デイリーコメント – トランプ大統領のFRB批判で米ドル高失速

投稿日: 2025年7月17日21時09分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 市場のボラティリティの鍵はトランプ大統領の手中に
  • 米経済指標が悪化しない限り、7月のFRB利下げは払拭か
  • 米国債利回りは、トランプ大統領のパウエル議長批判に反応
  • 英経済指標はまちまちも、ポンドはユーロの混乱の恩恵を受ける

 市場の注目は、引き続き関税とFRB

投資家の関心が依然として関税とFRBの見通しに集まる中、米ドルは対ユーロでの上昇分の大半を失うという前日の波乱なセッション後、本日の米ドルは堅調なスタートを切りました。最近可決された米減税・歳出法案により、関税問題が再び注目を集め、トランプ大統領は攻撃的な発言を再開しましたが、近日中の新たな貿易協定締結へ向けて比較的前向きな姿勢を示しています。

8月1日の新たな期限を前に、複数の国は貿易協定の内容が不完全または軽微であっても、米政権との合意を急いでいます。各国は、トランプ大統領の要求を受け入れる姿勢を示すことで、新たな悪名高い「関税書簡」の回避を期待しているようです。しかしながら、この戦略には欠点があるようです。米国と最初に貿易協定を結んだ英国が、現在も経済的に低迷を続けていることがその一例です。

FRBに関しては、年内に利下げを実施するのか、そして利下げ幅について、依然として数々の疑問が残っています。市場は現在、合計0.46%の利下げを織り込んでおり、7月初旬と比べて0.20%近く低下しています。この利下げ期待の後退には、米経済指標が大きな役割を果たしており、特に火曜日に発表された米CPIが予想を上回ったことが、7月の利下げ観測を完全に打ち消す「とどめの一撃」となった可能性が高いでしょう。

昨日発表された米生産者物価指数(PPI)の予想を下回る結果が、FRBのハト派にとっては一筋の光となりましたが、利下げを再び現実的な選択肢として検討するには、今後も一連の軟調な米経済指標が必要となります。本日の米週間新規失業保険申請件数、米小売売上高、金曜の米住宅統計、そして市場への影響が大きいことで知られるミシガン大学消費者信頼感指数の結果次第では、FRB関係者からよりハト派寄りの発言が増え、9月利下げの支持に繋がる可能性があります。

しかしながら、関税の影響は依然として最大の不確定要素であり、アトランタ連銀のボスティック総裁やニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は改めて、最新のベージュブックに記載されてた現在の米国経済状況では、関税によるインフレへの影響がまだ顕在化していないため、FRBは利下げを急ぐ必要はないと改めて強調しました。

トランプ大統領は許すことも、忘れることもない

米国内の政治状況の掌握への自信を強める中、トランプ大統領は引き続きパウエルFRB議長を標的にしています。昨日、共和党議員との会合でパウエル議長の解任についての話し合いをしたというトランプ大統領の発言が市場に衝撃を与え、米ドルは連日の上昇幅を失い、米国株はすぐに下落に転じました。

トランプ大統領は、パウエル議長が解任すれば市場が混乱することを即座に認めたものの、事態はすでに動き出しているように見えます。たとえパウエル議長を解任しなかったとしても、名指しの批判を続けることでFRBの独立性は損なわれ、その結果、FRBの信頼性を守るためにパウエル議長が辞任を余儀なくされる可能性もあります。

数多くの銀行関係者がFRBの独立性の重要性を強調する一方で、FOMC内部からのパウエル議長への支持がより強まると予想されていました。たとえば、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は昨日、「FRBは政治的な発言にかかわらず、自らの使命に集中している」と述べました。これはトランプ大統領のパウエル議長への攻撃に関する質問への返答でしたが、かなり控えめで慎重な内容でした。

おそらくFRBメンバーは、パウエル議長と一緒に窮地に追い込まれることを恐れているのでしょう。しかし、もし今戦わなければ、トランプ大統領に操作される可能性の高い次期FRB議長にどう立ち向かうことができるのでしょうか。注目すべきは、米債券市場がこのFRBを巡る最新の状況に反応している点です。米30年債利回りは再び5%を上回り、米10年債利回りも4.5%に迫っています。

英経済指標が英中銀の8月の利下げを支持

昨日の英消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったにもかかわらず、市場は8月7日の英中銀会合で0.25%の利下げ実施の可能性は75%との見方を続けています。本日発表された英経済指標はまちまちで、賞与を除く平均賃金が5%の伸びを示す一方で、求人数の変化や失業率はともに、英国の労働市場の緩やかな軟化を示唆しており、投資家の混乱はさらに深まっています。奇妙なことに、ユーロ/ポンドは本日やや下落しており、これは米ドルの回復が背景にあるとみられ、米ドルはユーロに対して1.1570の水準を再び試す展開となっています。