デイリーコメント – 米ドルは守備固め、サポートを模索

投稿日: 2025年7月25日18時42分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • ECBは利下げを見送り、9月の利下げ観測も後退
  • 継続する利下げ要求の中、トランプ大統領によるFRB訪問は波乱なし
  • 今週は米ドル安が進行、円でさえ米ドルを上回るパフォーマンスに
  • 本日、仮想通貨は下落、アルトコインは依然として大きな上昇幅を維持

米ドルの苦戦は続く

現在、米ドルは対ユーロでは横ばい推移を継続しているものの、今週はマイナスで終える見通しで、7月初旬の上昇分の大部分を還元する形となりそうです。注目すべきは、今週はリスク連動通貨と安全通貨の両方が、米ドルを上回る動きを見せており、ドル/円は約1%下落しています。先週末の日本の現政権による選挙結果が芳しくなかったことによる政治的不安や、本日の発表された東京消費者物価指数 (CPI)が軟調であったにもかかわらず、日銀の利上げ観測がやや高まっていることが円を下支えとなっているようです。

この米ドル安は、リスクオンの動きが加速するポジティブな週の中で起きています。S&P500指数は今週1.1%上昇しており、これは主に堅調な米企業決算報告が続いていることによるものです。注目すべきは、日経平均株価が現在5%上昇しており、今週の日米貿易協定合意を受け、上昇に勢いがついています。これは2024年8月中旬以来、週内で最大の上昇です。一方で、ゴールドは今週の上昇分をすぐに帳消し、現在は3,355ドル付近まで下落しています。その反面、シルバーは14年ぶりの高値を更新しました。

一方、暗号資産市場は現在、今週の目覚ましい上昇分の一部をわずかに失いつつあります。本稿執筆時点では、ビットコインは2週間ぶりの安値となる11万5,000ドル付近で推移しています。イーサリアムは依然として今週の安値である3,560ドルを上回ろうと試みています。とはいえ、アルトコインは今月、際立った上昇を続けており、「暗号資産の王様」であるビットコインを明らかに上回るパフォーマンスを記録しています。これは、最近米国で成立したステーブルコイン規制法による後押しもあってのものです。

ECBは利下げ見送りを決定、9月利下げ観測も後退

昨日のECB会合は、来週の目白押しのイベントが盛沢山となる経済カレンダーの先陣を切る形となりました。来週は、水曜日にFOMC会合、金曜日には重要な米雇用統計、そして主要ハイテク企業の決算発表が控えています。投資銀行の予測に反して、ラガルドECB総裁はユーロ圏の成長見通しとインフレ圧力の緩和について、やや楽観的な姿勢を示しました。ECBはついにFRBと同様、「様子見」の姿勢を採るようになりました。ただし、米国と比較すると、ECBは2024年6月以降、すでに8回の利下げを実施しており、ディスインフレへの対応や、潜在的な貿易戦争に備える動きを見せています。ユーロトレーダーたちは、ECBのこうした決断力と迅速な対応を評価しているようです。

市場は現在、2025年内にわずか0.15%の追加利下げを織り込んでいますが、もし夏の間に米国とEUの間で貿易交渉が合意に達しない場合、利下げ予想の幅は急速に引き上げられる可能性があります。8月1日の相互関税の一時停止期限が目前に迫る中、週末には交渉が本格化する見通しです。

トランプ大統領がFRBを訪問

トランプ大統領は、日米貿易協定に類似した形での米EU間の合意について楽観的な姿勢を示しましたが、苦境に立たされている日本の首相に比べると、欧州側はトランプ大統領の条件を受け入れる意欲が低いようです。現時点では、全面的な貿易戦争よりも、米EU間枠組み合意が実現する可能性が高いと見られています。特に、米政権が今後の焦点を中国に移そうとしていることを踏まえると、その可能性は一層強まります。

米中間では枠組み合意がすでに存在しているものの、トランプ大統領は次のステップとして、より包括的かつ詳細な合意を目指しており、米国製品の中国市場の拡大を狙っているようです。過去2週間の市場の反応とは裏腹に、投資家たちはより広範な経済的影響を及ぼすリスクがある、世界の二大経済大国の間で対立が再燃する可能性に神経を尖らせることになるでしょう。

興味深いことに、FRBを訪問した際、トランプ大統領は中国についての発言や、パウエルFRB議長に対するいつもの名指しでの批判もしませんでした。「パウエル議長を解任するか」との質問に対して、トランプ大統領は「解任は大きな動きであり、そこまでする必要はないと思う」と答えました。これは、今夏、あるいは少なくとも8月下旬に開催されるジャクソンホール会議までは、パウエル議長に対する利下げ要求や辞任への圧力がやや緩和される可能性を示唆しているかもしれません。しかし、この突然の「穏やかさ」が試されるのはおそらく来週となるでしょう。というのも、FRBは来週の会合で利下げを実施しないと見られており、その場合、トランプ大統領が再び激怒し、米ドル投資家の懸念を再燃させる公算が大きいからです。