制限を課す権限を有しており、この権限は大統領に一方的に委託しません。

すなわち、一律10％の関税と相互関税は、ともに上院から承認されていないことから無効となります。鉄とアルミニウムといった業種別の貿易制限についての有効性は明らかではありませんが、有効であると思われます。

昨日のリスクオン反応は勢い失う

市場はこの判決にすぐ反応し、米ドルと米株価は大幅に上昇しました。しかし、本日は昨日の上昇分の一部を還元しています。ユーロ／ドルは現在1.1280、ドル円は145円50銭で取引されており、S&P500は重要な6,000ポイントにかなり近づいています。

昨日からの株式市場のセンチメントは、エヌビディアによる第1四半期の決算報告が予想を上回ったことからもサポートされ向上しました。エヌビディアのEPS（1株当たり純利益）は96セントに達し、総収益が441億ドルまで増加したことは、米中間の貿易摩擦による80億ドルの収益損失を考慮すると、さらに注目に値します。しかし、トランプ大統領が米国の半導体設計ソフトウエア会社に中国への販売停止を命じたとの報道によって、エヌビディアの今後の見通しがやや不透明となっています。

予想されるトランプ大統領の反応

一方、米政府は既にこの米国際貿易裁判所の判決を不服として控訴しており、市場はトランプ大統領の反応に備えています。これまでのトランプ大統領の行動から鑑みると、国際貿易裁判所の判決によって、これまで以上に自分の関税政策を推進していく決意を見せるかもしれません。

マスク氏が他の事業等に集中するために特別政府職員を退任したこともあり、トランプ大統領はこれまでの友好的なスタンスを捨て、おそらくより挑戦的なアプローチに戻ることを余儀なくされるでしょう。「アメリカを再び偉大にする」ことへの試みに障害となる民主党と司法制度を攻撃することが、これからの基軸となるかもしれません。

トランプ大統領はFRBに利下げ圧力を強める可能性

5月7日のFOMC会合議事録が公開され、関税を巡る状況が明らかになるまで様子見とするFRBの現在のスタンスが実質的に再確認されたため、FRBメンバーはまた、トランプ大統領からの批判にも備えることになりそうです。トランプ大統領は利下げを継続しているECBにFRBが追随しないことに強い不満の意を表しています。

本日は、タカ派で知られるFRBのメンバー3人、リッチモンド連銀バーキン総裁とサンフランシスコ連銀デーリー総裁、ダラス連銀ローガン総裁とともに、ハト派で知られるシカゴ連銀グルースビー総裁とクーグラー理事が講演する予定です。本日の発言は、最近のFRBメンバーの発言からは大きく逸脱しないことが予想されていますが、グルースビー総裁とクーグラー理事のみが今年FOMC会合での投票権を持つことは特筆すべきことでしょう。また、昨日の米裁判所の判決に関するFRBメンバーの発言は、特に注目されることになるでしょう。

本日の経済データと米7年債入札に注目

経済カレンダーに関しても、投資家が今年の第2四半期は低調だった第1四半期よりも良い結果を出しているとの証拠探しから注目されるでしょう。さらに重要なことに、米国債利回りが再び上昇する中、本日は7年物入札が予定されています。7年物は債券投資家にはそれほど人気がないことから、おそらく低調な結果となる可能性が高くなっています。

ゴールド下落も原油価格は上昇

本日のゴールドは下落基調ですが、原油は上昇しています。原油価格は主要な63ドル台を突破して上昇しており、重要なレジスタンスゾーンを試していますが、ゴールドは3,275ドル辺りで新たな価格バランスを模索しています。プーチン大統領がウクライナとの停戦を要求したとの報道は進展ですが、ウクライナと西洋諸国は今の時点で妥協する可能性は低いでしょう。