デイリーコメント – 投資家が貿易情勢を見極める中、米ドルは下落、ゴールドは上昇

投稿日: 2025年7月21日19時25分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • ウォラーFRB理事のハト派発言を受け、米ドルは下落
  • 8月1日の期限を控える貿易交渉が注目の的に
  • ゴールドは再び安全資産としての需要を集めている模様
  • 好調な米決算報告を受け、米株価は史上最高値付近を維持

ハト派のウォラーFRB理事と後退する米国のインフレ期待

先週金曜日の米ドルは殆どの主要通貨対して下落し、本日もその下落幅を拡大し続けています。これは、おそらくウォラーFRB理事によるハト派的な発言や、ミシガン大学期待インフレ率のさらなる低下が要因と考えられます。

先週金曜日、ウォラーFRB理事は、米労働市場が「ギリギリの状態」にあることを示唆するデータが出ていること、またインフレ期待が上昇している兆候も見られないことから、来週に開催される次回のFOMC会合で利下げを支持する考えを示しました。実際、ミシガン大学消費者信頼感指数によると、1年先の期待インフレ率は5.0%から4.4%へと一段と低下しており、これが消費者信頼感指数の改善につながった可能性があります。

ウォラーFRB理事は、トランプ大統領がパウエルFRB議長の後任候補として支持している1人と噂されており、そうした背景もあってウォラー氏の発言は市場で注視されているのかもしれません。ウォラー氏は、FRB議長職について質問された際、大統領からの要請があれば引き受けると述べましたが、これまでのところトランプ大統領からそういった連絡は入っていないようです。

しかしながら、7月の利下げの可能性は依然として非常に低く、一方で9月会合での0.25%の利下げはすでに完全に織り込まれつつあります。具体的には、7月の利下げ確率はわずか5%であるのに対し、9月の利下げ確率は65%織り込まれています。これは、おそらく米国のインフレ期待が大きく低下しているとはいえ、1年先のインフレ期待率がFRBの目標である2%の2倍以上に依然としてとどまっているためだと考えられます。

8月1日の関税発効日が、刻一刻と迫る

トランプ大統領が新たに設定した8月1日の関税発効期限を前に、投資家たちは貿易交渉の展開にも注視しています。ラトニック米商務長官は、EUとの間で妥協点を見出すことに楽観的な姿勢を崩していないと述べたものの、先週トランプ大統領が発表した多くの関税率が実際に発動する可能性があり、それによって世界経済にさらなる打撃が及ぶのではないかという懸念も出ています。

もしかすると、それが先週末から本日にかけて、米ドルがここ最近機能していた安全資産の逃避先としての役割を果たせなかった理由かもしれません。米国のインフレ上振れリスクが落ち着きつつある兆しが見られる中で、市場は関税の米経済成長への潜在的な影響に目を向けている可能性があります。そしてこれまでの経験からも、経済成長への懸念の高まりは、米ドルにとってはマイナスに働き、投資家は他の安全資産、例えばゴールドなどへと資金を移す傾向があります。実際、ゴールドは本日も恩恵を享受し、3,370ドルの重要なレジスタンスゾーンの突破を試みています。

米株式市場は史上最高値を更新、日本では石破首相率いる連立政党が大敗

金曜日の米株式市場は、S&P500とナスダック100がいずれも史上最高値を更新した後、まちまちの結果で取引を終えました。とはいえ、本日の米先物はプラスでの寄り付きを示しており、8月1日前の貿易協定合意への期待を意味しているかもしれません。 また、好調な米国の決算シーズンの幕開けも、米株上昇トレンド維持に貢献しています。

日本に注目を向けると、石破首相率いる連立与党は参議院で過半数を失い、今後は衆・参議員の両院ともに少数派として政権運営を行わざるを得ない状況となりました。トレーダーが円売りのポジションの一部を清算したためか、円はプラスで取引を開始しましたがその後すぐに、再び下落圧力にさらされました。野党が減税や金融緩和の強化を求めていることから、野党の立場が強まることは、円にとってマイナス材料と見なされています。とはいえ、注目すべき点として、日本のオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場によれば、投資家は年内に日銀があと1回の0.25%の利上げを行う可能性を50%以上と予想しているようです。