デイリーコメント ― FRBのタカ派的な金利据え置きと中東紛争の激化で米ドル上昇

投稿日: 2025年6月19日19時04分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• FRBは金利を据え置き、インフレ予測を上方修正
• イスラエルとイランの紛争激化も後押しとなり、米ドル上昇
• 原油は供給不足懸念の高まりで反発
• スイス中銀は0.25%の利下げ、英中銀は金利据え置きの見通し

FRBはタカ派的な金利据え置きを発表

昨日の米ドルは、主要通貨に対してまちまちの動きを見せて取引を終えました。ユーロと円に対してはほぼ横ばい、一方でポンド、スイスフラン、カナダドルに対してはやや上昇しました。豪ドルとNZドルに対しては下落となりました。それにもかかわらず、本日、米ドルはすべての主要通貨に対して上昇しています。

FOMCの決定を前に米ドルは売られましたが、市場がこの決定をタカ派的な据え置きと解釈すると、すぐに反発しました。政策当局者は大方の予想通り金利の据え置きを決定し、最新のドットプロットは依然として年内に0.25%の利下げを2回実施する可能性を引き続き示唆しました。

しかし今回のドットプロットでは、3月と比較して利下げの見送りを予想するメンバーが多くなりました。具体的には、7人のメンバーが12月まで金利を据え置きを予想しており、これは引き続き年内2回の利下げを見込む予測中央値を支持したメンバーよりわずか1人少ないだけでした。3月の時点では、2025年の利下げ見送りを予想した政策担当者はわずか4人でした。

経済予測については、今年と来年の米経済成長率が下方修正された一方で、インフレ率は上方修正され、年末までに総合PCE(個人消費支出)は3.0%になると予想されています。決定後の記者会見でパウエル議長は、政策当局者らのインフレに対する懸念を強調し、トランプ関税が米消費者に影響を及ぼし始める夏には、インフレ率が上昇する可能性があると指摘しました。

FF金利先物によると、投資家は12月までに0.48%相当の利下げを織り込んでいますが、次の利下げが9月に実施される確率は75%から70%に引き下げられました。

イスラエルとイランの紛争激化で懸念は高まり、原油は上昇

イスラエルとイランが新たな攻撃を交わし、米国関与の可能性への懸念が高まるなど、両国の対立が激化していることを背景に、米ドルは昨夜の上昇を維持し、本日も上昇幅を拡大しています。

ブルームバーグは、イランの最高指導者がトランプ大統領の無条件降伏の要求を拒否したことを受け、米政府高官が今後数日以内にイランへの攻撃を行う可能性に備え、準備や計画を進めていると報じました。しかし、トランプ大統領は「我慢の限界だ」とは言ったものの、米国の次の一手については明確に示すことはありませんでした。

米ドルの上昇は、紛争激化が懸念される中、伝統的な安全通貨として知られるスイスフランや円、さらには今週初めから調整局面に入っているゴールドなどの安全資産を上回るものとなっており、米ドルが安全資産としての地位を取り戻したという見方を裏付けています。

中東情勢の混乱が供給不足への懸念に拍車をかけているため、原油価格が再び上昇しています。この原油高が続けば、その波及効果としてインフレがさらに高まる可能性があり、各国の中央銀行が金融政策の方針を見直さざるを得なくなるかもしれません。

スイス中銀はゼロ金利を決定、次は英中銀による金利政策決定

金融政策に関して言えば、スイス中銀は0.25%の利下げを決定し、金利を0%に引き下げましたが、金利をマイナス圏とする大幅利下げを期待していた市場参加者は失望する結果となりました。発表と同時にスイスフランはやや上昇しましたが、スイス中銀は必要に応じて為替市場に介入する用意があることを改めて表明しました。政策当局は予測期間全体にわたってインフレ見通しを下方修正しており、これは必要と判断されれば、政策金利をさらに調整する用意があるという姿勢と相まって、マイナス金利へ可能性は依然として広く残されています。

本日後半には、イングランド銀行が政策金利決定を控えています。イングランド銀行は、政策金利を据え置くとの見方が広く予想されています。しかし、軟調な労働市場指標、4月の月次GDPの縮小、5月のインフレ鈍化といった要因から、投資家は今年0.50%程度の利下げを織り込み始めています。本日の決定後、前回会合よりもややハト派的な発言となる場合、こうした投資家の見方を裏付けることになり、これがポンドの重荷となる可能性があります