デイリーコメントー関税関連の緊張感高まる、株価と仮想通貨は強気トレンド維持

投稿日: 2025年7月11日19時10分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・トランプ大統領はカナダに35%の関税で脅し、次なる攻撃対象はEUか
・今後関税書簡を受け取る国は15%か20%の関税率
・原油価格、カナダドルと日本円が下落、株価は週間上昇幅を拡大
・ゴールドは上昇、ビットコインは新最高値更新

トランプ大統領のカナダへの攻撃で関税戦争に休息なし

週末を控え、8月1日の新しい期限を前に重要な貿易協議合意に向けて各国が競争する中、トランプ大統領は妥協を許さない姿勢を見せているため、貿易を巡る緊張感が高まっています。米国は、EU、インド、日本といった主要貿易国との協議進展を強調する割には、難題を克服しているようには見えません。

カナダとの交渉は7月21日の期限を設けていますが、トランプ大統領が望むようには進展しておらず、今週ブラジルに50%の関税を課すとの予想外の発表したことを受けて、カナダが次の攻撃に晒される立場にあります。カナダのカーニー新首相は米政府との膠着状態を避けたいと考えていましたが、昨日のトランプ大統領の発表によりその期待も打ち砕かれそうです。

一時的な合意の下で、USMCA合意に含まれているカナダからの輸入品は免税対象となり、エネルギーなどの一部のセクターには別途課税される一方、残りの全ての輸入品については、現在25%の関税が課せられています。しかし、トランプ大統領はこの関税率を35%に引き上げる見通しです。

カナダとの交渉において、時間がかかっていることに怒りを覚えているのか、または特別な障害があるのかは定かではありません。しかし、この戦略は、最終的な危機を乗り越える前にできるだけ有利な立場に立とうとする米政府の典型的な手法との見方があります。

関税関連では予想できぬ展開も

しかし、今週市場に緊張感が広がったのは、ブラジルに対してボルソナロ前大統領に対する起訴を取り下げるために関税の引き上げで脅したように、トランプ大統領が貿易戦争での政治的または個人的な理由を利用して、自分の思い通りにしようとしていることです。

今週大きな進展があるとしたら、EUとの貿易協議が合意に達することでしたが、トランプ大統領がEUに向けて関税に関する書簡を今週送付する可能性を示唆したため、合意は実現しそうにありません。

米政府は今週、日本や韓国といったアジア諸国を中心に既に12ヵ国以上に書簡を送っており、トランプ大統領は残りの国々に対しても、15%または20%の包括的な関税率に直面する可能性があると警告しています。

EUに書簡が送られるとすると、EUにとっては大きな打撃となるでしょう。EUは米英間での協議合意と同じような枠組み合意に向けて懸命に交渉しています。EUとしては、重要な自動車産業に大きな懸念を示しており、米国への輸出に対して25%の業種別関税を引き下げるよう試みています。

ユーロとポンドにサポート、カナダドルと日本円は下落

米国との貿易協議での大きな後退にもかかわらず、本日のユーロはわずかな下落となっています。ポンドも堅調で、本日英GDPが2カ月連続で縮小したにものの、わずかな下落幅となっています。

一方、カナダドルは大きく下落しており、米ドルに対して一時的に1.37ドルまで下落した後、わずかに下回る水準で安定しています。日本も米国との貿易協議での非妥協的なスタンスから合意に達せず、8月1日から25%の関税が課せられるとの懸念が高まっていることから、日本円も本日下落基調です。

米ドルに関しては、主要通貨に対して3週間ぶりに上昇する見通しで、今回の貿易戦争では、貿易摩擦は米ドルにとっては逆風にはなっていないことが示唆されています。この変化には、米経済がトランプ大統領による過激な政策に対して、引き続き耐久性を示しているとの事実によるもので、昨日の米週間失業保険申請件数も前週よりわずかに低下したことからも裏付けされます。

ゴールド上昇、原油価格は下落後安定

ドル高はゴールド上昇の妨げにはなっておらず、関税を巡っての不確実性の中、ゴールドは3日連続で3,340ドル付近まで上昇しています。

反対に、関税を巡る緊張感が原油の需要見通しの重荷となり、原油価格は昨日2%下落しました。しかし、ウクライナ紛争の停戦合意に向けて、プーチン大統領が十分に対応していないことにトランプ大統領が不満を表しており、米国が来週月曜日にもロシアに対して新しい制裁を発表するとの憶測から、原油先物は本日安定しています。OPECプラスが10月にも増産を停止するとの報道もまた原油価格上昇を支えています。

S&P500は最高値更新、欧州株下落、暗号資産急騰

株式市場では、米国とEU間での貿易交渉が暗礁に乗り上げていることで、欧州株が本日は赤字となっていますが、アジア株では概ね上昇トレンドとなっています。アジア株の上昇は、中国人民銀行が2,090億ドル相当の景気刺激策を強化するように中国政府に促しているとの報道により、香港と中国での株価指数が若干上昇したことから牽引されています。

米株式先物も下落しており、昨日最高値を更新したS&P500とナスダック総合指数から一段落しています。エヌビディア株は第2四半期の決算報告が進む中、投資家はエヌビディアの今後の見通しに一層楽観的となっており、3日連続で最高値を更新して上昇しています。

今週は暗号資産も好調です。ビットコインは今週約8.5%も急騰して、11.8万ドル付近まで上昇しています。機関投資家によるスポットETFへの需要が高まっており、ビットコイン・トレジャリー企業が台頭する中、イーサリウムも上昇しています。

また、来週は「暗号資産ウィーク」と呼ばれ、米下院にて多くの暗号資産関連法案が審議されることから、暗号資産市場は盛り上がりを見せています。